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コラム

コラム:サウジが目指すゲーム産業のハブ、原油高で巨額投資

[ロンドン 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 人気のクライムアクションゲーム「グランド・セフト・オートV」の中で麻薬と酒に満ちた架空の都市ロスサントスをさまようプレーヤーが、真っ先にサウジアラビアを思い浮かべることはないだろう。しかし実はサウジは2030年までにゲーム産業の「究極の世界的ハブ」となる計画を加速している。一見突拍子もないように思えるが、それなりの理由がある。

 10月11日、人気のクライムアクションゲーム「グランド・セフト・オートV」の中で麻薬と酒に満ちた架空の都市ロスサントスをさまようプレーヤーが、真っ先にサウジアラビアを思い浮かべることはないだろう。写真はサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子。アテネで7月撮影(2022年 ロイター/Louiza Vradi)

サウジの実力者ムハンマド皇太子は先月、政府系ファンド(SWF)パブリック・インベストメント・ファンド(PIF、運用資産6200億ドル)傘下のゲーム会社サビー・ゲームズ・グループによる380億ドルの投資戦略を明らかにした。サビーは潤沢な資金によって海外のビデオゲーム会社の少数株式を取得し、ゲームやeスポーツ分野のスタートアップ企業に投資するほか、主要なゲームパブリッシャー(発売元)に130億ドルを充てる。

データ会社ピッチブックによると、昨年のゲーム産業の合併・買収(M&A)は370億ドル。サビーの投資規模がいかに巨額かが分かる。目標は2030年までにサウジの国内総生産(GDP)に対するゲーム産業の寄与を130億ドルに引き上げること。サウジは21年のGDPが8340億ドルだった。

この数字の達成には人材を海外から集め、育成し、しかもそれを大規模に行う必要がある。ゲーム業界団体Ukieによると、英国では同産業従事者の82%が大学の学部卒。また働き手は、モバイルゲームにおけるフィンランドやパソコンゲーム開発におけるポーランドのように一定の地域に集中し、長期にわたって「ホットスポット」を形成する傾向がある。サウジは独自のゲーム開発スタジオを展開しているが、ゲーム制作分野で確固たる実績がなく、投資先企業に現地オフィスを開設してもらうには工夫が必要だろう。

それでもサウジは前へと進んでいる。例えばサビーは6月にスウェーデンのゲーム開発会社エンブレーサーの8%株式を取得した際に、新型コロナウイル流行期の高値から3分の1程度値下がりしたエンブレーサー株に15%のプレミアムを支払ったが、その見返りは得られた。エンブレーサーは、サビーの投資によりこの地域の拠点をサウジに置くことが可能になると説明したからだ。

今はゲーム業界で優良な買収対象を物色する好機でもある。サウジは油価高騰による増収が2020年の3倍近い3000億ドル超となりそうだ。一方、ゲーム企業は株価が低迷、グローバルXビデオ・ゲームズ&イースポーツETFは今年に入って37%下げている。ドルと連動するリヤルが高騰していることも追い風で、円安によりセガサミーやカプコンなど日本のゲーム会社は割安になっている。

逆風も吹く。ポーランドのCDプロジェクトやフランスのユービーアイフト・エンタテインメントなど、まだ買収されていない上場ゲーム会社の多くは創業者が経営権を握り、独立志向が強い。サウジなど産油国から減産自制の呼びかけを拒否された米国も、自国のゲーム会社にサウジ資本が入ることについて、その程度にかかわらず乗り気でないかもしれない。

しかし、サウジ経済はいずれ化石燃料から脱却することが不可欠で、マレーシアのようにゲーム産業を駆使し、地域のハイテクハブを作ることは可能だということが証明されてもいる。今が口火を切る絶好の機会と言えそうだ。

●背景となるニュース

*サウジ国営通信(SPA)は9月29日、サウジアラビアの政府系ファンド(SWF)パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)傘下のゲーム会社サビー・ゲームズ・グループが1420億リヤル(380億ドル)を投資し、サウジをゲーム産業の世界的ハブに育てる計画だと報じた。サビーはサウジのムハンマド皇太子が会長を務めている。

*SPAによると、サビーは国内に250のゲーム会社を設立、3万9000人の雇用を創出し、ゲーム産業の国内総生産(GDP)に対する寄与を2030年までに500億リヤルに引き上げることを目指している。

*スウェーデンのゲーム開発会社エンブレーサーは6月8日、サビーが発行株式の直接的な取得によりエンブレーサーの8.1%株を取得したと発表した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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