July 31, 2018 / 6:16 AM / 19 days ago

アングル:サウジ、なぜ紅海経由の原油出荷を停止したか

[リヤド/ドバイ 30日 ロイター] - サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は先週、紅海の南端に位置するバベルマンデブ海峡を通るすべての原油の出荷を「一時的に停止」すると発表した。

 7月30日、サウジアラビアは先週、紅海の南端に位置するバベルマンデブ海峡を通るすべての原油の出荷を「一時的に停止」すると発表。写真は5月、サウジでサウジアラムコの原油タンク前を歩く職員(2018年 ロイター/Ahmed Jadallah)

原油タンカー2隻が同海峡を通過中に、イランが支援するイエメンのイスラム教シーア派武装組織のフーシ派に攻撃されたことを受けた措置だった。

今のところ他の産油国はサウジに追随して出荷停止に動いていない。もし同海峡が全面的に封鎖されれば、欧州と米国に向かう原油および石油製品およそ日量480万バレルの輸送が止まってしまう。

サウジなどの有志連合によるイエメンのフーシ派への軍事行動を支持している西側諸国は、今回のタンカー攻撃に懸念を表明した。ただ同海峡の安全確保に向けて具体的な行動に出る気配はない。中東の両雄であるサウジとイランの代理戦争にさらに深く巻き込まれてしまう恐れがあるからだ。

<西側の支持引き出し>

バベルマンデブ海峡の航行の危険性は、今年に入ってくすぶり続けてきた。今回のタンカー攻撃のような事件の後に、安全性が改めて問題視されるのも珍しいことではない。それでもサウジ政府がことさら脅威を言い立てたのは、政治的な意味合いが込められている。

専門家の見立てでは、サウジはフーシが生み出す危険を西側諸国により深刻に受け止めさせ、イエメンにおける軍事行動への支援を強化してもらおうと目論んでいる。この軍事行動で数多くの空爆を重ね、限定的な地上作戦も実施したが、世界最悪の人道上の危機を深めながら、それほどの成果を挙げられていない。

サウジアラムコ元幹部のエネルギーコンサルタント、Sadadal-Husseini氏は、サウジ側はフーシ派の攻撃が世界の耳目に届かずにいるのを許さず、これを後ろ盾のイランが世界経済を破壊する行為として、白日の下にさらすことにしたと指摘した。

サウジの出荷停止は、米政府がイラン核合意からの離脱を宣言した後も、同合意の枠組みを支持し続ける欧州諸国に対して、イランの弾道ミサイル開発により強硬な姿勢を取るよう迫る狙いもある。

こうしたサウジの動きが米政府と協調した上でのものだとは正式に確認されていない。もっともある専門家は、両国の戦略的な結び付きを考えれば、逆に米国側に話が通じていなかったなら驚きだと述べた。

<一触即発>

 7月30日、サウジアラビアは先週、紅海の南端に位置するバベルマンデブ海峡を通るすべての原油の出荷を「一時的に停止」すると発表。写真は1月、イエメン中部マリブで原油を運ぶトラック前を歩くサウジ兵士(2018年 ロイター/Faisal Al Nasser)

全ての関係者がサウジとフーシ派の全面衝突を強く望んでいるわけではないが、両者はそれぞれの思惑からより思い切った行動に出たいと考えているもようだ。

シンガポールのラジャラトナム国際研究院のシニアフェロー、ジェームズ・ドーシー氏は、フーシ派が挑発を繰り返してイエメンにおけるサウジの軍事行動を中止に追い込むための交渉機会を作り上げたい一方、サウジは米国からさらなる支援を受けて軍事行動の成功を宣言できる状況にしたいのだとの見方を示した。

ただどちらかが計算を誤れば、想定以上に強硬な反応が返ってくるリスクがある。RBCキャピタル・マーケッツのコモディティ戦略グローバル責任者ヘリマ・クロフト氏は、たった1発のミサイルがより直接的な衝突につながる一触即発の事態になっていると不安を表明した。

<代替策>

サウジは出荷停止期間について「状況が明らかになり、海峡の安全が確認されるまで」と説明している。

それがいつになるかは定かでないが、サウジが欧州や米国に供給するルートを他にも持ち合わせている以上、大急ぎでバベルマンデブ海峡経由の出荷を再開しないかもしれない。

アフリカ大陸の南端を回って輸送する方法は、時間も費用も相当余分にかかるので、代替策にはならないだろう。むしろサウジは陸上のパイプラインを活用して、東部の油田地帯から紅海の積出港ヤンブーに原油を移し、欧州や北米に出荷するとみられる。

サウジが外国籍のタンカーをチャーターし、バベルマンデブ海峡を航行するなどの手も考えられる。

<必要な政治的解決>

今回のタンカー攻撃の前から、海運会社はバベルマンデブ海峡通過に際して、武装警備員の配置や監視人増強、航行速度アップといった方法で用心してきた。

それでも国連は1月の報告書で、既存の手段では喫水線下に仕掛けられる爆発物や対艦ミサイル、地上から発射される対戦車誘導弾、機雷などから船舶を守ることはできないと警告した。

複数の専門家の話では、今後は米国などが海軍艦艇を派遣し、タンカーを護衛したり、フーシ派の武器調達能力を低下させるための新たな措置を講じる可能性がある。

10年前にはイエメンのアデン沖で海軍パトロールを強化した結果、海賊の活動が弱まった例もある。だが今回西側諸国は、イエメンでの紛争に深入りしたくないため、直接的な関与はしない公算が大きい。

Slideshow (2 Images)

インターナショナル・クライシス・グループのエリザベス・ディキンソン氏は、軍事的な手段が用いられればバベルマンデブ海峡の脅威に有効かもしれないが、現実的な唯一の解決策はイエメンの紛争で当事者が和解することで、残念ながらまだそれが実現できるかどうかは流動的だとみている。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below