July 4, 2016 / 8:11 AM / 3 years ago

インタビュー:物価上昇時、国債減額・マイナス金利拡大セットで=白井・前日銀委員

[東京 4日 ロイター] - 今年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり・慶應義塾大特別招聘(しょうへい)教授は4日、ロイターのインタビューに応じ、日銀が掲げる物価2%目標の実現には時間がかかるとし、まず1%の物価安定を実現したうえで、2%を目指す2段階方式にすべきと提言した。同時に金融政策の持続性確保のため、現行の国債買い入れを減額し、合わせてマイナス金利幅を拡大するパッケージが有効と語った。

 7月4日、今年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり・慶應義塾大特別招聘教授はロイターのインタビューに応じ、日銀が掲げる物価2%目標の実現には時間がかかるとし、まず1%の物価安定を実現したうえで、2%を目指す2段階方式にすべきと提言した。写真は都内の日銀本店前で3月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

これらの見直しは、物価が再び上昇傾向に入る局面で実施すべきとし、7月28、29日の次回の金融政策決定会合での追加緩和は、必要ないとの見解を示した。

インタビューの主な内容は以下の通り。

──審議委員在任中の1月会合では、マイナス金利政策の導入に反対票を投じた。

「金融政策はできることを全てやっている。すでに相当に緩和的な政策をやっているのになぜ、さらに緩和する必要があるのか。内需が悪化していたわけではないことは日銀も認めている」

──在任中はコミュニケーションの重要性を強く訴えていた。

「足りなかったのは、大胆な金融政策に見合った大胆なコミュニケーション。企業や家計の理解を得られない限り、物価2%の実現は無理。コミュニケーションにもっと意欲を示さなければ、金融政策に対する疑問は払しょくされない。まだ対外広報戦略は不十分で、動きも鈍くみえる。もっとスピード感を持ち、危機感を持って臨んでほしい」

──市場とのコミュニケーション。

「常に市場よりも強い物価見通しを示し、かい離がずっと解消されない現状は好ましくない。2017年度中に物価が2%に達するとの見通しを示し、2%達成の手段はいくらでもあるし、何でもやると発信していることはおおげさな約束。それこそが、金融政策の信認を低下させている。現実的な見通しを示すべきだし、大げさな約束はやめるべきだ」

──日本の経済・物価に対する現状認識は。

「人手不足は深刻な状況にあり、日本経済が悪くなっているとは思わない。実力より少し強めの成長が続いている中で、需給ギャップは解消されている方向にある。本質的な問題は潜在成長率の低さ。こうした中では、持続的な成長が実現するもとでの2%の物価安定の達成は難しい」

「物価はしばらく原油価格の下落と円高の影響が出るが、インフレ率の低下は予想されていたこと。原油安と円高の影響は一時的であり、それを除いた物価の基調をみていく必要がある。少なくとも需要不足によるデフレ的な状況ではなくなっている」

──今後の日銀の金融政策運営はどうあるべきか。

「2%の物価安定目標への理解は進んでいないが、日本の将来を考えた場合に必要だし、撤回すれば混乱が深まる可能性が大きい。ただ、2%の実現には時間がかかる。目標設定としては、まず1%の安定的な実現を目指し、達成したうえで2%を目指す2段階方式にすべきと考えている」

──現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和を見直す必要性はあるのか。

「同時に政策の持続性の確保とイールドカーブの極端なフラットニングを解消するため、現在の国債買い入れの減額と合わせ、マイナス金利深掘りをセットで実施すべきだ。実施するタイミングとしては、原油価格下落の物価への影響が減衰し、物価の基調の改善が見込める段階。早ければ今年末には、そうした状況が訪れる可能性がある」

──物価低迷を背景に、市場では次回7月会合での追加緩和観測が浮上している。

「需給ギャップもほぼ解消され、物価の基調も悪くない中で、追加緩和をする必要はない。金融政策の目的は実質金利を下げることだが、今は追加緩和をしなくても異常なまでに下がっている。効果はすでに十分過ぎるくらい出ており、追加緩和は大いに疑問がある」

「追加緩和しないことで短期筋主導の株安・円高が進む可能性があるが、日銀と市場のコミュニケーションの悪さが原因という面もあり、短期的な動きとして耐えるべき。そうでなければ、追加緩和観測は今後も続いていくことになる」

──さらに円高が進行した場合の対応策は。

「為替については、企業の想定レートと現実のレートの差による問題、現在のレートの適切性、急速な円高がさらに進むリスクの3つに分けて考えるべき。適正水準は、いくつかの推計値やIMF(国際通貨基金)なども1ドル=100─110円が妥当としており、現在の円高は水準の問題ではない」

「さらなる円高が急速に進むと、円高が行き過ぎる懸念がある。英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けて不確実性が高まっているが、金融政策は為替をターゲットにしておらず、すでに超低金利になっている以上、対応は難しい。仮に90円、80円など急激な円高には、為替介入や国際協調で対応策がないか検討すべき。政府の役割と考える」

伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦

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