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焦点:制裁逃れ、トルコやUAEで不動産買いあさるロシア富裕層

[イスタンブール/ドバイ 28日 ロイター] - ウクライナに侵攻したロシアに対して西側諸国が経済制裁を科したことで、資産の安全な逃避先を求めるロシアの富裕層が、今でもロシアとの関係が比較的良好なトルコとアラブ首長国連邦(UAE)で不動産を買いあさっている。

トルコの主要都市・イスタンブールの不動産会社、ゴールデン・サインの共同創業者、グル・グル氏は「毎日7戸から8戸をロシア人に販売している。支払いは現金だったり、トルコに銀行口座を開設したり、あるいは金を持ってきたりする」と語る。

UAEのドバイの不動産会社、モダン・リビングのシアゴ・カルダス最高経営責任者(CEO)は、10倍に跳ね上がったというロシア人顧客からの問い合わせに応じるため、ロシア語を話す営業担当者を3人採用した。

ロシアは2月24日のウクライナ侵攻以降、西側諸国から経済制裁を受け、国際的な金融システムの国際送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から除外されたほか、プーチン大統領に近いとされる新興財閥(オリガルヒ)など個人も制裁の対象となっている。

トルコとUAEもロシアの武力攻撃を批判はしているが、トルコが国連の枠を超えたロシア制裁に反対するなど、両国はロシアとの関係が比較的良好だ。現在もモスクワ直行便の運行を続け、ロシアから人や現金が国外に脱出するルートになっている可能性がある。

グル氏の話では、こうしたロシア人は裕福だがオリガルヒではない。トルコにお金を運ぶ手段を見つけ出しており「3棟から5棟のアパートを購入する顧客もいる」という。

ロシア人はトルコの不動産業者にとって、イラン人やイラク人に次ぐ優良顧客。何年も前からトルコで不動産を大量に購入している。ただ、不動産関係者によると、この数週間で需要は急増したという。

トルコ統計局の発表によると、ロシア軍がウクライナ国境に集結し、侵攻を開始した2月、既にロシア人はトルコで前年のほぼ2倍となる509戸の住宅を購入していた。

この統計は西側の対ロシア制裁が発動される前のデータだけに、不動産業者はロシア人向けの販売はさらに増えると見込んでいる。不動産市場はそもそも、新型コロナウイルスの世界的流行からの回復で需要が高まっていた。

3月28日、ウクライナに侵攻したロシアに対して西側諸国が経済制裁を科したことで、資産の安全な逃避先を求めるロシアの富裕層が、今でもロシアとの関係が比較的良好なトルコとアラブ首長国連邦(UAE)で不動産を買いあさっている。写真はドバイの集合住宅。25日撮影(2022年 ロイター/Christopher Pike)

イスタンブールで主に外国人向けに不動産を建設・販売しているイブラヒム・ババカン氏に取材したところ、以前は多くのロシア人が地中海のアンタルヤ地方などリゾート地に住みたがっていた。だが、今では投資のためにイスタンブールで集合住宅を買っている。

ロイターは住宅を購入した複数のロシア人に接触したが、いずれもインタビューを拒否した。

<居住面の優遇措置も狙い>

トルコとUAEは、不動産購入者に対して居住面での優遇措置を講じている。トルコでは、25万ドル以上の不動産を購入し、その物件を3年間保有した外国人は、トルコのパスポートを取得できる。中東のビジネス拠点であるドバイでは、もう少し低い金額で3年間の居住ビザ取得が可能だ。

不動産業界の関係者は、集合住宅の需要の大半を、ビザ取得基準の75万ディルハム(20万5000ドル)の物件が占めると説明。ドバイの華やかな人工島「パーム・ジュメイラ」のより高価な物件は、最高600万ディルハムで販売されていると指摘した。

モスクワとベルリンを拠点とする不動産仲介会社、トラニオのエレナ・ミリシェンコワ氏は「投資家は資本の保護と、UAEに一時的に身を移すための居住ビザ取得の機会の両方を手に入れたがっている」と述べた。同社はロシア人顧客による海外での不動産購入に力を入れている。 同社が今年1─3月に受けた集合住宅への引き合いは前年同期の3倍ほどに急増した。

需要がもっと増えている企業もある。

ドバイのモダン・リビングのカルダス氏は「ウクライナ侵攻が始まった直後、この地域で販売キャンペーンを展開したところ、問い合わせ数が少なくとも通常の10倍に上った」と語り、本当に裕福な買い手はウクライナとの戦争が起きる前から準備を進め、ロシアから資金をシフトしていたようだとの見方を示した。

<現金と暗号通貨>

UAEに拠点を置く不動産会社、ロイヤル・ホーム・リアル・エステートのエレナ・ティムシェンコ氏に話を聞く限り、ドバイに銀行口座を持つロシア人にとって、手続きは比較的容易だ。一方で、友人に頼ったり、助けを求める人もいるが、購入資金を集めるのに苦労する人もいるという。

「ドバイで不動産を買いたいと望むことと、実際に購入するのはまったく別物だ」と、購入資金の調達の難しさを指摘する。

トルコに新たに入国したロシア人の中には、制裁に抵触することを警戒する銀行で、預金や送金に難渋する人もいる。さらにビザやマスターカードなどクレジットカード会社の法令順守やロシアでの決済事情停止が困難に拍車をかけている。

UAEは昨年、不正な資金の流れを阻止するため、銀行に対して疑わしい取引の特定の手続きを厳格化する指針を発表した。しかし、トルコと同様に、国際組織「金融活動作業部会(FATF)」の監視対象国リストへの追加を阻止できなかった。

UAEのある銀行幹部は、銀行の顧客チェック体制は以前と変わらず、中銀から新たな指導は受けていないと説明している。

イスタンブールのババカン氏によると、これまでのところ取引のあるロシア人顧客は、問題なく銀行経由で支払いができていると話した。

イスタンブールの不動産業者、アレックス・チハノグル氏は、制裁によって金融取引がより難しくなった今、一部のロシア人は暗号通貨を現金に換えて決済しており「目にする取引のほとんどは、暗号通貨で行われている」と明かした。

(Ceyda Caglayan記者、 Saeed Azhar記者、Riham Alkousaa記者)

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