[東京 24日 ロイター] - ロシア政府高官やメディアによると、ロシア軍は24日、ウクライナの複数都市に攻撃を行った。プーチン露大統領はこれに先立ち、ロシア軍にウクライナでの特別軍事活動を承認した。
市場関係者に影響を聞いた。
●エネルギー価格上昇で円安の再考必要
<元自民党幹部職員の政治評論家 田村重信氏>
ロシアはドイツ向け天然ガス輸出の代わりに中国と大量供給で話をつないだので強気なのだろう。米国はアフガニスタンから撤退したため紛争で強いところを見せる必要があるのだろう。ロシアは核兵器保有国なので米ロはまじめに衝突してしまえば大変なことになってしまうのでそれは避ける闘いをするのだろう。
米国はエネルギー不足の欧州にエネルギーを供給できる。ロシアは原油・ガスの価格上昇を享受できる。米国ロシアともに資源大国で今回、経済的に利点がある。
資源小国である日本にとっては非常に微妙な情勢。冷戦構造のように米国に追随すればいい時代ではないので、将来日本がエネルギー、経済で国益を守ることができるのか、岸田文雄首相、林芳正外相の外交が試されている。
日本はエネルギーや食料の輸入国なので、価格が高騰するなかで円安が全ていいという時代ではないことも考える必要がある。石油、食品価格もどんどん値上げが進んでいる。岸田首相としても難しいかじ取りだ。
●原油価格と円高・株安が同時に影響
<野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏>
世界経済への影響はエネルギー価格の上昇に収れんする。ロシアへの経済制裁が強化されればロシアの貿易・経済には影響するが、ロシア経済の規模はさほど大きくなく日本との貿易関係も小さいため、日本経済への影響は主にエネルギー価格の上昇を通じてとなるだろう。
米国などが対ロ制裁手段として国際決済ネットワークシステムである国際銀行間通信協会(SWIFT)へのアクセスを遮断した場合、ロシアの銀行に対する債権はこげつく可能性があるが、影響が大きいのは欧州だろう。
日本経済への影響はあくまでエネルギー不足と天然ガスや原油、小麦などの価格上昇だろう。またリスク回避の円高、株安も同時に発生する。
●米金融政策正常化プロセスへの影響を注視
<みずほ銀行 金融市場部 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>
ロシアとウクライナの問題が長引いた場合、一番注目しなければならないのは米連邦準備理事会(FRB)の金融政策正常化プロセスがどうなるかという点だ。現時点では、政策変更を行うような雰囲気はみられていない。むしろ、地政学リスクの高まりで資源高が収束せずインフレ高進が続き、金融引き締めの方向性は変わらないとの見方も多いようだ。
ただ、世界的に株式市場が大きく下落している現状で、次に心配すべきは米国の経済だ。米国は家計金融資産の3割以上が株式を占めており、この調子で株安が続けば、個人消費や日々公表される経済指標も悪化するリスクがある。そうなった場合、FRBが利上げやバランスシート縮小の議論を続けられるかどうかは分からない。仮にFRBの金融政策運営が変われば、ドル安/円高が進む可能性があるだろう。
軍事衝突が起きたタイミングが一番リスクオフムードが強まるが、足元のドルは114円半ばで下げ渋っている。目先1週間程度、ドルは114円半ばから115円半ば程度での推移が続くのではないか。
また、短期的にはドルが116円台まで上昇する可能性は低いが、今後もドルが114円半ば付近で下げ止まれば、4―6月期にドル/円が年初来高値をトライできる環境は残りそうだ。
●原油高騰が日本株のリスク
<三井住友トラスト・アセットマネジメント チーフストラテジスト 上野裕之氏>
日経平均は2万6000円でもちこたえていたが、ウクライナ情勢の一段の緊迫化で崩れてきた。マーケットはロシアが事実上支配するウクライナ東部地域での軍事活動はある程度織り込んでいたものの、本格的な侵攻は時期尚早と見ていたのではないか。
今後本格的な戦闘が始まるとなると、原油価格は1バレル=100ドルを上回る水準での推移になるとみている。原油価格の急騰はもちろん日本株にとってリスクとなる。原油高に伴い食糧の国際価格の上昇が加速してしまうと、インフレ圧力が強まりやすい。日本(日銀)はもともと金利上昇を抑制していることもあり、打つ手がなくなってしまう。
ウクライナ情勢を巡っては報道が錯綜しており、現時点ではまだ分からないことが多い。アルゴリズムなどの機械取引がヘッドラインに過剰反応し、先物に売りを仕掛けたとみておいた方がいいだろう。
●スタグフレーションリスク織り込みへ
<JPモルガン証券 債券調査部長 山脇 貴史氏>
ウクライナ情勢の緊迫化でスタグフレーションリスクをもう一段織り込まなくてはいけない局面に来た。景気減速懸念だけでなく、原油や半導体など物価に幅広く上昇圧力がかかる可能性がある。
債券市場に与える影響は両面あり難しいが、焦点は金融政策だ。ECB(欧州中央銀行)や日銀は金融引き締めに向かうのがこれでかなり難しくなったが、FRB(米連邦準備理事会)は米国内のインフレ進行が激しいため、難しい舵取りを迫られる。
円債は金利低下方向だろう。米国の長期債や超長期債もまずは利上げ懸念よりも景気後退リスクを織り込み、低下圧力がかかるとみている。
マクロ政策の対応は財政が中心になるだろうが、これまでコロナ対応で歳出を増やしてきただけに、拡大は容易ではない。金融政策はサポートに徹するのではないか。
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