April 23, 2020 / 8:37 AM / 3 months ago

焦点:傷口広がるビジョン・ファンド 新型コロナが蝕む孫氏の夢

[バンガロール/東京 23日 ロイター] - 新型コロナウイルスの猛威が続く中、世界的なハイテク帝国を築くという孫正義ソフトバンクグループ(9984.T)会長の夢が崩れ去りつつある。

 新型コロナウイルスの猛威が続く中、世界的なハイテク帝国を築くという孫正義ソフトバンクグループ会長の夢が崩れ去りつつある。2018年11月、都内で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

孫氏が設立した1000億ドル(約10兆7000億円)規模の巨大投資ファンド、「ビジョン・ファンド」が新型コロナ流行の影響で損失を広げているためだ。

ロイターの分析によると、ビジョン・ファンドの資本の半分以上はウイルス感染の拡大で打撃を受けている新興企業やそれ以前から問題が表面化していた新興企業に投じられている。大口投資先が直面する問題は同ファンドの先行きに待ち構えるさらなる試練を示唆している。

<「直観」投資が裏目に>

主力の投資先である輸送分野では、配車サービスの利用が50%以上減少。ソフトバンクGが出資する新興企業6社は、新規株式公開(IPO)の計画を今年から来年に延期した。

ソフトバンクGはすでにビジョン・ファンドの損失が20年3月期に1兆8000億円に達するとの見通しを示している。孫氏の「直観」で決めた米シェアオフィス大手ウィーワークへの出資は見事なほどに裏目となり、ビジョン・ファンドに多額の出資をした中東の投資家の間に不安が広がっている。

投資先の企業が抱える問題は、多くのケースで新型コロナの流行前から生じていたが、新型コロナに伴う経済崩壊で、同ファンドの投資戦略が抱えるリスクの高さが露呈した。新たに誕生する巨大市場を制覇できるとみて、まだ成果の出ていない企業に巨額の資金を投じる投資スタイルについては、以前から極めてリスクが高いとの指摘が出ていた。

ソフトバンクGの株主であるアセット・バリュー・インベスターズのジョー・バウエルンフロイント最高経営責任者(CEO)は「ビジョン・ファンドは混乱に陥っている。十分な資産査定をせず、派手に金をばらまきすぎた」と指摘した。

孫氏は3年間でソフトバンクをハイテク分野に投資する投資会社に変え、世界最大のレイトステージ(後期)投資ファンドとなるビジョン・ファンドを設立した。

確かに一部の投資は成果が出ている。だが新型コロナの感染拡大で事態が悪化する中、成功例は乏しい。

米カーシェアリングのゲットアラウンド、オンライン住宅販売のオープンドア・ラボ、不動産仲介のコンパスなど、430億ドルを投じている輸送・不動産分野は特に状況が厳しい。

世界各国で移動制限が導入される中、出資先の配車サービス大手4社の市場環境は悪化している。関係筋によると、インドの配車大手オラは、英・豪・ニュージーランドの都市で業務を停止した。

ソフトバンクGとオラのコメントはとれていない。

<低迷する株価、相次ぐIPO延期>

米ウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)は3月、新型コロナ危機を乗り切る資金が十分にあると表明した。ただ、株価は2019年の上場時の公開価格を40%下回っている。

東南アジアのグラブは、料理宅配サービスは好調だとしている。中国の滴滴出行(ディディ・チューシン)はコメントを控えた。

ソフトバンクGはビジョン・ファンドと別に、ウィーワークや衛星通信のワンウェブなどに直接投資も行っている。ワンウェブは3月に破産法適用を申請した。

前出の関係筋によると、ソフトバンクGが出資する新興企業のうち、オンラインストア構築サービスのビッグコマースなど少なくとも6社は、IPO計画を2021年に延期した。

別の関係筋によると、ビジョン・ファンドが出資し、今年IPO申請書類を非公開で提出した米料理宅配スタートアップのドアダッシュも、資本市場の不安定な動向を踏まえて計画を見直しているという。

