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コラム

コラム:「金融工学好き」ソフトバンク、グリーンシル投資が裏目

[ロンドン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ傘下で1000億ドルの規模を誇るビジョン・ファンドは、ハイテクと同じぐらい金融イノベーションが大好きだ。しかし、グリーンシル・キャピタルの破綻は、複雑怪奇な資金調達構造が持つ危うさを如実に物語っている。

 ソフトバンクグループ傘下で1000億ドルの規模を誇るビジョン・ファンドは、ハイテクと同じぐらい金融イノベーションが大好きだ。しかし、グリーンシル・キャピタルの破綻は、複雑怪奇な資金調達構造が持つ危うさを如実に物語っている。写真はソフトバンクのロゴ。都内で2017年7月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

ビジョン・ファンドの幹部には、金融の専門家が顔をそろえる。トップを務めるラジーブ・ミスラ氏は以前、ドイツ銀行の債券部門責任者だったし、ウェブサイトに記載されているマネジングパートナー12人のうち9人は銀行出身者が占める。

ビジョン・ファンドに金融工学が浸透するのも不思議ではなく、資本の約40%は債券に似た優先株の形で入っている。ミスラ氏は、配車サービスのウーバー・テクノロジーズや半導体のエヌビディアへの投資の一環として、資産担保型ファイナンスや株式デリバティブも駆使してきた。

グリーンシルとの取引の場合、それ自体は単純だったが、結果として生まれたキャッシュフローの構図は非常にややこしい。

ビジョン・ファンドは2019年、グリーンシルの株式を15億ドルで取得。そして、昨年序盤までにグリーンシルは、ビジョン・ファンドが出資する他の新興企業、例えば、インドのホテルチェーンのオヨなどに融資を行い、これらの融資の資金は最終的にクレディ・スイス・アセット・マネジメントが運用する4つのファンドによって提供される形になった。

理論的に考えると、この仕組みによってビジョン・ファンドがグリーンシルの企業価値増大のメリットを享受しつつ、グリーンシルはビジョン・ファンドの他の出資先に資金を融通することができる。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミックが襲来し、投資家が逃げ出してしまうと、グリーンシルの資金繰りは窮地に陥った。そのため米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ソフトバンクグループが介入し、昨年3月にクレディ・スイスのファンドに15億ドルを注入したという。

結局のところ、全員が損をした。グリーンシルは昨年、ビジョン・ファンドの出資先で経営が苦境にあった新興建設企業・カテラ向け4億3500万ドルの融資について、カテラの株式5%と引き替えに返済を免除。

これに対応してビジョン・ファンドは、グリーンシルに株式転換権付き債務として4億ドルの資本を注入した、とWSJは伝えた。ビジョン・ファンドにとってこの4億ドルと、当初から保有するグリーンシルの株式は今、恐らく価値がなくなっている。

オヨなどのビジョン・ファンドの出資先は、グリーンシルが取りまとめていた資金調達の枠組みの代替手段を、急いで探さなければならなくなった。

今回の一連の詳しい経緯はまだ分からないが、誕生からの期間が短いとはいえ、既に波乱万丈の歴史を持つビジョン・ファンドが抱える問題について、グリーンシルが再びあぶり出している。複雑な金融技術に目がなく、無数の利益相反の可能性をはらみ、ソフトバンクグループ本体との線引きがあいまいということだ。

金融工学が明白なメリットを示してくれることなど滅多にない。つい先日上場を果たした韓国ネット通販大手、クーパンがお手本になったように、急成長企業の後押しに全力を注ぐことこそが、投資家の成功につながる。大抵の場合、「シンプル・イズ・ベスト」なのだ。

●背景となるニュース

*9日付のWSJ紙は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが昨年末時点で、グリーンシル・キャピタルに少なくとも4億ドルの資本注入をしていたと伝えた。

*株式転換権付き債務の形式だったこの資本注入は、ビジョン・ファンドが出資する別の新興建設企業カテラ向けローンでグリーンシルに生じる損失を埋め合わせる目的だった。

*WSJによると、カテラはグリーンシルが取りまとめた4億3500万ドルのローン返済が不能となり、グリーンシルはカテラの株式5%取得と引き替えにこの返済を免除した。

*ビジョン・ファンドは以前にグリーンシルに15億ドルを投資し、その後評価損を計上した。

*昨年3月には、ソフトバンクグループがクレディ・スイス・アセット・マネジメントが運営するファンドに15億ドルを投資。このファンドはほとんどの資金をグリーンシルの資産購入に振り向けていたという。

*グリーンシルは8日、英国で破産申請した。

*ソフトバンクグループはWSJの報道に関するコメントを拒否した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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