May 10, 2019 / 5:56 AM / 2 months ago

コラム:ソフトバンク孫社長、「株含み益」頼みの危うさ

[香港 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ(9984.T)の孫正義社長は、人工知能(AI)が人間の知能を超える「シンギュラリティ―(技術的特異点)」がいずれ起きると予見している。

5月9日、ソフトバンクグループの孫正義社長(写真)は、人工知能(AI)が人間の知能を超える「シンギュラリティ―(技術的特異点)」がいずれ起きると予見している。東京で行われた記者会見で2018年11月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

「シンギュラリティ―」という言葉は物理学の世界では「空間と時間の区別がなくなる重力の特異点」という意味で用いられるが、ソフトバンクの最新の決算をみると孫氏は「成長」と「バリュー投資」までも同一視しているようだ。

ソフトバンクが9日公表した2019年3月期決算は、主に投資先企業の含み益が増大したことにより、四半期の営業利益が45億ドルと3倍以上に増えた。

稼ぎ頭の1つが米配車アプリ大手のウーバー・テクノロジーズ。設立から2年で、1000億ドルの規模を持つソフトバンクの投資ファンド「ビジョン・ファンド」はウーバーの筆頭株主だ。ウーバーは近く新規株式公開(IPO)を実施し、企業価値が大幅に膨らむ見通しだ。

孫氏は独創的で成長力の強い事業に入れ込んでおり、その代表がウーバーだ。孫氏は9日の決算発表ではわざわざ説明を中断し、中国の中古車オンライン販売会社「瓜子網(Guazi)」のトップを檀上に呼び、AIを駆使した同社の販売システムを称賛した。

孫氏は月単位や年単位ではなく、数十年先を見据えていると自認しているが、実際には目先のことに目を奪われている。ソフトバンクは今回の決算発表時に、55億ドル規模の自社株買いと並行して1対2の株式分割を実施し、事実上の増配を行うことも明らかにした。

孫氏は決算発表で、ソフトバンクの企業価値が正当に評価されていないと繰り返し強調した。これは数十年先を見据える投資家の関心事項とは程遠い。孫氏は、保有資産の評価額に基づく企業価値は2100億ドルで、ソフトバンクの株式時価総額の2倍近いはずだと述べた。

投資家は賢明にもソフトバンクの株式の税効果に疑いを持ち、「コングロマリット・ディスカウント(複合企業の株価を割安に評価すること)」を適用している。とはいえソフトバンクの株価は今年に入って60%上昇したため、アナリストの平均目標株価との差は縮まっているのが実情だ。

ビジョン・ファンドはこれまでの投資が「収穫期」に入りつつあるのかもしれないし、孫氏は内部収益率(IRR)が手数料差し引き後で29%に達していると胸を張った。ただ、投資先には明らかに評価が高すぎたり、先行き不透明な技術もあり、こうした企業の含み益に頼ってリターンを約束するのは無理がある。ソフトバンクの株主は、この種の「シンギュラリティ―」の陰に隠れている「金融の科学」に留意すべきだ。

●背景となるニュース

*ソフトバンクグループは9日、6月27日の株主に対して、1対2の株式分割を実施すると発表した。株式分割後の2020年3月期の年間配当は前期と同じ44円とする予定で、実質倍増となる。

*同時に発表した2019年3月期決算は営業利益が前期比81%増の2兆3539億円(約220億ドル)となった。米配車アプリ大手ウーバー・テクノロジーズなどへの出資で含み益が増大したのが主因。ウーバーは10日にニューヨーク市場で株式を公開する。

*ソフトバンクによると、1000億ドル規模の投資ファンド「ビジョン・ファンド」の投資先は69社。株式取得費用の累計は601億ドルで、3月末時点の評価額は723億ドルに膨らんだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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