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アングル:サハリン事業への日本対応、侵攻長期化と欧州の動向にらみ

[東京 4日 ロイター] - ロシアによるウクライナ侵攻を受け、一部の欧米企業がロシアでの資源事業から撤退を表明するなか、サハリンの日ロ合弁事業について政府関係者の間でも様々な見方が出ている。日本は「サハリン2」プロジェクトから液化天然ガス(LNG)輸入量の8%を調達しており、現時点では現状維持が基本方針となる。しかし侵攻の長期化や欧州の動向によっては、日本企業が取引や権益の見直しを迫られる可能性も指摘され始めた。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、一部の欧米企業がロシアでの資源事業から撤退を表明するなか、サハリンの日ロ合弁事業について政府関係者の間でも様々な見方が出ている。写真は2009年2月、コルサコフ近郊のLNG工場近くで撮影したLNG運搬船(2022年 ロイター/Sergei Karpukhin)

<状況を把握する段階>

日本は戦前からサハリン北部で石油開発に取り組んでおり、現在2つの石油・天然ガス採掘プロジェクトに官民で参画している。このうち三井物産や三菱商事と合弁で「サハリン2」を展開する英石油大手シェルが2月28日、撤退を発表。政府や伊藤忠商事、丸紅などが共同出資会社を通じて出資する「サハリン1」でも合弁パートナーである米エクソンモービルが1日、撤退を表明したため、日本側の対応が注目されている。

岸田文雄首相は3日の記者会見で政府も出資する「サハリン1」への対応について「エネルギーの安定供給や安全保障の観点から、状況をしっかり判断した上で決定すべきことだ」と述べ、現在は状況を把握する段階との見方を示した。

萩生田一光経産相は1日午前の閣議後会見でロシアへの制裁強化にあたっては「エネルギー安全保障の観点も含めて、G7(主要7カ国)をはじめとする国際社会と連携していきたい」と語った。

「サハリン2」に出資する三井物産は「シェルの発表内容の詳細を分析中。日本政府とパートナーと検討を進めていきたい」、三菱商事は「シェルの発表内容の詳細を分析の上、日本政府およびパートナーとの検討を進める」とコメントするにとどめている。

政府内では現状、これらサハリン事業は基本継続の方針で「(ロシア侵攻が)長期化した場合には柔軟に対応する」(関係官庁)とされる。

「サハリン2」は国内で電力・ガス大手が調達する液化天然ガス(LNG)の8%を供給しており、「代替調達先が簡単には見つからない」(首相に近い政府関係者)という。

政府・与党内では「欧州も対ロ経済制裁を実施しつつもロシアからのガス調達は継続しており、日本も同様に継続可能」(与党幹部周辺)との声が多い。

サハリン2への出資継続に関しても「商社側が維持の姿勢」(関係官庁)として政府側は静観の姿勢だ。

<事業継続に疑問も、カギ握る欧州>

しかしウクライナ情勢の悪化を受けて、日本がサハリン事業に関与し続けることに厳しい声も出ている。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は1日の記者会見で「サハリン2」について「ロシアが国際法違反を繰り返していながら(日本企業が)何もなかったかのように取引していくことは考えられない」と述べた。国際協力銀行(JBIC)の前田匡史総裁も3日の会見で、サハリン事業について「同じように付き合いを続けることはあり得ない」との見方を示した。

政府内でもサハリン事業見直しの必要性を指摘する声が出始めた。経産省幹部は「ロシアからのLNG調達は、欧州同様継続できると思うが、日本の権益保持は国際社会の批判を浴びる可能性がある」と懸念を表明する。

首相に近い政府関係者は、ロシアのウクライナ侵攻が長期化した場合、「日本がロシアに資金供給を続けていること自体が批判されるリスクがある」と懸念する。エネルギー業界に詳しいある与党関係者は「現在はロシアからのガス調達を継続している欧州も調達を停止することになれば、日本も対応が必要だ」と指摘する。

「サハリン2」から三井物産や三菱商事が撤退する場合、有利な価格で権益を転売できなければ損失が発生する。商社は事業展開する各国・地域ごとに、出資先の倒産確率などに基づいたリスクを「ネット・エクスポージャー」として開示している。2021年3月末時点でロシア事業について三井物産は4602億円、三菱商事は2495億円としている。うちサハリン2関連は「それぞれ2000億円規模と推定される」(2社に投資する運用大手幹部)という。

LNG調達量の半分をサハリンから調達する広島ガスは「現時点でサハリンからの調達方針に変更はない」(広報担当者)とするものの、今後対ロ経済制裁強化で調達が難しくなるケースを想定し、「第1段階では、マレーシアやインドネシアからのLNG調達量を増やし、足りない場合は他の国内電力・ガス企業から融通、それでも足りない場合はマーケットでスポット調達」との計画をまとめている。

(竹本能文 編集:石田仁志)

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