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焦点:サウジ制裁恐れるレバノン、カタール断交「二の舞」あるか
2017年11月14日 / 23:03 / 4日前

焦点:サウジ制裁恐れるレバノン、カタール断交「二の舞」あるか

[ベイルート 13日 ロイター] - レバノンの政治家や銀行関係者は、サウジアラビアが、カタールにしたことと同じことを自分たちの国にもするつもりだと考えている。つまりそれは、自国の要求が通らない限り、アラブの同盟諸国を使って経済封鎖の包囲網を敷く、ということだ。

 11月13日、レバノンの政治家や銀行関係者は、サウジアラビアが、カタールにしたことと同じことを自分たちの国にもするつもりだと考えている。写真は突然、サウジで首相辞任を表明したレバノンのハリリ氏。レバノン首都ベイルートで12日撮影(2017年 ロイター/Jamal Saidi)

世界最大の液化天然ガス輸出国であり、人口わずか30万人のカタールとは異なり、レバノンにはそれを切り抜けるための天然資源も財源もなく、同国の国民は心配している。

レバノン人最大40万人が湾岸地域で働いており、彼らによる自国への送金は年間で推定70億─80億ドル(約7950億─9080億円)とみられ、レバノン経済を維持し、大きな債務を抱える同国政府を機能させるうえで欠かせない資金源となっている。

「すでにひどい状況にあるレバノン経済にとって、深刻な脅威だ。送金が停止されたら、壊滅的だ」と、レバノンのある高官はロイターに語った。

このような脅威は、11月4日にレバノンのサード・ハリリ首相が、サウジの首都リヤドからテレビを通じて突然辞任を表明したことが発端となっている。レバノンの政治的指導者らは、サウジからの圧力により、このような電撃辞任表明が行われたとみている。

サウジ寄りのハリリ氏は12日、アラブ諸国がレバノンに対し制裁を行う可能性や、湾岸地域に暮らす大勢のレバノン人の生活が直面する危険について警告した。

同氏はまた、レバノンが制裁を回避するためのサウジ側の条件を説明。イランの支援を受ける主要なレバノン政治勢力であり、連立与党の一員であるイスラム教シーア派組織ヒズボラが、地域の紛争、とりわけイエメンでの内戦に干渉するのをやめなくてはならない、というのだ。

サウジの意向に詳しいレバノンの情報筋によれば、ハリリ氏のインタビューは「妥協に至らなければ、何がわれわれを待ち受けているかのヒントを与えてくれた。手本となるのはカタールだ」という。

ハリリ首相の辞任によって、レバノンは、スンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランの間で高まるライバル関係の中心に立たされる羽目になった。

32歳のムハンマド皇太子が新たに主導権を握るなか、サウジがこれまで取ってきた非対立的なレバノン政策は過去のものになったと、専門家らは指摘する。

ムハンマド皇太子はサウジの事実上の支配者であり、軍や政治、経済問題を指揮している。

サウジに対し、イランとヒズボラが相当の譲歩を行う意思があるかどうかは疑わしいと関係筋は言う。

「彼ら(ヒズボラ)は表面上、譲歩を見せるかもしれないが、サウジの条件をのむことはないだろう」と、ヒズボラの考えに詳しいある関係筋は語った。

<ボールはヒズボラの手に>

サウジはハリリ氏に、レバノンに戻ってミシェル・アウン大統領を説得し、対話の場を設けてヒズボラの地域介入を巡るサウジ側の条件を検討することを期待していると、レバノンの専門家サーキス・ナオウム氏は指摘する。

「彼ら(レバノン)はサウジを満足させるような立ち位置を見つけ出さなくてはならない。サウジは制裁を決めたら実行する」と同氏は述べた。

 11月13日、レバノンの政治家や銀行関係者は、サウジアラビアが、カタールにしたことと同じことを自分たちの国にもするつもりだと考えている。写真左は突然、サウジで首相辞任を表明したレバノンのハリリ氏のポスター。レバノン首都ベイルートで撮影(2017年 ロイター/Mohamed Azakir)

ハリリ氏に近い人物は、同氏が「『これまでのように事は運ばない』と言うことで、アウン大統領、そしてヒズボラとその同盟国にボールを投げた」と話す。

「見せかけではない。制裁ははっきりと警告された。彼ら(サウジ)はレバノンがヒズボラと手を切ることを望んでいる」

アウン大統領はまもなく帰国するとのハリリ氏の発言を歓迎していると、関係筋は13日語った。

サウジのレバノンに対する不満は、外交政策における相次ぐ失敗を受けて高まったとみられる。

サウジは2015年、イランの支援を受けるイエメンのシーア派武装組織「フーシ派」に対して攻撃を仕掛け、泥沼の戦争に陥っている。

サウジは、フーシ派を支援しているとしてイランとヒズボラを非難。また、今月にイエメンからリヤドに向けて弾道ミサイルが発射された件にヒズボラが関与したと主張している。

対レバノン制裁には、飛行機の運航や査証(ビザ)、輸出や送金の禁止が含まれる可能性があると、関係筋は言う。

これらの制裁の一部はすでに6月からカタールに科されているが、これまでのところあまり効果は見られず、カタールはイランとの距離を縮めている。

<サウジの新政策>

レバノンにとって、外国の支援者に対する忠誠は今に始まったことではない。同国のスンニ派は、支持や支援を常にサウジに期待してきた。一方、シーア派はイランとヒズボラに頼る傾向にあった。

「レバノンはずっと外国勢力のエージェントであり続けてきた。カネをもらい、約束を交わし、誓いを立て、同盟を結ぶ」と前出のナオウム氏は指摘する。だが、ヒズボラがイランに対し約束を果たす一方、スンニ派勢力はサウジを失望させているという。

イランからの支援もあり、ヒズボラはレバノン政治の中枢を担うばかりか、シリアなど中東各地でも極めて重要な役割を果たしている。

レバノン内戦(1975─90年)や内戦勃発後の同国南部へのイスラエル侵攻後、サウジはレバノンに何十億ドルもの復興支援を行ってきた。

現在、サウジは要求が通らなければ、レバノンに対し深刻な経済的ダメージを与える用意があるようだ。そうなれば、レバノン国内、ひいては地域におけるヒズボラの地位は弱体化する可能性がある。

サウジの条件は、ヒズボラを「国家のなかの国家」と見てきた一部のレバノン人を不安にさせている。解決策は、当事者の間からは出てこないと考える人は多い。

「レバノンは代償を払うことになるだろう」と、同国のある銀行幹部はロイターに語った。「サウジは経済以外の圧力はかけてこない。打撃となる制裁を課して、圧力をかけるだろう」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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