March 5, 2019 / 10:51 AM / 3 months ago

焦点:地銀の収益環境が悪化、信用コスト増と含み減 格差も鮮明

[東京 5日 ロイター] - 地方銀行を取り巻く経営環境が、一段と厳しさを増している。減少傾向にあった信用コストが拡大に転じ、世界経済の減速を背景にした株価の下落によって有価証券の益出し余力も低下しており、この2つの収益押し上げ要因に局面変化の兆しが出ているためだ。地銀・第二地銀104行のうち、2018年12月期に3行が最終赤字に転落し、11行で有価証券が含み損となった。

 3月5日、地方銀行を取り巻く経営環境が、一段と厳しさを増している。減少傾向にあった信用コストが拡大に転じ、世界経済の減速を背景にした株価の下落によって有価証券の益出し余力も低下しており、この2つの収益押し上げ要因に局面変化の兆しが出ているためだ。2011年撮影(2019年 ロイター/Yuriko Nakao)

内外経済の先行きに不透明感が強まる中、今後は業態内の体力格差が一段と鮮明になり、再編を含めた経営判断を迫られる銀行が増加するとの指摘が出ている。

<増加に転じる信用コスト>

地銀の本業収益は、地域の人口と企業数の減少を背景とした競争の激化や、日銀の超金融緩和政策の長期化によって預貸金利ざやの縮小が続いている。

それでも、これまでは景気回復に伴う企業倒産の減少や信用力の改善による信用コスト(貸倒引当金繰入額、不良債権処理額など)の減少と、金利低下・株高基調を背景にした有価証券の益出しという2つの要因が、地銀経営を支えてきた。

ところが、米中貿易摩擦や中国経済の減速など、世界・日本経済への不確実性が強まっており、2つの収益押し上げ効果が「今後は期待できなくなる」(地銀関係者)事態に直面しつつある。 

ロイターの集計によると、地銀・第二地銀104行の2018年4─12月決算(単体ベース)は、本業の資金利益の減少に、信用コストの増加や有価証券売却益の減少などが追い打ちをかけ、最終利益は合計5770億円程度と、前年同期比で約30%も減少。スルガ銀(8358.T)、武蔵野銀(8336.T)、栃木銀(8550.T)の3行は赤字に転落した。

信用コストは2200億円超となり、前年同期から大きく増加。投資用不動産向けの不正融資問題によって、1200億円超の信用コスト増を計上したスルガ銀を除いても増加額は1000億円を超え、「これまで減少基調だった信用コストに変調の兆しが出ている」(金融筋)という。

信用コストの増加について、現時点では想定外の企業倒産など個別要因の影響が大きいとみられているが、背後には中国を中心とした海外経済の減速を意識して引き当てを積み増す動きもあるという。

東京商工リサーチによると、1月の全国企業倒産件数は前年比4.9%増の666件となった。引き続き低水準ながらも、1月としては2年連続で前年を上回っており、同社では「倒産減少の底止まりをうかがわせる」としている。

近年の地域金融機関は、相対的に信用力が低めの「ミドルリスク企業」向けの貸し出しを積極化させている。それらの中にはリスクに応じた金利設定や、引き当てが不十分なケースも多い。

日銀は、ミドルリスク企業について通常先に比べて景気悪化時に「デフォルト率が上昇しやすい」と分析しており、今後の景気動向次第で信用コストが一段と拡大し、収益の圧迫要因に転じる可能性がある。 

<世界株安で11行が有価証券「含み損」に>

有価証券の益出し余力も低下している。金利低下・株高基調の中で、これまで高水準の益出しを続けてきたことに加え、市場環境が変調しつつあるためだ。

昨年10月以降の世界的な株安を受け、日経平均株価.N225は当時の2万4000円超から年末・年始に‪一時2万円を割り込んだ。

保有している株式や上場投資信託(ETF)などの価格下落によって、昨年12月末の満期保有目的を除いた「その他有価証券」(一部連結含む)の含み益は、同9月末に比べて約25%も減少した。

104行全体ではネットで4兆円程度の含み益を確保しているが、みちのく銀(8350.T)、筑波銀(8338.T)、きらやか銀、福島銀(8562.T)、栃木銀、東日本銀、富山第一(7184.T)、静岡中央銀、大正銀、もみじ銀、豊和銀(8559.FU)の11行は含み損となり、9月末の5行から倍増した。 

株価は2万1000円台を回復しているが、金融関係者によると、地銀の中には、日銀による大規模緩和の長期化を受けて、近年になって株式投資を積極化させたところも少なくない。株価が再び下落した場合、益出しの限界や含み損の拡大に直面する銀行が増えることになる。

<金融庁長官、経営判断のスピード「不十分」>

こうした収益押し上げ要因のはく落に伴い、今後は「本業収益の深刻さが露呈し、業態内の体力格差が一段と鮮明になる」(地銀関係者)とみられている。

大手地銀は取得簿価が低い政策投資株を相対的に多く保有しており、含み益の面でも一定の余裕がある。一部では保守的に貸し倒れ引当金を積み増し、景気悪化に備える動きも出ている。

一方、収益基盤がぜい弱で健全性に問題を抱える地銀は、経営体力がさらにむしばまれ、赤字が常態化する可能性も否定できない。

多くの地銀が依然として厚い自己資本を確保しているものの、日銀の分析によると「自己資本比率が規制水準を上回っていても、その水準が低くなるにしたがって、貸し出しの抑制幅が大きくなる傾向がある」という。

複数の関係者によると、金融庁の遠藤俊英長官は1月中旬に都内で行われた地銀トップとの会合で「皆様の決断と実行のスピード感は十分とはいえない」と発言し、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取り組み加速を促した。

経営環境の変化が「地銀経営者に再編を含めた経営判断を迫る可能性がある」(別の金融筋)とともに、格差の広がりによってマクロでみた金融仲介機能や金融システムの安定に影響が生じることがないか、注意が必要な局面に入りつつある。

*表記の一部を修正しました。

伊藤純夫 編集:田巻一彦

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