September 14, 2019 / 9:37 PM / a month ago

「悪魔の詩」のラシュディ氏に聞く人生、死の恐怖や金銭感覚

[ニューヨーク 9日 ロイター] - 文学における魔術的リアリズムとは、超現実的で夢想的、不可能に見える瞬間を挟み込んで物語を展開する手法だ。

9月9日、イスラム教預言者ムハンマドを題材にし、世界中で話題になった小説「悪魔の詩」を執筆したサルマン・ラシュディ氏(写真)の作品が魔術的リアリズムの代表格であるなら、恐らく彼の実生活にも小説と同じような非日常的な出来事が当然散りばめられていても驚きはない。デンマークで2018年6月撮影(2019年 ロイター/Carsten Bundgaard/Ritzau Scanpix)

イスラム教預言者ムハンマドを題材にし、世界中で話題になった小説「悪魔の詩」を執筆したサルマン・ラシュディ氏の作品が、この魔術的リアリズムの代表格であるなら、恐らく彼の実生活にも小説と同じような非日常的な出来事が当然散りばめられていても驚きはない。

困窮していた若かりし頃のラシュディ氏が書いた「真夜中の子どもたち」は、英国の権威あるブッカー賞を受賞しただけでなく、歴代のブッカー賞作品の中の第1位に選ばれたこともある。「悪魔の詩」がイスラム教を冒涜しているとして、当時のイランの最高指導者から死刑宣告され、日々命の危機に瀕しながらの生活を何年も続けざるを得なくなった。

そして長年の米国生活を経て72歳となり、新著が再びブッカー賞候補にノミネートされたラシュディ氏にインタビューを行った。

主な質疑は以下の通り。

Q:若手小説家として活動し始めたころ、懐具合はどうだったのか。

A:ほとんどの時期はお金がなかった。そのころは英国暮らしで、得られるのは広告会社のパートタイムの仕事ぐらいで、働けるのは週2─3日だった。「真夜中の子どもたち」は執筆に5年かかり、生活の費用は(広告会社の)オグリビー・アンド・メイザーでの仕事で稼いでいた。

Q:食うや食わずの生活からヒット作家になった感じはどうだったか。

A:売れるようになるとは全く思っていなかった。出版先が決まるのさえおぼつかなかったのだ。出版された際も、世界的なベストセラーになるなど想定外だった。しかしそれで生活は変わり、とても感謝している。家で落ち着いて執筆作業ができるようになった。これは小説家にとってほぼ奇跡だ。

Q:成功した後、お金の面で何か失敗をしたか。

A:私は常にお金の使い方にかなり分別を持ってきた。例えばスピードの出る車は買っていない。購入したのはごく普通のシトロエンだった。お金があったとしても、ランボルギーニなどは絶対に欲しくない。無駄遣いしようという気持ちはないし、これまでだって一度も思ったことはない。

Q:死刑宣告を受け、考えられない事態を耐えたことで得た教訓は何か。

A:極度の重圧にさらされるという立場に実際に置かれるまで、人間は実際にどう対応してよいか本当には分からない。あらかじめ知っておくことなどできない。私が自分自身について学んだのは、持ちこたえ、反撃することは可能で、発狂はしないでいられるという事実だ。これは驚きだった。だれにだって、自分に備わっているのか疑わしいと思うような耐久力はある。

Q:南アフリカの学校の昼食のためにお金を寄付しているのはなぜか。

A:友人の1人が、「ランチボックス・ファンド」と呼ばれる南アの最貧困地域の学校の生徒たちに健康な食事を届ける団体を立ち上げた。この地域の不登校率は非常に高い。もし生徒らに学校にはおいしい食事があると伝えれば、授業に出て教育を受けられる。とても単純なアイデアだ。

Q:自分の子どもに伝えようとしている人生の教訓は。

A:親切心と勤勉さだ。幸いなことに、2人の息子は自分たちの好きなことに一生懸命になっている。いずれも私と同じ道を歩んではいないが、文学以外で人生を切り開いている。

長男は広報・イベント管理会社を所有し、次男は楽曲制作と音響工学の学位を取得しようとしているところだ。

Q:英国と米国の双方が今置かれている奇矯な政治状況から学べることは。

A:英国の欧州連合(EU)離脱に関しては、私はずっと強く反対している。私はこの崖っぷちへと引きずって行こうとする強大な力を止められると考えたい。多分無理なのかもしれないが、私は希望の世界の住人だ。

トランプ米大統領は、米国が本来の姿を取り戻す上で倒すべき存在だと思う。トランプ氏が再選した場合に起きることを考えるのは恐ろしい。来年11月は、米国民がどんな国に住みたいのかを決める本当の転機になるだろう。

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