October 18, 2019 / 8:36 AM / a month ago

アングル:タックル巡り選手に混乱、ラグビーW杯 増える退場

[大分(日本) 14日 ロイター] - ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で、12日のサモア対アイルランド戦で交わされた短いやり取りには、ラグビー界で展開されている内部対立がみごとに現れていた。競技運営側が試合をさらに安全なものにしたいと考えているのに対して、プレーする側には若干の混乱や反発が見られるからだ。

 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で、12日のサモア対アイルランド戦で交わされた短いやり取りには、ラグビー界で展開されている内部対立がみごとに現れていた。写真は、危険なタックルをしたとしてイエローカードを受けるサモア代表セイララ・ラム選手。10月12日、福岡市で撮影(2019年 ロイター/Peter Cziborra)

サモア代表セイララ・ラム選手が、身体を低く沈めたジェイコブ・ストックデール選手の頭部に肩から当たったとしてイエローカードを与えられた場面だ。

「我々にどうしろと言うのか」とサモア主将のジャック・ラム選手は食い下がった。オーストラリア出身のニック・ベリー主審はあっさり「タックルはもっと低く」と返した。サモアはW杯日本大会で、これ以前にも何枚もカードをもらっている。

確かに、そうしたシンプルな話のはずだし、多くの人にとってはそれで終わりだ。だが、これほどスピードの速い身体接触を伴うスポーツでは、新しいガイドラインは適用不可能であり、一貫性のない判定が頻繁に生じている、という主張も見られる。

こうした議論の背景には、あらゆるレベルにおける数千人ものラグビー選手が、激突に伴う脳しんとうや、悲惨な結果に至りかねない脳損傷に悩まされ続けているという事実がある。そして、そのことが理解されるようになったのは、かなり最近になってからなのだ。

ワールドカップを主催する国際統括団体「ワールドラグビー」は、この状況を解明・改善する試みを開始し、長期・広範囲にわたる調査の結果、脳しんとうの圧倒的多数がタックルに伴って生じていることが明らかになった。

具体的には、タックルする選手が身体を起こした状態で、勢いを付けて相手の胸部より上に当たる状況では、それ以外の場合に比べて脳しんとうを起こす可能性がはるかに高くなる。

調査の結果を受けて、「ワールドラグビー」はハイタックルに関するフレームワークを策定した。危険と思われるタックルを分析する際にレフリーが考慮しなければならない段階的な判定プロセスであり、テレビ視聴者やスタジアムの観衆も、TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)と協議するレフリーマイクの音声を通じて、そのプロセスを耳にする。

「位置は高かったか。頭部への衝撃はあったか。バインドしようとしていたか。力を加えていたか。ペナルティを軽減する余地はあるか(タックルされた選手が屈んだ、タックルする選手が足を滑らせた、他の選手に押された、など)」

この3週間で見られたように、最終的にレッドカードという結果になることは多い。過去のワールドカップでは、1大会につきレッドカードの平均枚数は2枚強だった。今回の日本開催ではすでに7枚出ており、しかも決勝トーナメントはこれからだ。

過去数十年、タックルの原理とは、これまで常に伝統的な「ラグビーのタックル」と考えられていた動作によって、ある選手の前進を食い止め、地面に倒すことだった。しかしそれが徐々に「ヒット」という概念に取って代わられた。つまり、13人制のラグビーリーグ式のディフェンス、すなわち選手を跳ね返し「ゲインラインをめぐる争い」に勝利することが目的となったのである。

<「再教育」のプロセス>

かつてスコットランド代表やブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズでセンターとしてプレーし、双方のコーチも務めたイアン・マギーチャン氏は、サモア対アイルランド戦の後、「まさに、ラグビーという競技が変わりつつある」と語った。「もう脚へのタックルしか許されない。これは『再教育』のプロセスだ」

一部のカードは、頭部に肩が直接当たったことー典型的には「ノーバインド・タックル」によるものーに対するものだ。現行ルールのもとでは常にレッドカードが与えられるはずだが、実際にそうした厳罰が科されることはめったになかった。

それ以外のカードについては、もっと賛否が分れる。タックルする選手が最初は相手の肩や胸のあたりにぶつかった後で、上方に滑って頭部に当たってしまった場合である。

セイララ・ラム選手が受けたカードについて、元アイルランド代表キャプテンのブライアン・オドリスコル氏は、「選手があれだけ低く屈んだ場合、タックルする側がどうすべきか、私には分からない」と言う。さらにオドリスコル氏は、タックルされる選手が身体を沈めた場合、それに反応する時間はコンマ何秒しかない、とし、「『ビッグタックル』は、ルール上、ゲームから締め出されつつある」と語る。

だが、センチ単位の精度やミリ秒単位の反応が求められることに不満を漏らす人は、「ワールドラグビー」の趣旨を見落としている。「ワールドラグビー」は、当然ながら、あらゆるレベルの試合に配慮する義務を負っており、根本的なアプローチ変更を求めているのだ。つまり、姿勢の変化によって接触部位が変わることがあっても、それでもなお危険な接触にならないようにする、ということだ。

今回のワールドカップで笛を吹く何人かのフランス人レフリーが、選手に対して絶えずアドバイスしているとおりだ。つまり「行動を変えなさい」というメッセージである。

だが、「ワールドラグビー」の素晴らしい意図にもかかわらず、これを全面的に支持する人々にとってさえ、行動を変えることは簡単なことではない。

昨シーズン、イングランドにおける下部リーグであるRFUチャンピオンシップでは、脇より上へのタックルを禁止する実験的なルール変更が試行されたが、実際には脳しんとうをむしろ増やすことが分かり、早々に中止された。選手がこれまでよりコンタクトの前に姿勢を低くするようになった結果だと考えられている。

また、タックルをさらに低くするよう選手に強要すれば、選手が自由にオフロードパスできるようになってしまう、という批判もある。

確かにそれは真実だろうが、タックルに伴う脳損傷を身近に観察してきた人々としては、選手の安全性を高める代償として、パス回数が増え、おそらくはエキサイティングなトライが増えると何か困ることでもあるのか、説得力ある理由がほしいところだろう。

(翻訳:エァクレーレン)

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