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春闘回答、賃上げ3%台も 専門家は企業間格差を懸念

[東京 16日 ロイター] - 春闘の一斉回答日となった16日、日本製鉄やNECが3%台の賃上げで応じるなど、回答額の集計速報が7年ぶり高水準と好調な出足を見せた。自動車各社の満額回答などで勢いを得たかたちだが、専門家の間では企業間格差を懸念する声もある。

 3月16日、日本の大手企業各社は、労働組合の賃上げ要求に対して、一斉に回答を示した。日本製鉄やNECが3%の賃上げとなり、経営問題に揺れる東芝も2.5%アップを回答。まだ社数は少ないが、回答額の集計速報は7年ぶりの高水準となっている。写真は日本製鉄のロゴ。都内で2019年3月撮影(2022年 ロイター/Yuka Obayashi)

<相次ぐ賃上げ、日本経済に「絶対プラス」>

日本製鉄とNEC、日立製作所、東芝の基本給引き上げ幅(ベースアップ)は、モデルケースでともに月3000円。定期昇給も含めた賃上げ率は日立が2.6%増、東芝が2.5%増となった。

特に日立は、賃金と賞与を合わせた平均年収の増加率が4.4%に達した。会見した中畑英信専務は、交渉は経済動向と業績、社会的責任、社員のモチベーションの4点を考慮して決定するが、今回は来年度から次期中期計画が始まるため士気を高める必要があったとし、日本経済の好循環作りに貢献することなどに焦点を当てたと説明した。

「他社も(賃金を)上げ始めているが、こうしたトレンドは日本経済に絶対にプラスだ。成長しながら賃上げをすることができれば、日本全体が活性化し、生産性も上がってくるのではないか」(中畑氏)という。

<7年ぶり2000円台、「期待上回る勢い」>

自動車や電機各社が参加する全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)によると、これまで回答のあった41社中40社が賃上げを獲得。平均回答額は2031円と2015年以来、7年ぶりに2000円台を回復した。

初任給の引き上げも目立った。NECは要求額の2000円増を大きく上回る1万円増で回答。「中期計画の実現に向けた先行投資の一つとして『人への投資』を増額する」としている。

経団連の十倉雅和会長は「期待通りというか、むしろ期待を上回るぐらいの勢いの回答で嬉しく思う」と、こうした流れを評価。「大事なのは賃金を上げるモメンタムを維持、向上しているかどうか」だとして、今後に期待を示した。

一方、金属労協の金子晃浩議長は「これまで主張してきた賃上げの必要性に対し、政府も経営側も異論がない『三方良し』の交渉環境は例年になかった」と評価したものの、判明した結果はまだごく一部であるとして、今後の交渉に注力する考えを示した。

<自動車各社の満額回答で勢い>

相次ぐ賃上げの源流となったのは、自動車メーカー各社。ほぼ満額回答でトヨタ自動車など大手を中心に、異例の早期決着となった。前期はコロナ禍で需要が落ち込んだが、今期は回復基調にあるほか、電動化技術の開発も急ぐ必要があり、人への投資を手厚くする企業が多くみられた。

トヨタ、日産自動車、ホンダの3社は集中回答日の1週間前の9日には満額回答方針を表明。トヨタの豊田章男社長は2月の第1回労使協議会ですでに「(組合の要求水準と)会社の認識に相違はない」などと述べ、満額回答の意向を示した。4回目となるはずの16日は協議会も開かれず、要求通り12種類の職種や階級に応じた賃上げと一時金6.9カ月分となり、今年の労使交渉を終えた。

ホンダは前倒しで回答方針を示した背景について「変革への思いを加速させるパワーを従業員に与えるため、スピード感をもって変革に取り組む姿勢を示すため」と説明した。日産も、賃上げが月8000円、一時金が5.2カ月分と満額回答だった。

ある電機大手の交渉関係者は「トヨタなど自動車メーカーが早々に満額回答を得たことで、それならうちも、と勢いがついたのは間違いない」と話した。

<企業間格差に警戒の声>

順調な出足となった今年の春闘だが、専門家の見方は意外に厳しい。UBS証券の足立正道エコノミストは、世界的な需要回復や円安が追い風となって、今回の賃上げは21年度の1.8%を上回る2%前後に達するが「コロナ禍で内需型企業の業績は低迷したため、賃上げに対する期待は比較的低い」と話す。

第一生命経済研究所経済調査部長の新家義貴氏も「前年から改善が見込まれるとはいえ、コロナ前の伸びには届かない可能性が高い。コロナショックが一様なものではなかったことから、企業によって業績のバラつきが大きくなっていることが背景だ」とみる。

パナソニックは要求の3000円に対し、確定拠出年金拠出額の拡充を含めて月1500円の増額にとどまり、賃上げ率も3%に届かなかった。パナソニックグループ労働組合連合会の福澤邦治中央執行委員長は「昨年(の1000円増)より水準は上回ったと評価している」と述べるにとどめた。

雇用者数の多い主な企業の要求額と妥結額は以下の通り。(トヨタ以外はベースアップ、月額)

従業員数 要求額(円) 妥結額(円) 一時金

トヨタ 366,283 9,200 9,200 6.9カ月 1人平均総額、ベア含むかは非公表

日立 350,864 3,000 3,000 6.1カ月

NTT 324,667 2,200

住友電工 286,784 4.8カ月

パナソニック 243,540 3,000 1,500 業績連動算定方式

日本郵政 216,934

ヤマト運輸 223,191

ホンダ 211,374 3,000 3,000

6.0カ月

キヤノン 181,897

デンソー 168,391

富士通 126,371 3,000 1,500 業績連動算定方式

東芝 117,300 3,000 3,000 業績連動算定方式

※従業員数はリフィニティブ、各社HPより

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