February 10, 2015 / 2:43 AM / 6 years ago

焦点:シャープ液晶失速、JDIとの消耗戦にも抜本策見えず

[東京 10日 ロイター] - シャープ(6753.T) の経営立て直しのカギとなる液晶事業の先行きに一段と不透明感が強まっている。成長市場の中国スマートフォン(スマホ)向け液晶では、同じ日本勢であるジャパンディスプレイ(JDI)(6740.T)と顧客を取り合う消耗戦が激化している。

 2月10日、シャープの経営立て直しのカギとなる液晶事業の先行きに一段と不透明感が強まっている。都内で2014年2月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

同社は5月にも新たな中期経営計画を打ち出す予定だが、液晶事業の抜本策まで踏み込む気配はない。経営再建をどう進めるのか、なお見通し難が続いている。

<短かった小米との「蜜月」>

同社は今月3日、2015年3月期に2期ぶりの最終赤字に転落する見通しを発表した。それまで予想していた300億円の黒字から一転した理由は、液晶テレビの赤字転落とともに、中国スマホ向けの中小型液晶が想定外に失速したことにある。

シャープは、中国のベンチャーだった小米科技(シャオミ)との取り引きを2013年から本格化させ、以来、小米のスマホ躍進とともに順調に出荷を拡大。2014年4―9月期は、中国スマホ向けの液晶売上高が前年比5倍の規模に急伸した。    

小米との取引拡大は、懸案だった米アップル(AAPL.O)に依存した液晶事業の体質改善にもつながる。シャープ幹部には「勝ち馬を見つけた」と威勢のいい声が広がった。しかし、潮目が変化したのは昨年秋以降だった。小米の液晶サプライヤーにジャパンディスプレイが食い込み始め、シャープの出荷に急ブレーキがかかった。

「一緒に伸びてきた」(シャープ幹部)はずの小米だったが、スマホメーカーにとって液晶メーカーを競わせて有利な条件を引き出すのは自然な動き。「シャープだけとの取引が続くと思うのは幻想」(業界関係者)だった。

<JDIが「大塚価格」武器に切り崩し>

実は、当初のジャパンディスプレイは小米躍進の波を見逃していた。もともとアップルへの出荷比率が高く、中国市場は華為技術(ファーウェイ)(002502.SZ)との関係が強かったジャパンディスプレイは「2013年のときは価格が折り合わず、小米との取引を見送った」(幹部)ことで出遅れた。

この結果、2014年4―9月期決算では、今期の最終損益が赤字に転落すると発表。小米の背中に乗ったシャープの上期の液晶が好調だったのに対し、当時の決算会見で大塚周一社長は「中国市場は下期に挽回する」と強調。10―12月にかけて、同社の独自製品であるタッチパネル機能を埋め込んだ「インセル型」液晶で、中国スマホメーカーに猛烈な営業をかけ始めた。

ジャパンディスプレイの巻き返しの要因は価格競争力だ。これまで業界内の理解としては、同社の液晶材料に使われているLTPS(低温ポリシリコン)は高精細化に強いとされる一方、シャープが量産している独自のディスプレイであるIGZOはコスト面で有利といわれてきた。

しかし、ある業界関係者によると、中国スマホメーカーが昨年行った実験で、シャープの「IGZO液晶」よりジャパンディスプレイの「インセル型LTPS液晶」の価格競争力が勝ったという。インセル型にすれば、タッチパネルを貼り付ける工程が省けるため、トータルコストが下がるというのがその理由。人件費高騰に悩む中国メーカーにとって労務管理費用の削減は魅力的で、ジャパンディスプレイのインセル技術が一挙に注目を集めたという。

これに加え、業界関係者によると、大塚社長自らが営業現場に乗り込んで大胆に価格を引き下げたという。同社長の名前から「大塚価格」と呼ばれる積極的な料金設定が功を奏し、インセル型液晶の低コストのイメージが顧客の中国メーカーに醸成された。インセル型の液晶は、ひとたび納入して量産ラインに組み込むと、元の工程に戻すのは容易でないため、顧客は他の液晶を採用しにくくなるという。

「ピクセルアイズ(同社インセル技術の商品名)を業界標準にする」と意気込む大塚社長のシナリオに沿って、ジャパンディプレイの中国スマホ向けのインセル比率は40%に近づいた模様だ。実際、小米が2月から発売する5.7インチの最新機種はインセルが条件として提示されたため、シャープは手が出せず、ジャパンディスプレイが取引を獲得したという。

<シャープは「営業力強化」で乗り切る構え>

シャープは、新しい中期経営計画を5月までに策定する方針。液晶テレビについては、赤字の米国事業の採算改善を図る計画で、関係者によると、メキシコ工場売却を通じた米国事業の撤退も視野に入れている。

だが、肝心の液晶事業についてシャープは、あくまで「営業力の強化」で乗り切る構えを示している。下期以降のジャパンディスプレイの反転攻勢に対して、シャープの高橋興三社長は「うちも夏ごろにインセル化した液晶の量産を始める」と述べ、巻き返しを急ぐ構えを示す。

さらにシャープは、中国市場で広州・深センなど華南地区の営業を強化し、北京の小米以外の顧客へのアプローチを強める考えだ。ジャパンディスプレイが、台湾子会社を通じて、華南地区に攻勢をかけているのに対抗する構えで、両社の争奪戦は一段と熾烈を極めそうだ。

<供給過剰の構造問題が再び>

そもそもシャープの液晶事業は過剰能力が構造問題として指摘されてきた。「戦艦用の巨大ドックで釣り船を作っている」と例えられる亀山第2工場(三重県亀山市)は、もともとテレビ用の大型液晶を作る目的で建設された巨大工場。第8世代(G8)と呼ばれる2160×2460ミリメートルのガラス基板は、テレビ用の50インチパネルで6枚、5インチのスマホ用パネルなら600枚も生産できる。現行のガラス基板の生産量は月7万2000枚で、スマホ用液晶なら年間5億台分もとれてしまう計算になる。

日本国内では、ジャパンディスプレイの主力拠点の茂原工場(千葉県茂原市)も能力増強を急いでいる。第6世代(G6=1500×1850ミリメートル)の大型ガラス基板の生産は、1―3月期に月5万枚の能力上限まで高まる見込み。過去にテレビ用液晶で日本勢を苦しめた供給問題が、中小型液晶で再び見え隠れを始めている。

シャープは液晶工場の生産能力を埋めるため、中国での営業を強化するとともに、車載用も開拓して出荷を増やす方針。だが、液晶の抜本改革に向けては「日本勢で潰し合う構造にメスを入れない限りは解決しない」(業界関係者)との見方が強まっている。

産業革新機構の主導で、東芝(6502.T)、日立製作所(6501.T)、ソニー(6758.T)の3社の液晶部門を統合して、2012年にジャパンディスプレイを発足させるまでの間、シャープにも合流を打診した事実は複数の関係者が認める「公然の秘密」だ。

当時はシャープが断ったことで、ジャパンディスプレイは3社統合で発足した。今また液晶大統合のシナリオがささやかれ始める中で、シャープはあくまで独立路線を貫くことができるか、それとも「統合論」の圧力にさらされるか、ぎりぎりの選択に直面しつつある。

*余分なスペースを削除して再送します。

村井令二 編集:北松克朗

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