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コラム

コラム:サウジ皇太子の「扱い」に難儀するバイデン氏

[ロンドン 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏が約2年半前、身の毛もよだつような方法で殺害された事件は、今なおサウジと米国の関係を複雑なものにし続けている。ムハンマド皇太子が殺害を承認したとの米情報機関の報告書にもかかわらず、バイデン大統領は皇太子を制裁対象にしなかった。このことでバイデン大統領は批判されている。なぜ制裁の対象にしなかったか。単にムハンマド氏が大物過ぎたからだ。

 3月2日、サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏が約2年半前、身の毛もよだつような方法で殺害された事件は、今なおサウジと米国の関係を複雑なものにし続けている。ホワイトハウスで会見するバイデン米大統領(2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

バイデン氏の姿勢は少なくとも道義的には前任のトランプ氏よりはまさっている。カショギ氏が2018年10月にイスタンブールでサウジ当局者らに殺害された後、トランプ氏はムハンマド氏に責任があるとみる米中央情報局(CIA)の報告に関心を持つそぶりも見せず、カショギ氏殺害は大きな謎であり、命令を受けた任務ではないとの立場をとった。

皮肉にも、この言いぶりのほうが両国の関係を従来通り続けやすかった。バイデン氏はムハンマド氏の罪を分かっていると表明しつつ、制裁は避けた。これは弱腰にも見える対応だ。

バイデン氏がムハンマド氏への直接の制裁をためらったのは理解できる。中東の主要同盟国の2番目の高位者である皇太子ならば、制裁対象にするのは、なんであれ外交的には「悪夢」だろう。35歳のムハンマド氏の場合は、とりわけ特異だ。2016年以来、同氏はサウジの軍部と治安組織を苦労して掌握し、同国経済が化石燃料依存から脱却する戦略を自ら旗振り役となって推し進めている。父のサルマン国王は85歳で、次に即位すればムハンマド氏の治世は長く続く可能性がある。

それどころか、これだけではムハンマド氏との対決がもたらすであろう混乱を言い尽くせていない。同氏の影響力は世界の金融市場のあちこちに見られる。4000億ドル規模の政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」を実質的に支配しているのだ。同ファンドはソフトバンクグループの1000億ドル規模の「ビジョン・ファンド」に40%超を出資し、米投資会社ブラックストーンのインフラファンドにも200億ドルを出している。ウーバー・テクノロジーズをはじめ多数の名高い米企業の株主でもある。

ムハンマド氏が、米国による18年のロシア制裁の一環で対象にされた同国大富豪オレグ・デリパスカ氏のごとく制裁を科されていたら、当時のように、ムハンマド氏の個人資産分を囲い込むのにも苦労したかもしれない。

つまり、ムハンマド氏に対しては、何もしないほうが断然、物事が容易になるのだ。

問題は、そうした判断は西側諸国の道徳心に欠ける企業幹部にサウジ投資での「棚ぼた」を与えてしまうことだ。トランプ政権時代は、環境や社会、企業統治の問題を懸念した投資家は、大統領が替われば人権問題について姿勢が厳しくなり得ると示唆することで、対サウジ投資を少なくともけん制することができた。

今や、ホワイトハウスは対サウジ投資に暗黙のゴーサインを出したと受け止められる可能性がある。このため米国からの対サウジ投資はたぶん増えていくだろう。皮肉なことかもしれないが、とどのつまり、バイデン氏はサウジに向かう海外資金を減少させるのでなく、拡大させる引き金になりかねないのだ。

●背景となるニュース

*米、サウジの「今後の行動」重視 人権問題改善に期待=報道官

*サウジ皇太子、カショギ記者殺害を承認 米が報告書

*サウジの事実上の最高権力者、ムハンマド氏は殺害への関与を一切否定。ただ、最終的な監督責任はあると表明した。

*国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は1日、ドイツ・カールスルーエの検察当局に500ページの告発書を提出。ムハンマド氏や幾人かのサウジ高官がカショギ氏殺害を含む、人道に対する罪を犯したとした。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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