May 21, 2016 / 1:00 AM / 4 years ago

コラム:怒りのポピュリズム、トランプ流が本選で勝てない訳

[5月17日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏は「人々から使命を委ねられた」と主張する。そう言い張るのは、波風を立てる流儀を和らげ、より「大統領らしく」なるように求める共和党内からのプレッシャーに抵抗するためだ。

 5月17日、ドナルド・トランプ氏は「人々から使命を委ねられた」と主張する。そう言い張るのは、波風を立てる流儀を和らげ、より「大統領らしく」なるように求める共和党内からのプレッシャーに抵抗するためだ。写真は4月17日、ニューヨーク州で演説するトランプ氏(2016年 ロイター/Eduardo Munoz)

米大統領選の共和党指名争いで首位に立つ不動産王のトランプ氏には、もちろん、党を率いる使命を多少なりとも主張する権利がある。彼は党内ライバル候補16人を破った。15日までに党予備選で投じられた2700万票のうち、トランプ氏は約1100万票を獲得している。過半数には達しないが、それでも41%だ。

だが、トランプ氏が11月に相手にする有権者はこれまでとはまったく異なる。前回2012年の大統領選挙では、1億2900万人の米国民が投票した。共和党が指名したミット・ロムニー候補は6100万票近くを獲得したが、それでも敗れた。ホワイトハウスにたどり着くには、少なくとも支持者をあと5400万人増やさなければならないだろう。

トランプ氏は、自分が党指名レースに勝利したのは、辛辣で挑発的な言動によるものだと理解している。ありきたりの政治家ではない。なぜ自分が変わらなければならないのか。「ペナントレースでは勝った。これからワールドシリーズだ」とトランプ氏はニューヨーク・タイムズ紙に語っている。「人々は、私のやり方を好んでいる」

まるで「ニクソンの法則」を否定しようとしているかのようだ。ニクソン元大統領は、かつて共和党の大統領候補たちに次のようにアドバイスした。「予備選の段階では保守的であれ。そして本選になったら中道をめざすのだ」。この法則は時代遅れなのだろうか。

実際のところ、トランプ氏の事実上の指名獲得は、イデオロギーとは何の関係もない。彼は何のイデオロギーも持っていない。「勝つこと」、それがすべてだ。彼が信じているのは自分だけである。

だからこそ、保守派はトランプ氏を信用しないのだ。ポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州選出)などの保守派の重鎮は、トランプ氏を保守寄りに傾けようと試みている。これに対してトランプ氏は「党名は共和党であって、保守党ではない」と応じている。

米国社会のイデオロギー的な両極化がさんざん指摘されている割りには、2016年の大統領選挙はそのトレンドに当てはまらない。トランプ氏は保守にとってのファーストチョイスではないし、ヒラリー・クリントン前国務長官もリベラルにとってのファーストチョイスではない。

本当にイデオロギー的な両極化というのであれば、共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)対民主党のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)という構図になるはずだ。

ニクソン元大統領が「中道をめざす」という表現で言おうとしたのは、有権者の過半数が同意できるようなテーマを見つけるということだ。トランプ氏は「怒れる有権者」運動を構築することでそれが可能と信じている。確かに、今年は両党とも多くの「怒れる有権者」を抱えている。民主党の予備選では、ウォール街と民主党主流派への怒りを募らせる有権者を糾合したサンダース氏が950万票近くを獲得した。

サンダース氏は経済的ポピュリズムに訴える。いわゆる「1%」に対する反感だ。トランプ氏は文化的ポピュリズムに訴える。移民、外国人、ムスリム、ヒスパニック、黒人、女性に対する反感だ。トランプ氏は自由貿易協定を攻撃し、最低賃金の引き上げ、富裕層への課税強化を公然と検討することで経済的ポピュリズムにも訴えようと試みているが、それによって保守派のあいだでは同氏への疑念が生まれている。

怒りは、米国民を団結よりも分裂へと向かわせる。サンダース氏の支持者の一部は、同氏が引き起こした運動を「レボリューション2016」と称する全国規模の進歩的な組織へと転換させる考えを口にしている。

それは「クリントン陣営からは完全に独立して、右翼(ファシストと呼ぶ人もいる)による国家乗っ取りの脅威について米国民を啓蒙することに専念する」組織だという。要するに「打倒トランプ」だ。サンダース氏の支持者は、「切実に必要とされている、明確で活気に溢れる、経済的ポピュリストの声」を作り出すことを目指している。

トランプ氏を右寄りに誘導しようという共和党主流派の試みは、いくぶんか進展を見せている。トランプ氏は税制に関する意見を翻し、富裕層に対する最高税率を現状よりも下げることを支持すると発言するようになっている。他方、進歩主義者はクリントン氏を左寄りに誘導しつつある。クリントン氏は、より多くの米国民が「メディケア」に加入できるよう、同制度の大幅な拡大を支持している。

クリントン氏とトランプ氏ほど対照的な人物の組み合わせは珍しい。両者は、「新しい米国」と「昔ながらの米国」のあいだで続く争いを象徴している。「新しい米国」には、移民、マイノリティ、女性、同性愛者、高学歴のプロフェッショナル、無宗派層が含まれており、これまで長年にわたって米国政界では傍流扱いに甘んじていたが、オバマ大統領とともに権力を握った。

他方、「昔ながらの米国」には、高齢の白人男性、南部の白人保守派のあいだで活性化している反動が含まれており、彼らは戦わずして諦めるつもりはない。彼らにとって、トランプ氏は挑戦の象徴である。

単純に数だけ比較すれば、「新しい米国」が有利だ。だが、11月の本選における中心的なテーマは、これまでの大統領選と同じ、お馴染みのものになる可能性が高い。「継続か、変化か」という選択だ。

保守派の大口献金者であるシェルドン・アデルソン氏は、トランプ氏支持を表明した後、次のように書いた。「共和党員がトランプ支持でまとまらないのであれば、オバマ大統領は実質的に憲法が認めていないものを与えられることになる。ヒラリー・クリントン名義での3期目だ」

トランプ氏のテーマは「変化」、つまり第3期オバマ政権の阻止、ということになろう。うまく行くだろうか。その可能性は低い。理由は2つある。まず、景気回復への信頼感が国内で強まりつつあるなかで、オバマ大統領に対する職務能力面での支持率が上昇している。さらに、トランプ氏では「変化」が大きくなりすぎる可能性があるからだ。トランプ氏のような常軌を逸した、下品で、適性に欠けた候補が選ばれるには、現状よりももっと有権者が怒る必要があろう。

怒れるポピュリズムの台頭があるとはいえ、現実には政治の法則はニクソン時代から変わっていない。今日でもやはり、勝利のためには幅広い連帯が必要なのだ。

*筆者は米カリフォルニア大学ロサンゼルス校でコミュニケーション研究分野の客員教授を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below