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コラム

コラム:ソフトバンク、危機脱出へ再び「魔法」の資金調達術

[香港 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンク・グループ9984.Tの孫正義会長は「先端テクノロジー」と「創造性に富む資金調達術」のどちらにより強い愛着があるのだろうか。時に言いようがなくなる。気まぐれな孫氏は、前者向け投資の行き過ぎを穴埋めするため、後者をたっぷり活用してみせる。しおらしく反省して見せてなお、同氏は新奇な金融技術にどっぷり漬かろうとしている。

 ソフトバンク・グループの孫正義会長は「先端テクノロジー」と「創造性に富む資金調達術」のどちらにより強い愛着があるのだろうか。写真は都内で、2018年11月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

孫氏は5月、今や経営が悪化している米共有オフィス運営会社「ウィーカンパニー」を熱心に応援したのは「愚かだった」と認めた。新型コロナウイルス感染の大流行も、ソフトバンクGの2020年3月期決算を90億ドルの純損失に追いやり、巨艦ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」も痛めつけた。

押しつけがましいヘッジファンド、エリオット・マネジメントにせっつかれたこともあって、自社株買いと債務圧縮のため、最大420億ドルを調達しようとしている。中国アリババ・グループBABA.N9988.HKの25%分の持ち株はさしずめ、一挙に資金を確保できる素晴らしい貯金箱とも言える。

しかし、孫氏はアリババ株を売り払うのでなく、これにリンクしたデリバティブ手法を用いて資金を調達しようとしている。

まず、先渡し契約での15億ドルだ。この取引に伴い、ソフトバンクGは向こう4年間、固定価格で銀行にアリババ株を売却することを約束する。アリババ株が値上がりすればソフトバンクGはさらにみじめな状態に陥るが、それでも追加の株放出で穴埋めは可能だ。

第2に価格条件の下限を定めるいわゆるフロア取引。これを使って15億ドルを調達する。この場合、ソフトバンクGはアリババ株が一定の水準を下回ることに備えて、値下がりリスクから守るオプションを購入。この場合、少しでもアリババ株が値上がりすれば、そのまま利益になる。

最大の資金調達部分は、下限と上限のオプションを組み合わせた85億ドルのカラー取引だ。これにより、22年の満期時にアリババ株が値上がりしていた場合、その一定部分を確保できる。

この種の「魔術」は孫氏の真骨頂だ。孫氏は04年にも同様に、ヤフー株を使った先渡し契約で資金を調達。16年にはアリババ株に転換可能な証券を調達に用いた。こうした複雑な手法に際しては銀行への手数料の形で、ほぼ確実にいわば恩恵の対価が発生する。

同時に同社は望むだけの資金調達を、借り入れを拡大せずに、あるいは株式市場を一気にアリババ株で氾濫させることなく、行うことになる。もちろん、現金を使ったオプション契約の手じまいを選ぶこともできる。

孫氏が投資をもくろんだ新興企業のテクノロジーがしばしば、孫氏と同じぐらいに独創的だったらば、孫氏も資金調達でそれほど独創的になる必要はなかったのかもしれない。

●背景となるニュース

*ソフトバンク・グループは5月18日、保有する中国の電子商取引(EC)大手アリババ・グループの株式を使って115億ドルを調達したと発表した。自社株買いに充てる。アリババ株をすぐに売却するのではなく、さまざまなデリバティブ手法を活用するとした。

*2024年4月満期の先渡し取引で15億ドルを調達。このほか、23年12月と24年1月満期のるフロア取引で15億ドル。残りの85億ドルは、22年1月から9月を期間とするカラー取引での調達だ。

*ソフトバンクGはこうしたデリバティブ取引を現金か、もしくは現金とアリババ株の組み合わせで清算することもできる。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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