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焦点:シャープ、動き出す鴻海戦略 外資傘下の電機再生へ試金石
2016年2月25日 / 08:53 / 2年後

焦点:シャープ、動き出す鴻海戦略 外資傘下の電機再生へ試金石

[東京 25日 ロイター] - シャープ(6753.T)は25日開いた臨時取締役会で、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業(2317.TW)による経営支援を受け入れるとともに、2018年初頭にも亀山工場(三重県)で有機EL量産の量を始めると発表した。有機ELはスマートフォン(スマホ)の主要部品になるとみられ、鴻海の世界展開に不可欠の戦略商品。日本の大手電機メーカーとして初めて外資の傘下で再生を期すシャープにとって、自社の技術力が問われる大きな課題が早くも浮上している。

 2月25日、シャープは臨時取締役会で、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業による経営支援を受け入れるとともに、2018年初頭にも亀山工場(三重県)で有機EL量産の量を始めると発表した。写真は都内で昨年7月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

会社再建をめぐる議論がもつれる中、高橋興三社長がこだわったのが「シャープのDNA」だった。「シャープって変わったことやるよね」という同社長の言葉通り、シャープからはエレクトロニクス産業の発展に貢献した独創性に満ちた製品や商品が数多く出ている。

例えば、世界最大の技術者団体IEEE(米電気電子学会)が産業発展に貢献した技術を称える「マイルストーン」に、シャープからは「テレビ用14型TFT液晶ディスプレー」など日本で最多となる3件が選ばれている。インターネットが本格普及する前の1990年代にシャープが商品化した携帯情報端末「ザウルス」は、もし通話機能がついていれば世界初のスマホだったとすらいわれる。

シャープの問題は、ユニークな商品開発力には定評がありながら、それを持続できず、失速するパターンを繰り返してきたことにある。「ザウルス」について言えば、投入時期が早過ぎて米アップル(AAPL.O)の「iPhone(アイフォーン)」にその名誉を譲るという皮肉な結末となった。

<ブランドなき鴻海、将来への危機意識>

そうしたシャープに時価総額の2倍を超える約6500億円の巨費を投じる鴻海は、買収のメリットをどこに感じているのか。

創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は「フォックスコン(鴻海の英語での呼称)にはブランドがないが、シャープにはブランドがある」(今月5日の記者団との質疑応答)と述べている。

「ゴウ氏には、ある程度ブランドがあり、自社開発能力があるシャープのような会社を手に入れないと、10年後は厳しいという危機意識があるのだろう」とベテランの電機アナリスト、若林秀樹氏は話す。

若林氏は、鴻海傘下入りで、シャープは資材調達費の低減効果やサプライチェーンの効率化などが期待できると指摘。「本当に頑張らないといけないが、鴻海なら(シャープ再建の)可能性は高い」との見方を示した。

<ディスプレーは韓国、中国勢と競争続く>

鴻海は、大型液晶で世界3位の群創光電(イノラックス)を傘下に抱えるが、シャープの大型液晶パネルの出荷金額シェアを合わせると27%(2014年、IHSテクノロジー調べ)になり、首位LGディスプレイ(034220.KS)、2位サムスン電子(005930.KS)の韓国勢2社を超える。同様に中小型液晶ディスプレーは19.7%(15年、IHSテクノロジー)で、首位のジャパンディスプレイ(6740.T)(JDI、21.4%、同)に迫る。

ただ、アップルが2年後にも投入するとみられている「次の次の」iPhoneに有機ELが採用されるとの観測が多く、中小型液晶の将来性はここにきて疑問視されている。加えて、中国の京東方科技集団(BOE)200725.SZが大型から中小型まで液晶の大規模投資を計画中で、ただでさえだぶついている液晶パネルの市況は一段と悪化するとみられている。

シャープが有機ELに本格投資しても、「有機ELはサムスンに、液晶は中国勢にかなわないだろう」(業界関係者)との見方が根強い。

鴻海案に対抗してシャープ支援策を出した政府系ファンドの産業革新機構の関係者は、「(シャープのような)ブランド会社がなくなると、材料や装置、デバイスもみな弱くなる」と語り、電機産業の大手の一角が外資の手に渡ることに、強い危機意識をあらわにした。

一方、「シャープの幹部クラスは鴻海の傘下入りに危機感が強かったが、若手社員は鴻海のほうがいという受け止めだった」(別の業界関係者)との見方もある。

シャープで液晶や太陽電池の技術者だった中田行彦・立命館アジア太平洋大学大学院経営管理研究科教授は、「シャープと鴻海は補完関係にある。JDIとは似たもの同士。シャープの多様な商品開発と、鴻海の最適生産と販売ルートを通じてグローバル競争に適合しやすいと思う」と話している。

ハイテク産業での「黒子役」に徹してきた鴻海が、倒産寸前にまで弱体化したシャープに巨費投資でどう変容するか。外国資本による基幹産業の買収がいまだ議論を呼ぶ日本の産業界にとっても、シャープの行く末は業界の将来を占うモデルケースになる。

浜田健太郎  取材協力 志田義寧

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