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コラム

コラム:セブン&アイに挑む米投資家、日本の企業統治問う「大一番」に

[香港 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本で新たな重量級の闘いが幕を開けた。土俵の片方に立つのは、これまでの成功で勢いづく静かな「物言う投資家」の米投資会社バリューアクト・キャピタル。もう一方にはセブン&アイ・ホールディングスが不屈の構えで立ちはだかる。両者の闘いはその規模と影響ゆえに、日本の企業統治への挑戦という意味で大相撲並みのインパクトをもたらしそうだ。

 2月22日、日本で新たな重量級の闘いが幕を開けた。写真はセブン&アイ・ホールディングスのロゴ。都内で2017年12月撮影(2022年 ロイター/Toru Hanai)

サンフランシスコを拠点とするバリューアクトは、1年にわたって非公開の形でセブンに要望を出した末、先月になって公開状で経営に苦情を訴えるという異例の措置に出た。押しの強い物言う投資家(アクティビスト)の多くにとって、こうした声高な主張は常套手段だが、バリューアクトがこうした手法を使うのはまだ6回目。同社は約20年にわたり、世界中で米マイクロソフトや米アドビ・システムズを含む数十社に対し、より外交的な運動を展開してきた。

バリューアクトは最近、日本で頭角を現している。日本では一般に、同社の看板である控えめな交渉姿勢の方が、大声で怒鳴るようなアプローチよりも経営陣の砦を揺さぶるのに適している。同社はこうした交渉戦術によってオリンパスやJSRに取締役を派遣したり、戦略的改革を迫ることに成功してきた。バリューアクトが関わるようになって以来、両社の株価は平均株価を大幅にアウトパフォームしている。

しかし、さしもの説得力もセブン&アイには効力を発揮していない。同社の井阪隆一社長は今月、バリューアクトの声に耳を傾けたが評価できる提案はほとんどなかったと表明。事業見直しの方針を盛り込んだ昨年7月の中期経営計画にも言及した。

礼儀正しい反応ではあるが、強情な姿勢は正当化できない。セブン&アイ自体、海外店舗への投資リターンが、極めて低い資本コスト(推計約4%)を辛うじて上回る程度にとどまると予想している。

セブン&アイの総株主リターンが同業他社に比べてかなり低いことを考えれば、バリューアクトの言い分には説得力がある。同社は百貨店やイトーヨーカ堂など比較的小さな事業が資本を食うばかりでシナジー効果を生み出さず、株価を押し下げていると主張。これらを切り離し、国外におけるセブン-イレブン事業の稼ぎを増やすことに集中すべきだとしている。

とはいえ日本では、セブン&アイが利益率向上に野心を見せなくても眉をひそめられることはほとんどない。なにしろ日本は、金融機関を除くTOPIX構成企業の5社に1社が、株式時価総額の3分の1以上に相当する純現金同等物を抱える市場(Breakingviews調べ)だ。

セブン&アイは売上高の約半分を国外事業が占めているため、取締役会に海外から小売り専門家の意見をもっと取り入れるべきだという提案にも説得力がある。社外取締役を増やせば、社内勢がリターン向上を犠牲にして牙城を守るリスクも減らせるだろう。

さらに同社は、米国のガソリンスタンド併設型コンビニ「スピードウェイ」を買収したことで、純債務が利払い・税・償却前利益(EBITDA)の4倍に増えた。この比率を下げるのに苦心するような様子が見えれば、株主の間に不満が広がりかねない。

日本におけるアクティビスト運動は活発化している。調査会社インサイティアによると、昨年は60件と、2016年の2倍以上に増えた。この年、攻撃的なアクティビストのダニエル・ローブ氏の運動もあって井阪氏がセブン&アイのトップに就いたが、その結果としての戦略改革の成果は乏しい。

その後もソフトバンク・グループ(SBG)や東芝など、日本の大企業がアクティビストの要求に応えてきた。東芝は株主登録者の3分の1以上を外国人投資家が占め、企業統治への苦情が受け入れられやすい株主構成となっている。SBGも数多くの外国企業に投資しているため、日本企業としては特異だ。これに対してセブン&アイの株主は多くが日本の主要企業で構成されている。

創業家の伊藤一族関連が10%を占めているほか、野村ホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループの資産運用部門、日本生命などが大株主に名を連ねる。こうした株主を説得するのは、東芝やSBGの場合より難しいだろう。

バリューアクトは日本と世界における自らの名声を賭けて声を上げた。しかし、セブン&アイに改革を迫っているのは同社だけではない。アーティザン・パートナーズ・アセット・マネジメントも同様の点についてセブン&アイに未公開の書簡を送った。他にも少なくともアクティビストが1社絡んでいる。セブン&アイがこの「反乱」に一歩も引かないとすれば、日本の株主がいかに無気力なままでいるかを強く印象付けることになるだろう。反対に、バリューアクトがこの壁を克服するなら、日本に激震が走りそうだ。

●背景となるニュース

*バリューアクトは1月25日、セブン&アイに公開状を送り、早急に組織改革を行うよう求めた。バリューアクトはセブン&アイの株式を4.4%保有している。

*バリューアクトは公開状と2月8日公表の説明資料で、セブン&アイの経営姿勢に不満を示し、特に国外を中心にコンビニ事業に集中するよう求めた。

*同じくセブン&アイの株主であるアーティザン・パートナーズ・アセット・マネジメントも1月、これとは別に取締役会に書簡を送った。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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