for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:中国AI開発企業への制裁に見る「米中デカップリング」

[香港 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 企業の上場は、地政学的問題がなかったとしても十分に神経をすり減らす。ところが、香港上場で最大約8億ドルの資金調達を目指していた中国の人工知能(AI)開発企業、商湯集団(センスタイム)の場合、米政府が米国民による投資を禁止する制裁リストに同社を加えたことで、たまらず計画の延期を迫られた。

 12月14日、企業の上場は、地政学的問題がなかったとしても十分に神経をすり減らす。写真は2018年10月、北京で開かれた見本市の商湯集団(センスタイム)のブースに展示された顔認証カメラ(2021年 ロイター/Thomas Peter)

顔認証技術を手掛ける商湯集団は恐らく、目論見書を修正してより小規模な新規株式公開(IPO)を実施するだろうが、当初、模索していた国際的な支援は受けられそうにない。これは米国と中国の経済がデカップリング(分離)の様相を呈している小さな事例の1つと考えるべきだ。

米財務省は10日、商湯集団を「中国軍産複合企業」のリストに追加。同社の顔認証技術が民族性を特定し、ウイグル族などの人権弾圧につながる点を理由に挙げた。

まさにこの日にIPOを予定していた商湯集団は11日、米国の決定には同社事業に対する根本的な誤解が反映されていると反論した上で、13日になって目論見書に制裁リスト入りの問題を詳しく盛り込むため、IPO手続きを中断した。

このニュースは青天のへきれきだったが、方向性自体は既に明らかだった。2019年10月以降、商湯集団は米政府からいわゆる「エンティティーリスト(輸出管理リスト)」に掲載され、米企業からの部品調達を禁じられている。

これは商湯集団が新疆ウイグル自治区で操業する合弁企業を持っていたため。同社はこの合弁企業を売却していた。同業の曠視科技(メグビー)もエンティティーリストに登録されており、昨年に香港上場計画が立ち消えとなって、現在は上海での上場を目指しているところだ。

商湯集団にとって、新たな制裁リスト対象となったのは痛手だが、資金面で破滅的な事態とまでは言えない。IPO前の出資者には米シルバーレイク、ソフトバンクグループ傘下でサウジアラビア政府が出資するビジョン・ファンドなどが名を連ね、商湯集団を国際的に認知させる役割を果たした。

西側の銀行の中では、HSBCがIPOの筆頭アドバイザーを務めており、商湯集団が国際金融資本市場にもっと受け入れてほしかった様子がうかがえる。

それでも同社の手元には6月末時点で13億ドルの現金があり、少なくともあと2年の運転資金はカバーできるだろう。

地政学的緊張の高まりに起因する米中金融システムのデカップリングは、なお論争の的であり、あまり明確な定義付けはなされていない。ただ、中国のAI部門は、真っ先にリアルタイムの実験場と化している。

●背景となるニュース

*中国の人工知能(AI)開発企業、商湯集団(センスタイム)は13日、香港市場への株式上場を延期した。バイデン米政権が10日、同社を制裁リストに追加した。

*最大で7億6700万ドルの調達を計画していた商湯集団は、上場方針は堅持し、今後、補完的な目論見書と最新の日程を公表すると説明した。

*バイデン政権は10日、商湯集団を「中国軍産複合企業」のリストに加え、同社が民族性を特定できる顔認証技術開発を進めていると非難した。米企業は、このリストに掲載された企業との取引を禁止されている。

*商湯集団は、事業内容の受け止められ方には根本的な誤解が反映されていると反論。

*商湯集団は2019年、米企業に部品の供給先とすることを禁じる別の制裁リストにも加えられた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up