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焦点:アジア初の利上げは韓国か、中銀総裁がバブル抑制に執念

[ソウル 19日 ロイター] - 韓国は、アジアで最初に新型コロナウイルス対応の金融緩和の巻き戻しに動き、政策金利を引き上げる国になるとみられる。タカ派的で来年退任予定の李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行(中央銀行)総裁が不動産バブル、ないし家計債務がもたらす緊張を芽のうちに摘むための取り組みを強化しているからだ。

7月19日、韓国は、アジアで最初に新型コロナウイルス対応の金融緩和の巻き戻しに動き、政策金利を引き上げる国になるとみられる。ソウルの韓国銀行前で2012年8月撮影(2021年 ロイター/Kim Hong-Ji)

中銀は先週15日の会合で政策金利を過去最低水準に据え置いたが、同時に総裁は、早ければ8月下旬の次回会合で利上げする可能性を示唆し、市場を驚かせた。

メリッツ証券のアナリスト、ユン・イェオ・サム氏は「今は住宅価格の抑制が政治的、経済的双方の面でより重要になっているという意味で、めったにない局面の1つだ。過去数年間、政府が講じてきたどんな措置も住宅価格高騰を止められなかった。李総裁、政府のいずれにとっても残された時間は少なくなりつつある」と述べた。

李氏の任期は来年3月まで。その数週間後には文在寅(ムン・ジェイン)大統領も退任する。総裁はこれまで8年にわたる在職期間を通じてタカ派姿勢を貫き、リスク志向の強い同国の債務拡大に歯止めをかけようと苦闘を続けてきた。

中銀は昨年、パンデミックに見舞われた経済を支える目的で計75ベーシスポイント(bp)の利下げを実施し、政策金利は0.5%と過去最低を記録。この低金利が家計の借金を膨らませ、今年3月の家計債務は1765兆ウォン(1兆5500億ドル)、うち住宅ローンは931兆ウォンとなった。

さらに緩和マネーは不動産や株式、暗号資産(仮想通貨)といった市場の投機熱を助長。住宅価格は、課税や融資規制などの対策にもかかわらず跳ね上がり続け、中銀が6月に国内資産・信用市場の金融面での脆弱性は08年の世界金融危機以降で最大になったと警鐘を鳴らす事態につながった。

アナリストも足元の金利水準について、今年の韓国の成長率が4%と10年以来最も高い伸びになると見込まれる実態からすれば、低過ぎだと認める。物価上昇率は、中銀が目標とする2%を大きく上回って推移している。

大信証券のエコノミスト、コン・ドンラク氏は「李氏が自身の退任時期に留意しているのは明らかだ。債務の伸びと住宅価格を引き下げ、それを退任時に実績として残したいという彼の思いを実現する上で残された時間は多くない。そして待てば待つほど、引き締めは難しくなる」と述べ、来年3月の大統領選が近づけば、さらに余計な配慮が必要になると説明した。

<どこまで踏み込むか>

韓国中銀が来月の会合で利上げすれば、先進国で一番タカ派的な中銀とされるニュージーランド準備銀行にさえ先んじる形になる。

ただ金融リスク対応と経済成長支援の釣り合いを取る中で、李氏がどこまで踏み込んで引き締めを進められるか、エコノミストの間で見方が分かれている。

メリッツ証券のユン氏は、李氏の最近の発言がこれまでで最もタカ派的に見えると分析した上で、少なくとも1回の利上げは確実なようだが、韓国の景気回復次第でさらなる引き締めは難しくなる恐れがあると予想した。

韓国ではまだ新型コロナウイルスワクチンの接種率が人口の3割前後にとどまっているだけに、このところの感染力の強いインド由来変異株(デルタ株)の広がりは逆風だ。折あしく、欧米の経済再開で韓国の電子製品輸出が減少する可能性もある。

一方で家計債務は可処分所得の約175%にまで膨張。KBバンクのデータによると、6月時点の首都ソウルの集合住宅価格の中央値は11億4000万ウォン(100万ドル)と、文大統領が就任した17年以降でおよそ70%上昇している。

ノムラのアナリストチームはノートに「韓国中銀の反応関数は劇的に変化しており、現在は住宅市場抑制が優先されているようだ」と記し、年内2回と来年中に1回の利上げを想定した。

HSBCも、中銀が金融安定を優先課題としているとの見解に基づき、利上げ時期の予想を今年第4・四半期から8月に前倒しした。

これに対してモルガン・スタンレーのアナリストチームは最初の利上げを今年10月と見込んだ上で、「われわれの政策金利見通しは引き締めではなく、緩やかな政策正常化とみなされるべきものだ」と強調している。

シティグループのエコノミスト、キム・ジンウック氏は、利上げ時期の予想こそ10月から8月に変更したものの、「中銀は政策正常化を開始する態勢にあり、その観点では1回か2回の利上げでは引き締めというには当てはまらない」とくぎを刺した。

(Cynthia Kim記者)

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