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コラム

コラム:ソフトバンク、シリコンバレーの「破壊勢力」に

[ニューヨーク 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 既存の業界を覆すのはハイテクのスタートアップ企業と相場が決まっていたはずだが、シリコンバレーでは今、孫正義氏率いるソフトバンクグループ9984.Tが設立した「ビジョン・ファンド」が最大の破壊勢力となりつつある。

8月3日、既存の業界を覆すのはハイテクのスタートアップ企業と相場が決まっていたはずだが、シリコンバレーでは今、孫正義氏率いるソフトバンクグループが設立した「ビジョン・ファンド」が最大の破壊勢力となりつつある。写真は東京のソフトバンク店舗で2011年3月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

同ファンドは配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズ[UBER.UL]や中国の滴滴出行(ディディ・チューシン)から、米共用オフィス運営ウィワーク、犬の散歩アプリのワッグまで、数十の企業に投資。1000億ドルに迫るファンドの規模自体が、スタートアップ企業に資金調達手段の再考を迫っている。

ピッチブックのリポートによると、欧米のベンチャーキャピタル(VC)・ファンドが2017年に調達した資金は、ビジョン・ファンドを除くと総額420億ドル。最大級のVCですらビジョン・ファンドに比べるとちっぽけな存在だ。焦ったVCは規模拡大に動いており、大手のセコイア・キャピタルは過去最大の80億ドルを調達した。

スタートアップ企業にも打撃は及んでいる。創造的な事業モデルを考案した創業者に投資するVCは今、新たなリスク要因を検討せざるを得なくなった。ソフトバンクが競合他社を支援したらどうしよう──。1000億ドルもの資金があれば、支援先の企業は前代未聞の規模の投資が可能になり、トップを走っている企業をあっと言う間に追い抜くこともできるからだ。

ソフトバンク自体が投資先企業に取締役を送り込み、ある程度の支配権を握れるだけの株式を抑えているとはいえ、スタートアップ企業に巨額の資金を渡すと財務面での規律が疎かになりかねない。このことは、企業が成熟段階に入るにつれて問題化する恐れがある。潤沢な資金を得られるとなれば、企業価値評価は上昇する。この点もビジョン・ファンドの強みだ。スタートアップ企業にしてみれば、孫氏に競合企業を支援されると困ったことになるので、たとえ希望より低い評価水準での投資であっても、断るのは難しい。

業界には「ソフトバンクIPO」なる概念も生まれている。ウィワークに40億ドル超、ウーバーにそれ以上の額を投資できるビジョンファンドを味方につければ、スタートアップ企業は最早、新規株式公開(IPO)を通じて資金を調達する必要がなくなる。IPOは従来、スタートアップ企業の投資家にとっての出口(投資回収手段)だった。

この結果、IPOは少なくなり、時期が先送りされ、その際のバリュエーションはさらに高まる可能性がある。ビジョン・ファンドの事業モデルはまだ成功が証明されていないが、孫氏は既に第2のファンド構想を口にしている。ハイテク企業は資金調達手段の「破壊」に慣れる必要があるだろう。

●背景となるニュース

*ビジョン・ファンドは2017年5月、ソフトバンクのほか、サウジアラビアの政府系ファンドなどから930億ドルを超える出資の約束を得たと発表した。最終的に1000億ドルの出資獲得を目指している。

*ソフトバンクは6日に第1・四半期決算を発表する。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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