August 27, 2018 / 9:09 AM / a month ago

焦点:サウジアラムコ上場中止、皇太子の経済改革への影響は

[ドバイ/リヤド 24日 ロイター] - サウジアラビアが国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)の中止を決めたことは、経済改革を掲げるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の信頼性を大きく傷つけたが、改革資金を調達する手段はほかにもある。

 8月24日、サウジアラビアが国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)の中止を決めたことは、経済改革を掲げるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(写真)の信頼性を大きく傷つけたが、改革資金を調達する手段はほかにもある。パリで2018年4月撮影(2018年 ロイター/Charles Platiau)

皇太子が2016年にぶち上げた「2030ビジョン」という画期的な経済改革は、皇太子がサウジで実権を握る原動力ともなった。IPOの中止は、皇太子による改革全体のかじ取りにも疑問を投げかけている。

アラムコ株の5%をIPOで売り出し、石油以外の産業に1000億ドルを投資して経済の多角化を進める計画は、改革の柱とされていた。

皇太子はまた、アラムコ株を国際的な証券市場に上場すれば、秘密に包まれたサウジに開放的な文化を生み出し、海外投資家への魅力を高めることにもつながると約束していた。

シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院のシニアフェロー、ジェームズ・ドーシー氏は「皇太子は期待を生み出すのは非常にうまいが、期待の管理は下手だ」と言う。

関係筋がこのほどロイターに明らかにしたところでは、サウジアラムコのIPOは国内外ともに無期延期された。これに対しファリハ・エネルギー相は、引き続き将来のIPOを目指していると述べた。

<ビジョン2030>

皇太子はビジョン2030で、サウジ経済と国民の閉鎖的なライフスタイルを抜本的に改革すると約束している。これまでにも女性の自動車運転の禁止撤廃や映画館の開設など、目を引く改革を打ち出してきた。

しかし同時に、抵抗派の王子や実業家などを汚職疑惑で粛清したほか、代償の大きいイエメン内戦への介入を主導した。仇敵イランや友好国とされるカナダやドイツに対して攻撃的な姿勢も強めており、同盟国や投資家を警戒させている。

西側の元上席外交官は「アラムコのIPOは国際舞台での透明性向上の実例となるはずだった。しかしあまりにもゴタゴタが多く、説明もほとんどなされていないため、透明性はむしろ低下しているようだ」と語った。

しかし一部のバンカーは、経済改革はアラムコのIPOよりずっと大規模なものだと指摘。政治的な影響は出るにしても多くの改革は続くし、高官らがIPO関連の作業から解放されれば改革が加速する可能性さえあると見ている。

<直接投資を誘致>

IPO計画が発表された2016年当時と比べ、サウジを取り巻く環境はずっと良くなった。当時の原油価格は1バレル=35ドル前後で、サウジは資金確保に躍起だった。しかし現在は2倍以上に上がり、財政赤字は急速に縮小。従って改革資金の調達手段は増えている。

MSCIとFTSEラッセルは今年、サウジを新興国市場株式指数に採用することを決めたため、たとえIPOを中止しても来年には外国から200億ドル以上の資金流入が見込める。

一方、当局は外国直接投資を誘致するための改革をゆっくりと進めている。

7月には国営企業と民間企業の提携によるインフラ構築の規則を公表。水道局はこのほど、複数の国際的企業に対し、配水や水処理事業への参加を呼び掛けて交渉していることを明らかにした。

当局はまた、今後数年間でアラムコ以外に2000億ドル程度の国有資産の売却を狙っていることも明らかにしている。多くのアナリストはこの目算は野心的過ぎると見ているが、アラムコのIPOを中止したことで、より小規模な国有資産の売却に道が開かれるかもしれない。

ロンドン・スクール・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスのステフェン・ヘルトグ准教授は「IPOは重要な象徴的価値を持っていたが、サウジ経済全体への影響はさほど大きくなかっただろう。サウジ経済が長期的な健全性を確保するには、民間の雇用創出や、国内外の投資家に対する法制度や規制環境の整備といった課題の方が重要だ」と述べた。

<SABIC売却>

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、サウジアラムコの株式5%売却により約1000億ドルを調達できるとしていたが、アナリストは500億─750億ドルにとどまると試算している。

IPOによる調達資金は政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」に入り、主に雇用創出プロジェクトに宛てられる見通しだった。サウジの失業率は12.9%に達しており、雇用創出は不可欠だ。

しかしIPOを中止してもこうしたプロジェクトは続行可能だし、アラムコは7月、PIFから石油化学大手サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)2010.SEの株式を取得する可能性を示している。

市場価格で計算すると、PIFが保有するSABIC株70%をすべてアラムコに売却すれば、約700億ドルを調達できる。

実現すれば、IPOを実施した場合と同程度の資金がPIFに入る可能性がある。

多くの国民はアラムコのIPO計画を快く思っていなかったため、中止すれば皇太子にとっては政治的に好材料となるかもしれない。

ライス大学ベーカー研究所のフェロー、ジム・クレーン氏は「平均的な市民は、国家の遺産を売るのは誤りだと考えていた。王族の多くは、自らの富と特権の源泉をさらけ出すことになると心配していた。だから計画の中止にはある程度ほっとしているのではないか」と話した。

(Andrew Torchia記者 Saeed Azhar記者  Stephen Kalin記者)

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