June 19, 2015 / 12:43 AM / 4 years ago

コラム:ロヒンギャ「孤立無援」のなぜ

[17日 ロイター] - ミャンマーは今、重大な人道的危機の真っただ中にある。同国に住む少数民族ロヒンギャの多くが、迫害から逃れようと過密状態の船に乗り込んでいる(その多くには過酷な運命が待っている)。

 6月17日、ミャンマーに住む少数民族ロヒンギャの多くが、迫害から逃れようと過密状態の船に乗り込んでいる。写真は同国沖で漂流していた船に乗っていた難民ら。ラカイン州の難民収容キャンプで4日撮影(2015年 ロイター/Soe Zeya Tun)

ロヒンギャの難民船が向かっているのは、彼らを助けることのほとんどできない国々だ。率直に言えば、一部の国は彼らに救いの手を差し伸べることにも関心がない。

なぜ、こうした状況が生まれたのだろうか。

<ロヒンギャとは何者か>

ロヒンギャは、仏教徒が圧倒的多数を占めるミャンマーで暮らすイスラム系の少数民族。彼らの敵対勢力の多くは、ロヒンギャが民族的に異なる集団だと認めるのを拒んでいる。ロヒンギャはベンガル人であり、ミャンマーにいるのは不法移住の結果だというのが、同国当局などの主張だ。

一方、ロヒンギャ側は、ミャンマーのラカイン州に植民地時代以前から居住していると主張。中東研究所によると、ロヒンギャという言葉が最も古く登場するのは1799年だという。

<なぜミャンマーから逃れるのか>

ロヒンギャは暴力に直面し、医療や教育や雇用へのアクセスといった基本的権利が阻害されている。ミャンマー当局がロヒンギャを自国民として認めていないことで、彼らは「アパルトヘイト的な状況」に置かれている。

しかし、それは今に始まったことではない。国際的非営利組織(NPO)「人権のための医師団」の2013年の報告書によれば、1991年5月から1992年3月までの間に、合計26万人以上のロヒンギャが国外に脱出。その背景には「土地収奪や強制労働、レイプや拷問、即決処刑を含むビルマ軍による人権侵害」があったという。

<なぜ今関心が高まっているのか>

四半世紀前から続く問題だが、ここ数年で彼らの置かれた状況は明らかに深刻化している。

ミャンマーは2010年の総選挙を経て軍政から民政へと移行したが、それがイスラム教徒に対する迫害の深刻化にもつながった。ロイターの報道によると、政府は、イスラム排斥を掲げる仏教徒の組織「969運動」の台頭を暗に認めている。2012年以降、仏教徒との深刻な宗教対立によって約14万人のロヒンギャが同国北西部から逃れた。

<ロヒンギャへの憎悪の根源は何か>

現代のさまざまな対立と同様、ミャンマーの現在の混乱は、その根源を植民地時代にたどることができる。

1826年に英国は、現在ミャンマー北西部となっている地域、ならびに現在ロヒンギャの多くが住んでいる地域を植民地に併合した。当時の植民地政府の移民法が緩かったことで、これらの地域にイスラム系ベンガル人が大量に流入。英国は新たな植民地の管理者として南インドのチェティア(金融業者)を置いたことが、仏教徒であるビルマの農民の強制立ち退きにつながった。英エコノミスト誌が指摘するように、それが遺産として長く残っている。

また中東研究所によれば、1948─1961年のイスラム分離主義勢力による反乱失敗や、仏教徒の間に根強いイスラム教徒に対する恐怖心、1982年に施行された国籍法も「ロヒンギャに対する差別を正当化させている」。

<近隣諸国はなぜ受け入れないのか>

ロヒンギャ難民の受け入れ先候補はいくつか考えられるが、彼らのために永住の地を用意することは望んでいないか、もしくは不可能であるように見える。

マレーシアとインドネシアは、財政的に余裕がないというのを理由に、これまで繰り返しロヒンギャの受け入れを拒んできた。マレーシア内務副大臣は最近、「ここでは歓迎されないという正しいメッセージをわれわれは送らなくてはならない」と発言した。タイ海軍も同様に、ロヒンギャ難民を追い返している。

イスラム教徒が大多数を占めるバングラデシュは長い間、非公式にロヒンギャを受け入れてきたが、最近は収容施設から出て行くよう命じるようになった。ただ、バングラデシュが世界で最も人口密度の高い国の1つであり、政治も経済も不安定であることを考えれば、それも驚きではない。

<なぜミャンマー政府は動かないのか>

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマもオバマ米大統領も、クリントン前米国務長官も、なぜミャンマー政府は動かないのかと問うた。南アフリカのノーベル平和賞受賞者ツツ元大主教は、ロヒンギャ迫害を「ゆっくりとしたジェノサイド(集団殺害)」だと非難。米著名投資家ジョージ・ソロス氏は、迫害問題をナチスになぞらえた。

平たく言えば、圧倒的大多数の仏教徒に反対の姿勢を取ることは、危険な政治的運動だとみなされるのだ。ミャンマー大統領府は以前、先鋭的な反ロヒンギャを掲げる969運動を「平和のシンボル」だと呼ぶ声明を出した。ミャンマーの民主化と改革のため長年戦ってきたノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏でさえ、ロヒンギャ問題については沈黙を守っている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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