June 4, 2018 / 7:58 AM / 2 months ago

焦点:イタリアは「ギリシャ化」するか、ユーロ巡る5つの疑問

[ブリュッセル 1日 ロイター] - イタリアで新内閣が発足したことにより、ユーロ圏離脱の是非を問う事実上の国民投票となっていたかもしれない再選挙の可能性を恐れていた金融市場は安心感に包まれた。

 6月1日、イタリアで新内閣が発足したことにより、ユーロ圏離脱の是非を問う事実上の国民投票となっていたかもしれない再選挙の可能性を恐れていた金融市場は安心感に包まれた。写真はユーロ硬貨。ローマで2011年12月撮影(2018年 ロイター/Tony Gentile)

以下は、イタリア政局を巡る5つの疑問への答えである。

●イタリアはユーロ圏から離脱するのか。

それは絶対にない。

3月の総選挙後から政治的空白が続いていたイタリアでは1日、政治経験のない法学教授ジュセッペ・コンテ氏が首相に就任。欧州連合(EU)懐疑派の大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右「同盟」の反主流派2党が支配する連立政府を率いる。単一通貨ユーロが経済に与える効果について批判的な両党だが、共同の政策案ではユーロ圏にとどまるとしている。

●ではなぜ金融市場は神経をとがらせているのか。

両党がユーロを維持したい意向を示し、イタリア有権者も同意見であることが各世論調査で明らかな一方、減税や借り入れや支出においてより柔軟さを求めているからだ。

だがイタリアはすでに、EUが設ける公的債務と財政赤字の基準の限界に達している。特別な新たな借金で歳出を増やすことを連立政権の政策案が言及していることは、かつての自国通貨リラへの回帰へ一歩踏み出すことになるとの批判的な見方もある。

ドイツやフランスのようなEUの大国は、域内のルールに従うようイタリアに警告している。イタリアが他の改革を行うなら、同ルールは同国の国益にかなうと主張している。これまでの不良債権の償却を巡る話や、ユーロ離脱強硬派であるパオロ・サボーナ氏の経済相指名への動き(彼は結局、欧州担当相に降格された)は、イタリアが債務返済を履行する気があるのかと債権団に疑念を抱かせている。

イタリアの10年債利回りは1日、ドイツの同利回りの7倍に達し、プレミアムは1カ月前の2倍以上に上昇した。

●イタリアは「新たなギリシャ」か。

アイルランドやポルトガル、キプロスと同様に、ギリシャもユーロ圏の各国政府から救済措置を受けた。債務が持続不可能となり、民間融資へのアクセスも事実上枯渇したためだ。ギリシャの左派政権は2015年、各国政府から融資を受けるのと引き換えに求められた緊縮措置を拒否。ドイツなどによってユーロから締め出されそうになった。

結局、ギリシャは合意し、現在は他のユーロ加盟国に2300億ユーロ(約29.5兆円)の借金を負っている。ユーロ圏救済基金の残高はこれを上回る4000億ユーロ。だがイタリアに対しては、ほとんど役に立たない。

イタリアの経済規模はギリシャのそれの10倍であり、2.4兆ユーロの債務はフランスの歳入にほぼ匹敵する。言い換えれば、イタリアは「つぶすには大きすぎる」。ユーロ圏は、域内第3位の経済大国であるイタリアを救済する力がない。

EUは、ギリシャのデフォルトについて、通貨ユーロの信用を打ち砕き、他国のコストを上昇させるものと考えていた。イタリアがデフォルトとなれば、そうなることは確実だ。だが、ギリシャ型の救済措置は選択肢にはない。それと同時に、低迷しているとはいえイタリア経済はギリシャのそれよりもはるかに力強く、多様な基盤があり、復活に向けた多くの選択肢があるとEU加盟各国は言う。

●それでもイタリアが支払えない、あるいは支払わないならどうなるか。

欧州委員会の政策下、イタリアは債務を減らすような予算を組むよう求められている。近年、それは達成できておらず、もし債務が膨らみ始めるようなら、委員会は罰金を科すことが可能だ。EUの当局者はそのような措置には限界があり、市場や国内政治による圧力の方が効果的である可能性を認めている。

ギリシャの場合がそうであったように、欧州中央銀行(ECB)は、イタリアの銀行資本の大部分を占める公的債務の価値が疑わしいと思うなら、同国銀行による通貨ユーロへのアクセスを制限する可能性がある。イタリアの信用格付けが格下げされ、投資適格を満たさなければ、それは現実のものとなるだろう。

そうなれば、イタリア国債はもはやECBの流動性にとって担保とはなり得ないか、あるいはイタリアの銀行にとってそのような資金調達はさらにいっそうコストがかかることになる。

似たような状況によって、ギリシャは2015年、資本規制導入を余儀なくされた。これは、ギリシャが保有するユーロと同国以外で流通するユーロとの差を生む第一歩となった。

投資家は返済不能リスクに対する補償を得ようと、大きな利回りを求め、イタリアはユーロや他の通貨での借り入れが不可能となり、例えば年金や公務員の給与を支払うために通貨のような手段を発行する可能性がある。失った信用の悪循環は直ちにイタリアを事実上、ユーロから締め出すことになるかもしれない。

●では、そうなる可能性はどの程度あるのか。

イタリアのユーロ離脱は、少なくとも短期的に、イタリア経済だけでなく欧州全体に極めて大きい混乱を巻き起こすだろう。そのため政治家や企業、国内外の有権者に離脱回避するための大きなインセンティブを与えることになる。

また、EU全体の深化構想にとっても大きな政治的打撃となり、他の多くの計画や世界における欧州の立場に疑問を投げかけることになる。まさにこれが理由で、ドイツやフランスなどはギリシャ救済に動いた。

そこから2つのことが考えられる。

1つ目は、イタリアの新政府が、変化しつつある国内政治状況と大混乱を引き起こさないよう求める圧力に直面することだ。つまり、現行の政策からの急激な変化は起こりそうもなく、そうした急進的な道を歩み始めなくても生き残りに苦労するかもしれないということだ。

2つ目は、イタリアの新しい指導者たちに何か見返りとなるような希望を与えることにより、他のEU加盟国は全力で混乱を避けようとするだろう。ギリシャ型の救済が不可能のようであっても、ブリュッセルや独仏はイタリアがユーロにとどまるようおだて、説得し、後押しする努力を惜しまないだろう。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

 6月1日、イタリアで新内閣が発足したことにより、ユーロ圏離脱の是非を問う事実上の国民投票となっていたかもしれない再選挙の可能性を恐れていた金融市場は安心感に包まれた。写真はコンテ新首相。ローマで5月撮影(2018年 ロイター/Alessandro Bianchi)

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