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焦点:シャープ再建策、革新機構とホンハイ拮抗 問われる説明責任

[東京 27日 ロイター] - シャープ6753.Tの再建をめぐり、スポンサーに名乗りを上げている政府系ファンドの産業革新機構が有利とみられてきたが、ここにきて台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業2317.TWの案も無視できないとの見方が浮上してきた。ホンハイもシャープの資産査定を進めながら、急ピッチで再建策の取りまとめに入っているためだ。

 1月27日、シャープの再建をめぐり、スポンサーに名乗りを上げている政府系ファンドの産業革新機構が有利とみられてきたが、ここにきて台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の案も無視できないとの見方が浮上してきた。写真は都内で昨年11月撮影(2016年 ロイター/Reiji Murai)

革新機構は、水面下で主力取引銀行と最終調整を進め、経済産業省の強い後押しを受けて有力とされてきた。しかし、銀行団の中には「ホンハイ案も検討に値する」という見解も出てきており、事態は流動的な色彩も帯びてきた。シャープや銀行は、株主と債権者に説明責任を果たしながら、どちらが再建に有効な案かを決める重い責任を負うことになる。

<経産省の説得に入ったテリー・ゴウ会長>

今月26日に経済産業省に姿を現したのは、ホンハイの郭台銘(テリー・ゴウ)会長だった。ホンハイがまとめたシャープ再建策を同省高官に説明するためだったと複数の関係者は明かす。

経産省に対してテリー・ゴウ会長は、シャープに対する6000億円超の出資や、従業員の雇用確保などを盛り込んだ再建案を提示し、理解を求めたとみられる。

関係者によると、ホンハイはすでにシャープと秘密保持契約を結び、資産査定を行っている。そのうえで6000億円超の出資が可能と判断しているという。

再建策は、水面下でシャープや主力取引行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に対して提示されているが「実効性は相当に高く、検討に値する」(銀行関係者)との指摘も関係者の中から出ている。出資により、金融機関の負担がない点も示しているもようだ。

両行の中には、ホンハイに対する警戒心もあり「かなり意地の悪い質問を投げ掛けているが、誠実な回答が返ってきている」ともいう。

電機業界に詳しい関係筋によると、ホンハイはシャープへの投資に対して強い意欲を持っており、今後、交渉を加速させる意向だという。さらに、ホンハイの提案をシャープが退けた場合には、同社はその理由を公式に表明する必要があるとの見解を持っているという。

<革新機構は週内にも支援策を正式決定>

一方の革新機構は、29日に意思決定機関の産業革新委員会を開き、支援策の最終案を決める見通しだ。機構がシャープに3000億円を出資し、主力2行が最大3500億円の金融支援を実施することを柱としたい考えだ。

出資と金融支援を合わせて支援総額を最大6500億円規模にすることで、ホンハイの6000億円超に対抗する腹積もりだ。

ただ、機構案は、普通株の減資や株式併合などの株主責任が盛り込まれておらず、損失負担の順位が後回しになるはずの銀行保有の優先株や貸出金が先にき損される内容となっている。

このため銀行団の中には「優先劣後関係がないがしろにされ、銀行の株主や社外取締役に対して説明が付かない」(幹部)との不満が存在している。「29日の革新委員会で、銀行の同意を取り付けるのは難しいのではないか」(別の幹部)との見方も出てきた。

<求められる透明性と説明責任の確保>

革新機構は29日に再建案を決定した上で、シャープに対する支援を正式に申し出る。ホンハイも近く正式な提案を出すとみられる。

「シャープのケースは、日本の市場や日本政府が、内外無差別であるのかどうか問われる試金石になる」――。ある外資系証券の幹部は、こう話す。

環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意で市場を大きく開くことを決めた日本政府。外資による日本への投資を増やす政策も打ち出した。

「経産省が後ろについてる機構案の優位は揺るがない」(銀行幹部)との声は強い。しかし、「どちらになるにせよ、説得力のある説明によって、決定が下されなければ今後の外資による日本への投資や買収には、ネガティブな影響をもたらすのではないか」(先の外資系証券幹部)との懸念が残りそうだ。

布施太郎 編集:田巻一彦

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