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アングル:地銀、M&A仲介ようやく本腰 企業後継者難で需要拡大
2017年10月24日 / 04:22 / 1ヶ月前

アングル:地銀、M&A仲介ようやく本腰 企業後継者難で需要拡大

[前橋 24日 ロイター] - 地方企業で経営者の高齢化が深刻化する中、地銀各行が事業承継の支援策としてM&A(企業の合併・吸収)仲介に力を入れ始めた。「顧客企業の経営が継続できなければ、最終的に銀行収益の減少につながる」という危機感が高まっているためだ。金利サービスなどに軸足を置いてきた地銀にとって新たな収益源として期待される一方、M&A事業の人員増強などの課題も浮上している。

 10月24日、地方企業で経営者の高齢化が深刻化する中、地銀各行が事業承継の支援策としてM&A(企業の合併・吸収)仲介に力を入れ始めた。写真はケービックスの井上哲孝社長(左)と日本料理の料理人の篠原邦也氏。前橋で8月撮影(2017年 ロイター/Junko Fujita)

<負のイメージ払しょくへ説得>

日本料理の全国大会での優勝経験もあるベテラン料理人、篠原邦也氏は1999年に設立した群馬県前橋市の企業「邦堂」を昨年、同市の施設運営アウトソーシング請負のケービックスに売却した。邦堂は同市の老舗割烹「くろ松」を運営する。70代に入った自身の高齢化などで事業継承に悩んだ末の決断だった。

「どうせ廃業するのであれば企業価値が高いときがよいと思っていた。追い込まれて廃業するのは倒産するに等しい」と考えていた篠原氏だが、当初、事業の売却にはマイナスのイメージが拭えなかったという。

しかし、相談を持ちかけられた群馬銀行(8334.T)のコンサルティング営業部の推進役、信澤一貴氏は、M&Aが最善の解決策になると判断。篠原氏の説得にあたる一方、ケービックスの井上哲孝社長に買収を持ちかけた。ビジネスの裾野を拡大したいと考えていた同社にとってタイムリーな案件となり、5件目の事業買収につながった。

「事業承継がうまくいかなければ経営者の高齢化はさらに進み、廃業や清算に追い込まれる中小企業が増加する。そうなると地域の雇用が失われ、銀行も自らの経営基盤を失うことになる」と群銀の信澤氏は話す。

帝国データバンクによると、後継者の不在に悩む国内企業は全体の66パーセントに上る。群馬県ではその比率が約64パーセントで、群銀が持つ1万1000社の法人顧客のうち、約7000社がこの問題を抱えているとみられている。これに対し、同行が仲介するM&Aの件数は年に10件程度。銀行としての潜在的なビジネスチャンスがあるにもかかわらず、活用できていないのが実情だ。

<親族内の継承を超え、外部に活路>

M&Aの仲介を重視し始めた地銀は群銀だけではない。京都銀行(8369.T)は2017年3月期に5億円だったM&A収益を2020年3月期には10億円にする目標を立てている。同行は今年3月に神戸を拠点とするコメ卸業者の神明による水産食品の加工会社、神戸まるかんの買収を仲介した。国内のコメ消費が減る中で事業の多角化を図る神明と、後継者不在の神戸まるかんの利益が合致したM&Aとなった。

京都銀行が成約させたM&Aの件数は、2012年の4件から昨年は13件に増えた。全体の行員数、3400人の中ではまだ少ないものの、M&A事業の担当者数を同期間に3人から10人に増員している。広島銀行(8379.T)も6人のM&A事業担当者が手掛ける案件数は増加しており、今後もこの傾向は続く見通しという。

こうしたM&A仲介事業は、長引く低金利政策と地方の人口減少に直面する地銀にとって、避けて通れない選択肢でもある。金融庁は今年9月の「金融リポート」の中で2016年事務年度(16年7月―17年6月)に5割を超える地銀の貸出・手数料ビジネス収益が赤字になったと指摘している。今後貸出需要が鈍る中、金融庁は地銀に顧客のニーズに合ったビジネスモデルの構築を求めている。

<地銀のノウハウ強化や意識改革が必要>

「後継者不足の問題をM&Aの仲介により解決できるのは地元の金融機関の特権」とするのはマネックス証券のチーフ・アナリスト、大槻奈那氏。ただ、これからは存続させる価値がある事業かどうかを判断する眼力が地銀に求められるとも指摘する。「いったん事業をたたみ、人材を別の事業に振り向ける役割もこれからは地銀のサービスに求められる」と大槻氏は話す。

京都文教大学の野崎浩成教授は、地銀が金利引き下げなどのサービスを重視する一方、「顧客基盤という宝物があるにもかかわらず顧客の悩みに対応しきれていなかった」と語る。

M&A仲介を進めるうえで、地銀には意識変革が必要との指摘もある。顧客企業に対し「自社の譲渡を提案することは失礼に当たるという考えが以前からあり、今でも変わらない」(東邦銀行(8346.T)M&A担当者)からだ。

しかし、このような中小企業のM&A仲介に特化してきた日本M&Aセンター(2127.T)やストライク(6196.T)、M&Aキャピタルパートナーズ(6080.T)などが過去最高の業績を更新するなど、急激に業績を伸ばしている。最大手の日本M&Aセンターは年間500件以上を仲介している。地銀が持ち込む案件が、これらの企業の利益の源泉となっているという現実がある。

「このような仲介業者に頼っている限り、地銀は敵に塩を送り続けることになる」と京都文教大学の野崎教授。地銀にとって、今後はM&Aのノウハウを磨く一方、地域を超えた銀行同士の提携や再編がより重要になるかもしれない、と同教授は指摘している。

*写真を差し替えて再送します。

藤田淳子

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