January 7, 2018 / 3:27 AM / 4 months ago

焦点:シリアで地歩を固めるロシア、遠い和平への道

Tom Perry

 12月15日、シリア内戦の状況がアサド大統領率いる政権側に決定的に有利に転じるなかで、同大統領と連携するロシアは、軍事的な優勢を確かな地盤に転換し、分裂したシリアを安定させるとともに、中東地域でのロシア利権を確保したいと考えている。写真は2017年12月、シリアのラタキアにあるロシア空軍基地で演説するプーチン大統領。提供写真(2018年 ロイター Sputnik/Mikhail Klimentyev/Sputnik via REUTERS)

[ベイルート 15日 ロイター] - シリア内戦の状況がアサド大統領率いる政権側に決定的に有利に転じるなかで、同大統領と連携するロシアは、軍事的な優勢を確かな地盤に転換し、分裂したシリアを安定させるとともに、中東地域でのロシア利権を確保したいと考えている。

反体制勢力がアレッポで敗北してから1年、ロシア・イランの支援を受けた政府軍は、過激派組織イスラム国が樹立した「カリフ国家」の崩壊とともに、広大な地域を回復した。

国連の後押しによりジュネーブで開催された和平協議は何ら進展を見せずに失敗する一方で、ロシアは和平に向けた独自の政治プロセスを2018年に開始する準備を進めている。同国のプーチン大統領はシリア領内のロシア空軍基地を訪れた際、軍事的な使命は達成されたと宣言し、政治的な決着に向けた条件は熟していると述べた。

米国政府はあいかわらずアサド大統領の退陣を主張しているが、シリア反体制派の幹部がロイターに語ったところによれば、米国など反体制派を支援してきた各国政府は結局、内戦終結に関して「ロシア側の構想に譲歩した」という。

シリア政府は、これによってアサド氏の大統領としての地位は安泰だとみている。シリア政府当局者は、「和平への道筋がついたことは明らかだ。ロシアがそのプロセスを監視している」と話している。

「シリア危機の流れに変化が起きている。良い方への変化だ」とこの当局者は言う。

だが、シリアに恒久的な平和をもたらし、数百万人の難民に帰還を促し、西側諸国からの復興支援を確保することが、ロシア外交に可能かどうか、専門家は判断に苦しんでいる。

アサド氏が、対立する勢力との和解に前向きであるという兆候は何もない。またシリア内戦によって、アサド政権にとってロシア以外の重要な同盟相手であるイラン、そしてイラン革命防衛隊の中東地域における影響力拡大が可能になった。イラン政府は、シリア内戦がどのように決着しようと、この成果が損なわれることを望んでいない。

アサド政権の維持という点では密接に協力してきたイランとロシアだが、ここに来て両者の意見が分かれ、ロシアの政策が困難になる可能性もある。

現在、シリア国土の最大部分を支配しているのはアサド派の勢力であり、これに続くのが米国の支援するクルド人民兵組織だ。クルド人勢力は、シリア北部・東部の大部分を支配下に置いており、シリア政府との敵対より自治権の確立に関心を注いでいる。

アサド政権に抵抗する反体制派は、散在する支配地域を死守している。北西部のトルコ国境、南西部のイスラエル国境、そしてダマスカス近郊の東グータ地区である。いま最前線となっているのは東グータ地区と北西部だ。

「イラン革命防衛隊が、自分たちこそシリア内戦の勝者だと確信しているのは確かだ。イラン国内の強硬派は、アサド政権との共存で頭がいっぱいで、それを考えると、実のある進捗(しんちょく)は期待しにくい」と、元シリア駐在デンマーク大使のロルフ・ホルンボエ氏は指摘。

「アサド氏は、実質的に権力分有が生じるような政治的解決策は絶対に受け入れないだろう。受け入れられるとすれば、おそらく現状凍結だけだ」と同氏は語る。

<国際社会の「シリア危機疲れ」>

内戦がアサド政権有利に傾いたのは、2015年にロシアがアサド氏支援のために空軍を派遣してからだ。

今年、アサド氏にとってはさらに有利な材料が重なった。ロシアはトルコとの合意に達し、また、米国とヨルダンとは南西部での停戦に合意したことで、間接的にアサド派の東部への影響力拡大を助ける結果となった。さらに、米国政府が反体制派への軍事支援を停止した。

アサド体制の打倒は不可能に思われるが、西側諸国の政府は、復興支援を「真の体制移行」につながる信頼性の高い政治プロセスにリンクさせることで、変革を実現したいと願っている。

ロシアは、「和平協議は国連主導で」とリップサービスを見せつつ、黒海に面したリゾート地ソチで独自の協議の場を設けようとしている。目的は、新憲法制定とそれに続く議会選挙だ。

前出のシリア反体制派幹部は、米国のほか、彼らの大義を支援していた諸国(サウジアラビア、カタール、ヨルダン、トルコ)がすべて、ロシアに譲歩したと語る。和平協議の主な舞台は、国連主導のジュネーブではなく、ソチだ。

「米国、フランス、サウジアラビア、どの国の人と話しても、そのような理解に至る」とこの人物は語る。「このシナリオどおりになるだろうし、反対する国もないだろう。世界中がシリア内戦にうんざりしているからだ」

ロシア側の提案には、シリア難民も投票できるような選挙の実施に向けて、新政権を樹立することが含まれている。

しかし、このシリア反体制派幹部は、「スケジュールが6カ月なのか、それとも2年、3年なのか。すべてはロシアと米国の合意によって決まる」と話している。さらに「ロシアと米国の見解が一致しなければ、協議全体が振り出しに戻る可能性がある」とも言う。

<クルド人で意見割れるイランとロシア>

ロシアは政治的プロセスによる成果を重視しているが、あくまでも自国主導にこだわっていると語るのは、国際危機グループ(ICG)のアナリスト、ノア・ボンジー氏だ。

「その点でロシアが優れたセンスを持っているとは思えないし、政治的解決の程度によっては、ロシア国内でも、ロシアの同盟国とのあいだでも、利害対立が生じることになるだろう」との見方を同氏は示した。

シリア領内のクルド人問題は、ロシアとイランの思惑が分かれる点の1つだ。

イラン政府高官は最近、米国が支援していたクルド人勢力の支配地域を掌握すると発表した。一方のロシアは、クルド人勢力と彼らを支援する米国側との合意を成立させている。

クルド自治政府の有力政治家であるファウザ・ユセフ氏は、「内戦勃発当初から、ロシア、イラン、アサド政権のあいだには温度差があった」と指摘。クルド人勢力には「考慮すべき大義がある」というのがロシアの立場だ。

一方、シリア政府は、クルド人に対して独自の警告を行いつつも、シリア西部に残る反体制派の拠点への掃討作戦を進めるなかで、クルド人には引き続き自治を認める可能性がある。

南西部の情勢には、別の要因が作用している。すなわち、イスラエルがイランの支援を受けた武装勢力を国境から排除しようとしており、シリア内戦がイスラエルの軍事行動を誘発する可能性もある。

「シリア各地にはまだ重要な問題が数多く残っており、戦闘をエスカレートさせる可能性がある」と国際危機グループのボンジー氏は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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