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コラム

コラム:安いロシア産原油を購入、インドの「目算」に潜むリスク

[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - インドは安いロシア産原油の購入に突如として熱心になったが、代償を払わされるリスクが潜んでいる。欧州連合(EU)はロシア産原油の禁輸案を策定中で、スイスのビトルなど独立系大手エネルギー商社は年内にロシア産の取引を停止する方針だ。こうした中でインドはロシア産の購入を増やし、救いの手を差し伸べている。しかし、西側諸国がロシア石油産業の取引先にも制裁を広げる「二次的制裁」を発動すれば、インドは「免除措置」のチャンスを失いかねない。

 4月14日、 インドは安いロシア産原油の購入に突如として熱心になったが、代償を払わされるリスクが潜んでいる。写真は1日、ニューデリーを訪問したラブロフ露外相(左)を迎えるインドのジャイシャンカル外相(2022年 ロイター/@DrSJaishankar)

インドは、西側諸国によるロシアの締め付けに抗う姿勢を見せている。ロシア産ウラル原油の価格は北海ブレントの3分の1。インドのシタラマン財務相は今月、「燃料が安く手に入るのなら、なぜ買ってはいけないのか」と疑問を呈した。

国際エネルギー機関(IEA)によると、3月のロシア産原油の輸出量は日量570万バレルで、このうちインドが9%を購入した。同国は2月にはほとんど購入していなかった。中国のシェアはほぼ横ばいの24%で、国有製油大手の中国石油化工(シノペック)と中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)はロシアからの新規購入を見送った。欧州のシェアは61%から41%へと急低下した。

インドにも手札があることは認めざるを得ない。同国は、中国の影響力をけん制するために米国、日本、オーストラリアとともに設立した「クアッド」の一角を占めている。また、主要な小麦生産国であるウクライナへの侵攻による世界的な食糧危機を食い止めるため、余剰な小麦を輸出し、得点を稼いでいる。米政府が、少なくとも公式にはインド政府を強く非難していないのは確かだ。

しかし、インドの目算にはリスクが伴う。ロシア軍の残虐性があらわになるにつれ、米国とその同盟国はプーチン大統領に対して、より強固な立場を取る公算が大きい。その際にはロシア企業だけでなく、ロシア企業の取引先企業も対象にする二次的制裁が発動される可能性がある。

米国のトランプ前大統領がイランに制裁を科した後、米政府はインドなどの国について、イランからの原油購入継続を認める免除措置を取った。これは、米政府が核合意を破棄したことが事の発端だったから、という事情もある。しかし免除対象国が既にイラン産原油の購入量を大幅に削減していたのも事実だ。インドは今回、ロシア産原油について逆の動きをしている。

先月のインドの総石油需要は日量500万バレルで、このうちロシア産原油の比率は6%にすぎない。しかし原油価格の目先の安さに飛びついたインドは、転びやすい長い坂道に足を踏み入れてしまったのかもしれない。

●背景となるニュース

*世界的なエネルギー商社は、ロシア国営企業からの原油および燃料の購入を5月15日以降、削減することを計画している。欧州連合(EU)が打ち出した対ロシア制裁に違反するのを避けるため。ロイターが13日、複数の関係者の話として報じた。

*EUはロシアからの原油輸入を禁止していないが、この報道によると商社は既存の制裁措置の文言を順守するため、ロシア国営企業ロスネフチからの購入を減らしている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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