October 17, 2018 / 6:29 AM / a month ago

コラム:記者不明事件、米議会はサウジ制裁に動くか

[ワシントン/ダラス 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビアに制裁を科す可能性を巡り、米議会がぎりぎりの線を探っている。

サウジの反政府記者ジャマル・カショギ氏が消息を絶った事件について答えを得るため、米議員は対ロシア制裁の根拠となった法律を持ち出している。また、サウジに対して、ロシアと同じような制裁を科す機運も生まれている。

だが、サウジが報復に動けば、原油価格の高騰を招き、トランプ米大統領が産油国にかけている価格押し下げ圧力を帳消しにするだろう。

カショギ氏失踪を巡る疑惑はあまりにも大胆なものであり、共和、民主両党の議員が声を合わせてサウジを非難している。

超党派の上院議員22人は先週、トランプ大統領に書簡を送り、カショギ氏の失踪を調査するよう要請した。これは、人権侵害に関与した当局者に対する厳しい制裁を定めた「マグニッキー法」に基づいた要請であり、トランプ大統領は120日以内に議会に調査結果を報告し、海外当局者に制裁を科す必要があるかを判断しなければならない。

これには、サウジの王位継承者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、米国資産の凍結や米国入国禁止などの制裁の対象となる可能性も含まれる。

トランプ大統領は、サウジ王室が事件に関わったなら処罰すると述べたものの、15日には失踪に「ならず者の殺害者」が関わった可能性があると発言。トランプ氏が、ムハンマド皇太子を制裁対象に含めることは考えにくく、それは多くの議員にとっても「高望み」なのかもしれない。

だがそれでも、トランプ大統領の盟友で共和党の重鎮リンジー・グラハム上院議員は16日、フォックスに対し、「サウジアラビアに徹底的な制裁を科したい」と述べ、ムハンマド皇太子が解任されるまで同国を訪問しないと宣言した。

とはいえ、ロシア制裁の例にならい、サウジ企業をターゲットにすることで、米議会は制裁の威力を高めることができる。

国営石油会社サウジアラムコを制裁対象にすることは現実的ではないかもしれないが、石油化学大手のサウジアラビア基礎産業公社(SABIC)2010.SEやサウジアラビア航空など、知名度は比較的低いが重要な企業が候補として考えられる。議員の側近3人はBREAKINGVIEWSに対し、すべての選択肢が検討されるだろうと述べた。

米議会は、大統領の支持を得ずに、独自で行動することも可能だ。大統領の拒否権を回避するために必要な3分の2以上の議員の賛同を上下両院が得る可能性は高い。

過去にも、米議会にサウジに対する怒りが渦巻いたことがある。

2001年に起きた米同時多発攻撃の実行犯を支援したとして、犠牲者遺族がサウジ政府に対して損害賠償を請求できるようにする法案が審議されていた2016年当時、サウジが同法案に反対するロビー活動を行い、議員の反感を買った。この時、議会は当時のオバマ大統領の拒否権を覆し、法案を成立させている。

今回のカショギ記者を巡る事件では、サウジ側ロビイストは米議員への働きかけを行っていない。サウジとの契約を解除したロビイストもいる。

だが制裁となれば、望まない結果を招くことになりかねない。

どんな形にせよ米国が制裁を科せば、サウジ側は原油を武器として用いる可能性がある。過去には、イスラエルを軍事的に支持していた米国などの国に対して1973年に石油禁輸を決めた例がある。

協調減産により北海ブレント油の価格が過去1年で4割近く高騰したことを受け、トランプ大統領は現在、石油輸出国機構(OPEC)加盟国などに対し増産を求めている。

しかし、制裁を受けた場合、サウジは報復措置として「黒い金」である石油市場の供給を一層逼迫(ひっぱく)させることも可能だ。同国は世界全体の原油生産の12%を占めており、最大の輸出国だ。サウジが1970年代のような減産に踏み切れば、1バレル当たりの原油価格が150ドルに達する可能性もある、と調査会社キャピタル・エコノミクスは指摘する。

その一方で、米国市場の石油生産見通しは暗転しており、自国の自然資源を使って米国政府が反撃する力は限定的だ。

米国は来年にも世界最大の石油輸出国になる可能性がある、と米金融大手シティグループは今年に入り予想していた。だが、鉄鋼関税の影響で必要なインフラ整備が遅れたこともあり、生産地でボトルネックが生じ、その影響が出始めている。米エネルギー情報局(EIA)は最近、米国での生産見通しを引き下げた。

こうした石油市場の課題の一部は、向こう1年半程度で解決されるだろう。だが、議会は数カ月以内に行動に踏み切るとみられるため、サウジは、短期的により大きな力を手にすることになる。

米連邦議会は現在閉会中で、議員が次にワシントンに戻るのは、イラン石油部門に対する制裁が11月4日に再開してから約1週間後となる。この制裁により、石油市場は一層タイトになっている。トランプ大統領は、イラン制裁の影響を緩和するためにサウジを頼みにしていた。

だがそれでも、もしサウジが真正面から対抗して、トランプ大統領が湾岸諸国で別のパートナーを求めるようになれば、サウジの方が失うものは大きい。

さらに、米政府には制裁以外にも圧力をかける手段がある。トランプ大統領は反対しているが、サウジへの1100億ドル(12兆3000億円)の武器売却合意を凍結することもその1つだ。今年6月には、民主党のロバート・メネンデス上院議員が、サウジとアラブ首長国連邦(UAE)対して、イエメンでの戦闘に使われる米軍備品の売却を凍結させている。

10月16日、サウジアラビアに制裁を科す可能性を巡り、米議会がぎりぎりの線を探っている。米テキサス州ミッドランドの油田で2018年8月撮影(2018年 ロイター/Nick Oxford)

カショギ事件により、米議会は一段と攻勢を強めるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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