July 16, 2014 / 1:12 AM / 5 years ago

川内原発は「基準に適合」と規制委、審査最終合格に前進

[東京 16日 ロイター] - 原子力規制委員会は16日の定例会合で、九州電力(9508.T)川内原発1、2号機の審査で、地震・津波などの自然災害や重大事故に対応できる安全性を要求する新規制基準に「適合していると認められる」とする審査書案を提示し、了承した。

7月16日、原子力規制委員会は九州電力川内原発1、2号機の審査で、地震・津波などの自然災害や重大事故に対応できる安全性を要求する新規制基準に「適合していると認められる」とする審査書案を提示し、了承した。4月撮影(2014年 ロイター)

昨年7月に始まった新規制基準適合性審査で、川内原発が初となる最終合格へ大きく前進した。

<政府と県は再稼動に前向き、周辺自治体からは反対も>

安倍晋三政権は、原子力規制委が規制基準への適合性が確認され、地元の合意が得られた原発は再稼動させる方針。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は地元の範囲について「県と薩摩川内市、首長と議会」との見解を示しており、4者はいずれも賛成する見通しだ。

ただ、川内原発の再稼動をにらみ、鹿児島県や立地周辺自治体が策定した防災・避難計画の内容は「実際に事故が起きても役に立たない」との批判が噴出している。

薩摩川内市に隣接するいちき串木野市では「市民の生命を守る再稼動に反対する」との署名活動が5月から始まり、約3万人の市人口の半分を超える1万5464人の署名が集まった。

また、市内の一部が30キロ圏に入る姶良(あいら)市議会も再稼動に反対する姿勢を鮮明にしている。

13日投開票の滋賀県知事選では、自民・公明の与党推薦候補が敗れ、「卒原発」を掲げた嘉田由紀子前知事の後継指名を受けた前民主党衆院議員の三日月大造氏が勝利するなど、原発に対する国民の批判は根強い。安倍政権は再稼動に前向きだが、強引な手法で再稼動を進めれば、国民の反発を招くおそれも否定できず、周辺自治体や住民の反応次第では、再稼動の時期が流動的になる可能性も残る。

<最終合格は秋以降の公算>

川内原発で、新規制基準への適合性が認められたのは、安全性に関する基本設計・方針に関する項目が対象だ。規制委は審査書案に対して今後、1カ月間にわたり意見を公募。その内容を踏まえて修正する期間を考慮すると、審査書案が正式決定するのは、9月以降となる。

また、川内原発が最終的に審査に合格するまでには、機器類の詳細確認や運転管理体制に関する審査が残っており、この部分の審査も2カ月程度の期間を要するとみられる。

九電は、機器類などの審査に必要な書類の提出は8月以降になると示唆しており、最終的な審査合格は、秋以降にずれ込むのが確実だ。

<規制基準、世界最高レベルには疑問の声>

東京電力(9501.T)福島第1原発事故(2011年3月発生)の反省に基づき、昨年7月に原子力規制委が策定した新規制基準では、地震や津波対策の強化を求めたほか、原子炉格納容器の破損防止など重大事故対策の要求などを盛り込んだ。規制委の田中俊一委員長は、規制基準の厳しさについて「世界最高レベル」と公言している。

田中委員長は16日の定例会合後に記者会見し、「シビアアクシデント(過酷事故)のハード・ソフト面の強化をきちんとやり、自然災害についても十分に検討した。これで十分と言うつもりはないが、相当慎重に評価をしてきた」と述べた。

昨年7月に始まった審査会合では、地震・津波対策に関する審査を担当した規制委の島崎邦彦委員長代理が、関西電力(9503.T)など九電と同時期に審査を申請した事業者に対して、地震想定について厳しい姿勢で臨んだことも影響し、審査開始当初では半年程度見られていた審査期間は、1年を超えることになった。

川内原発の審査でも規制委の指摘を反映して、九電は想定する最大の地震の揺れ(基準地震動)を申請時点の540ガルから620ガルに引き上げた。

一方で、田中委員長が主張する「世界最高レベル」という規制基準の厳格さについては、異論も聞かれる。

原子力に批判的な有識者が参加する「原子力市民委員会」(座長:船橋晴俊・法政大教授)が今年4月に発表した「原発ゼロ社会への道─市民がつくる脱原子力政策大綱」は、新規制基準について「世界最高水準にはほど遠い」と批判した。

具体的には、欧州で採用され、建設が進む欧州加圧水型原子炉(EPR)と比較し、1)EPRは、圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留する「コアキャッチャー」を設置しているが、新基準は要求なし、2)EPRは、大型商用航空機衝突に耐え、設計圧力を高めた二重構造の格納容器の設置を求めているが、新基準は要求なし──など、日本基準が見劣りする点を挙げている。

内閣府原子力委員会の委員長代理を今年3月末まで務めた鈴木達治郎・長崎大学核兵器廃絶研究センター教授は、ロイターの取材に対し、規制基準への適合について「再稼動のための最低限の要求を満たしたことにすぎない。2つの重要な点が残されている」と指摘した。同教授は「住民に安全を保証するには避難計画の整備をしないといけない。また鹿児島県知事と薩摩川内市長は、再稼動に同意するためにも、規制当局と中央政府とも議論しないといけない」と述べた。

規制委の田中委員長は、立地周辺自治体が作る防災・避難計画に規制委が積極的に関与することを拒み続けている。16日の会見でも、避難計画への関与について、「規制委の(所管の)範囲外で、(適合性)審査の中では評価していない」と述べるなど、従来の消極姿勢を変えなかった。

<進むか後続審査>

川内原発のほか、規制委にはこれまでに12原発19基の審査申請があった。川内原発を含む、昨年7月に審査を申請した6原発12基はいずれも加圧水型原子炉(PWR)で、プラント自体の審査は共通点が多い。

規制委は3月、川内原発を他の原発に優先して審査を進めることを決めた。審査合格第1号を出すことで、後続審査を早める狙いもある。

田中委員長は16日の会見で後続審査が進展する可能性に言及。関電高浜原発3・4号機については「ほぼ論点が整理された」とし、九電玄海3・4号機についても「相当煮詰まった」と述べた。

高浜については審査のヤマ場である基準地震動が固まり、玄海も固まりつつあることで、川内原発に次いで審査合格が視野に入る可能性が出ている。

(浜田健太郎 取材協力:アーロン・シェルドリック)

*情報をさらに追加して再送します。

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