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コラム

コラム:サウジアラムコ「アジアの原油需要回復」は現実の姿か

[ローンセストン(オーストラリア) 11日 ロイター] - サウジアラビア国営石油サウジアラムコ2222.SEは、原油需要の世界的な回復を見込んでいる。だからこそ、アジアの製油業者向けの9月積み原油販売価格引き下げを小幅にとどめたとみられる。

8月11日、サウジアラビア国営石油サウジアラムコは、原油需要の世界的な回復を見込んでいる。サウジアラビアのアブカイクにあるサウジアラムコ石油施設で2019年10月撮影(2020年 ロイター/Maxim Shemetov)

ただ顧客側の見方は恐らく異なるだろう。

アラムコのアミン・ナセル最高経営責任者(CEO)は9日、記者団に、各国が新型コロナウイルスの感染拡大防止策として実施していたロックダウンを解除し、経済活動再開を目指している中で、原油需要は持ち直しつつあるとの考えを明らかにした。

ナセル氏は「中国に目を向ければ、ガソリンと軽油の需要はほぼコロナ前の水準になっている。アジア(市場)は上向いており、他の市場も同様だ」と語った。

サウジ産原油にとってアジアは重要な市場であり、確かに需要が底を打ったことを示す幾つかの材料は出てきている。しかし中国を除けば、需要はコロナ前より大幅に低水準にとどまっている公算が大きい。

ナセル氏の発言には、アラムコが先週決定した、アジアの顧客向け9月積み出し分のアラビアン・ライトOPS(公式販売価格)の前提条件が反映されているとみることができる。

同OPSは結局0.30ドル引き下げられ、オマーン/ドバイ平均に対するプレミアムは0.90ドルとなった。この値下げ幅は、ロイターが事前にアジアの精製業者を対象に実施した調査で示された予想の下限にとどまり、既に低調な精製マージンに苦しめられている業者にとってほとんど助けにはならない。

ブルームバーグによると、一部の精製業者はこうした状況を踏まえ、取引量の調整が可能な契約条件に基づき、アラムコから9月に購入する原油量を減らした。

精製マージンの指標はいろいろあるが、いずれもアジア勢が厳しい環境に置かれていることを示している。例えばシンガポールの精製業者のマージンは10日に1バレル=0.75ドルと、6月末に付けた今年最低の0.10ドルがそう遠くない水準まで落ち込んだ。第1・四半期の約3-5ドルに比べるとはるかに低い。

最重要品であるガソリンで見ると、マージンはシンガポールにおける北海ブレント精製の場合で10日が1.93ドル。これは3月半ばから5月半ばまでのマイナスよりましになったとはいえ、昨年下半期の3-10ドルというレンジに全く及ばない。

<中国巡る不透明感>

精製マージンが足元で低迷している中で、果たしてアジアで原油需要が持ち直しているというアラムコの見方は正しいのだろうか。また需要が回復しているとしても、業者が持続可能な形で操業できるような精製マージンの押し上げに十分な勢いはあるのか。

答えを導き出すには、経済動向に違いが出ている中国と残りのアジアを、区別するのが最適だ。

中国は「V字形」の景気回復を達成しつつあるもようで、新型コロナウイルスで経済に打撃を受けた時期が世界で最も早く、立ち直りも最初だった点からすると、他の地域に先行して動いている。

ところがすさまじいペースで推移している中国の原油輸入にはただし書きがつく。一時的なサウジとロシアの価格戦争で原油価格が急落した機会に購入された分は、中国に到着するのは今月が最後になるので、輸入の高水準局面は終わりそうだからだ。

具体的に見ると、7月の輸入は日量1208万バレルで、過去最高だった6月の1294万バレルを下回ったとはいえ、過去2番目を記録。3カ月ベースで過去最高だったのは、直近の3カ月だった。

8月も堅調は維持するだろう。しかし原油価格が反発した以上、中国が同じペースで原油を買い続ける可能性は乏しいため、9月以降はどうなるかは分からない。

アジア地域の石油製品供給は十分な以上、中国の精製業者がマージンを犠牲にしてまで余った製品を売り込もうとしても苦戦するかもしれない。

中国に次ぐアジア第2の原油輸入国インドは需要改善の兆候が見られ、リフィニティブ・オイル・リサーチの予想では7月の輸入は日量375万バレルと、6月の344万バレルを上回ったもようだ。

それでもインドのロックダウン開始前の水準と比べれば非常に低い。3月と2月の輸入はそれぞれ480万バレルと478万バレルだった。

日本、韓国、台湾、シンガポールもインドと傾向は変わらず、輸入需要が幾分回復したとはいえ、まだコロナ前の水準を取り戻していない。

つまりアジアの顧客向け原油の値下げをわずかにとどめたアラムコの判断は、リスクをはらんでいる。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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