ドアダッシュはコメントを控えた。ビッグコマースはコメントの要請に返答していない。

ビジョン・ファンドは、出資を受けたサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)やアラブ首長国連邦(UAE)のムバダラに配当を支払っており、投資先企業のIPOは重要な資金調達手段だ。

関係筋によると、PIFとムバダラはここ数週間に、ビジョン・ファンドのパフォーマンスや配当支払い能力に懸念を示したという。

ムバダラの広報担当者は取材に対し「厳しい経済状況の中、われわれは長期的視野を持つパートナーとしてファンドのパフォーマンスを最適にする方法についてソフトバンクGと話し合っている」と述べた。

PIFはコメントを控えた。

<一部の投資には明るい材料も>

新型コロナを受けた移動制限により消費者が自宅で過ごすことを余儀なくされたことで、ソフトバンクGのポートフォリオには明るい材料を提供している企業もある。中国の動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック)の利用が拡大し、運営会社の北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)は年末までに従業員を倍近くに増やす方針を示した。

韓国の電子商取引企業クーパンは受注が急増。中国のオンライン医療サービス会社、平安健康医療科技(1833.HK)はオンライン相談の需要増加を背景に株価が年初の水準から倍に上昇した。

スタートアップ企業が不況を乗り切るのに十分な資金を有していれば、景気回復につながると専門家は指摘する。

ただ、明るい材料を提供する企業は少ない。

インドの新興ホテルチェーン、OYO(オヨ)・ホテルズ・アンド・ホームズは、利益を生み出す前に巨額の資金を投じて急速に事業を拡大させる孫氏のアプローチの典型的な例となった。移動制限が導入されて以降、世界の旅行業界は突如として危機に陥った。

関係筋によると、オヨは不可抗力事態が発生したとし、ビジネスモデルの柱だった売上保証を撤回。人員を調整し、事業拡大ペースを抑制している。

オヨはコメントを控えた。

<第2号ファンドの設立も壁に>

孫会長の投資家としての最大の実績は、中国の電子商取引大手アリババ・グループ(BABA.N)がまだ創業間もないころに同社への投資を決めたことだ。しかしその後、IPOを撤回したウィーワークの救済も含め、孫会長は一連の挫折に見舞われた。

ビジョン・ファンドが出資するスタートアップ企業は軒並み、収益性を取り戻す方法を模索したり、人員の削減に動いている。

ソフトバンクグループは4月13日、市場環境の悪化を受け、ソフトバンク・ビジョン・ファンドで約1.8兆円の投資損失を計上する見通しであることを明らかにした。

アナリストらは、今やビジョン・ファンドの投資の価値はコストを下回っている公算が大きいとみている。

ビジョン・ファンドのつまづきで、孫会長の第2号ファンド設立計画も壁に直面している。

関係筋によると、物言う投資家として知られるエリオット・マネジメントをはじめとするソフトバンクの株主らは、ソフトバンクの取締役会の中に委員会を設置して孫会長の大型の投資案件に監視の目を光らせるよう要求している。

ニュー・エンタープライズ・アソシエイツのパートナー、ベン・ナラシン氏は「ビジョン・ファンドは多くが期待していたような実績を残せなかった。(ソフトバンクの)投資案件の中には、そもそも理にかなっていたかどうか疑問なケースがある。投資判断が正しかったものもあるが、今後新型コロナが障害となる公算が大きい」との見方を示した。

ビジョンファンドの匿名の関係者は、新型コロナの経済的影響は、感染が拡大し始めたころのファンドの予想をはるかに超えていると述べた。

サンフォード・C・バーンスタインのアナリスト、クリス・レーン氏は「昨年11月に、ソフトバンクはビジョンファンドの投資先のうち約15社が破産する可能性が高いとの見方を示した。それ以降、世界は明らかに変化した。最終的に30社が破産しても驚かない」と語った。

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