[香港 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 韓国サムスン電子005930.KSの株価は今年を通じておよそ25%も下落し、過去10年で最悪の値動きになった。
主力製品であるメモリーチップの価格が供給過剰のため下がり続け、同社が今後成長の原動力とすべき事業がはっきりしないためだ。
サムスンはさまざまな面で足場がもろくなっているように見える。そもそも半導体事業は、年間営業利益の4分の3を稼いでいる。そして同社が大きな比重を占める韓国経済自体は輸出依存型で、貿易摩擦激化や新興国からの資金流出による悪影響を受けやすい。企業統治に関するリスクも多い。例えば事実上のトップであるイ・ジェヨン(李在鎔)副会長は、贈賄などの罪で有罪判決を受け控訴中だ。
これらを総合的に考えると、イ氏には次の有力成長分野を見つけ出すことを求める圧力が強まってくる。同氏の父親は、スマートフォンやサーバー向けのメモリーである「NAND」や「DRAM」にいち早く賭けたおかげで、昨年には米インテルINTC.Oに代わってサムスンを売上高で世界第1位の座に押し上げた。
インテルは何十年間にもわたり、パソコン向けの半導体メーカーの一番手として君臨してきたが、モバイル機器の隆盛を読み切れず、サムスンに後れを取った。
ところがこのサムスンの優位は、メモリーチップの需要冷え込みによって次第に居心地が悪くなってきた。調査会社IDCによると、第3・四半期の世界のスマホ出荷は前年同期比6%減少し、4期連続のマイナスとなった。こうした事態はスマホ本体やディスプレイの製造を含めたサムスンの他の事業も危うくしている。
サムスンは第5世代通信規格(5G)や機械学習、自動運転車向けのチップといった新技術の開発を始めている。ただし競争は激烈だ。人工知能(AI)の登場で、エヌビディアNVDA.Oやアドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD.Oといったより隙間的なメーカーの急速な台頭が可能になっているからだ。
イ氏は時流に追い付くために、サムスンの手元資金を活用せざるを得なくなるかもしれない。
バースタインのアナリストチームの試算では、来年末までに手元資金総額は119兆ウォン(1050億ドル)に達する見通し。サムスンは、2年前につながる車(コネクテッド・カー)の普及を見越して米オーディオ・自動車部品会社ハーマンを80億ドルで取得した以外は、これまで大型買収を控える傾向にあった。
しかしサムスンがインテルの轍(てつ)を踏みたくないなら、既成の枠にとらわれない考えが再び必要になるのではないか。
●背景となるニュース
・米マイクロン・テクノロジーは18日、スマホとコンピューターの需要が弱まっており、メモリーチップの世界的な供給過剰をもたらしているとの見方を示した。
・10月にはサムスン電子とSKハイニックスも、半導体の需要鈍化と価格下落により、2年にわたる市況好調局面が終わりを迎えていると警告した。
・DRAMメモリーチップ市場では、これら3社の合計シェアが圧倒的な割合を占めている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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