October 11, 2019 / 5:22 AM / in a month

焦点:トルコのシリア侵攻、ロシアの中東戦略に希望とリスク

[モスクワ 10日 ロイター] - トルコが9日、国境を越えてシリアへの軍事作戦を開始した。中東地域への影響力拡大をねらうロシアにとって、米軍引き揚げの隙を突く貴重なチャンスと言える。だが、プーチン大統領に近い関係者からは、トルコの軍事行動が長期化するほど、ロシア外交のリスクは増大するとの警告も聞こえてくる。

複数の関係者によると、プーチン氏は、トルコのエルドアン大統領からシリアのクルド人武装勢力を掃討すると事前に知らされた。その電話会談で、プーチン氏は期間と規模の両面で掃討作戦を限定的なものにとどめるよう強く希望したという。

「この対立は解消が早ければ早いほど、誰にとっても有益だ。トルコ側は、シリア政府軍と地上でぶつからないよう全力を挙げてほしい。ロシア兵との衝突はなおさらやめてもらいたい」と親プーチン派のロシアの有力上院議員、アンドレイ・クリモフ氏は言う。

<軍事支援と和平協議のかじ取り>

ロシアには微妙なかじ取りを迫られている。

同国はアサド政権が8年間の内戦で失った領域を空軍力を駆使して全て取り戻す手助けをするとシリアに約束し、国土の一体性が重要だと繰り返してきた。

一方、ロシアはトルコやイランと協力してシリア内戦の和平も進めている。和平を実現すれば、シリアの政治体制を左右する力を得るとともに、戦争するばかりではなく地域紛争を解決する力もあるということを証明できる。ロシアにはそうした期待がある。

だた、ロシアの和平への取り組みは「まやかし」で、アサド政権の正統性を取り戻し、欧州連合(EU)やペルシャ湾岸諸国からシリア復興資金を呼び込む手段にすぎないとの批判も聞かれる。

それでもプーチン政権にとって、内戦終結はロシアが中東で新たな政治力を確立することを意味する。特に米国がこの地域と距離を置こうとしている今、ロシアは自分たちの勢力扶植に躍起となっている。

<トルコの強硬作戦にはくぎ>

トルコ政府は、シリアのクルド人武装組織「人民防衛隊(YPG)」について、トルコ国内の反体制的なクルド人勢力と関係があるとの理由で「テロリスト集団」とみなしている。エルドアン政権による掃討作戦が長引いたり、泥沼化する可能性もある。そうなるとロシアの外交的な努力が水泡に帰すかもしれない。

全ての関係者は自制して欲しい、とプーチン氏側近のユーリ・ウシャコフ氏は言う。同氏は10日、「政治的な和解達成のために講じられた措置に打撃を与えないような現実的手段を慎重に考えることが重要だと思う」と強調。ロシアがお膳立てしているシリア憲法委員会の29日の初会合が滞りなく行われるよう求める一方、トルコの攻撃で市民に被害が出るのはロシアにとって受け入れられない、とくぎを刺した。

ロシアのラブロフ外相は10日、同国は既にシリア内戦の解決プロセスにおいて仲介者の役割を担っていると明言した。

このプロセスでは、トルコとシリアの協議、またアサド政権と国内のクルド人との協議が重要になる。シリアはトルコの国外への撤退を求めている。また、アサド政権は国内のクルド人が求める自治権を認めてこなかった。二つの難しい協議をロシアがそれぞれ取り持つ可能性があるということだ。

ラブロフ氏は記者団に、シリア政府とクルド人はいずれもロシアの行動を熱望していると指摘し、仲介を試みると表明した。

<成功すればプーチン氏に「相当な得点」>

英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のMathieu Boulegue研究員は、イスラエルやイラン、トルコ、クルド人勢力、シリアのアサド政権などこの地域の全ての当事者に対して同時に話ができるのは、恐らくロシアだけだろうとの見方を示した。

プーチン氏にすれば、各方面の仲介が成功すれば相当に意味のある政治的な得点になる。

 10月10日、トルコが国境を越えてシリアへの軍事作戦を開始した。中東地域への影響力拡大をねらうロシアにとって、米軍引き揚げの隙を突く貴重なチャンスと言える。写真はロシアのプーチン大統領(左)とトルコのエルドアン大統領。9月16日、トルコのアンカラで撮影(2019年 ロイター/代表撮影)

ロシア外務省系のシンクタンク、ロシア国際問題協議会のアンドレイ・コルチュノフ所長は「プーチン氏が事態収束にこぎ着ければ、それは大きな政治的勝利とみなされる」という。「プーチン氏は米国が手に負えなかったのにわれわれが成し遂げたと主張するだろう。ロシアの和平アプローチの方が、地政学的な敵対勢力の行動よりも有効だという意味にもなる」。

今後のロシアの動きについて、元外交官のウラジミール・フロロフ氏は、トルコの軍事作戦が限定的なものにとどまり、和平への取り組みを阻む公算が小さいことがわかれば、ロシアは容認しそうだ、とみている。

また同氏は、たとえトルコが作戦を拡大しようとして和平プロセスに影響が出そうであれば、ロシアはシリア国内に配備した防空システムと航空基地によってその企図をくじくことができると明言した。

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