[東京 22日 ロイター] - ソフトバンクグループ9984.Tの孫正義社長は22日開催の定時株主総会で、ニケシュ・アローラ副社長の退任について、社長を譲ろうと思っていた60歳に近づいてきて「やり残したことがある。もう少し社長を続けていたい」と思うようになったと経緯を説明した。
孫社長は「腹が固まったのはこの数週間だ」と説明。「あと1年になったときに、もう少し社長を続けていたいという欲が出てきた」と述べ、「彼(アローラ氏)が一番の被害者。本当に申し訳なかった」と語った。「最低5年、おそらく10年近くは社長のまま行きたい」と当面は社長にとどまる意向を示した。
アローラ氏は総会の冒頭であいさつし、「孫社長の決断を尊重し、十分にサポートしたい」と円満退社であることを強調したが、カリスマ社長の引き際の難しさがあらためて浮き彫りとなった格好だ。
<株主は前向きに受け止め>
孫社長は今回の決断について事前に社外取締役に相談。それについて、柳井正社外取締役(ファーストリテイリング9983.T社長)は「60歳にもなっていないのに引退なんて冗談じゃないぞと申し上げた」と述べ、続投を支持したことを明らかにした。
永守重信社外取締役(日本電産6594.T社長)も「経営意欲は年齢ではない」と強調。「最初から絶対に辞めないと思っていた。69歳になったらまた10年やるだろう。あまり信用しないほうが良い」と述べ、会場の笑いを誘った。
アローラ氏の退任について、出席した株主からは「株主は大歓迎だと思う。きょうは株価が上昇しており、孫さんにはもっと現役でいてもらいたいという株主の意向を象徴している」(70代後半男性)、「アローラ氏は報酬に対しての結果が不十分。グーグルの有名幹部だったかもしれないが、ソフトバンクではノイズに過ぎなった」(60歳男性)と、前向きに受け止める声が聞かれた。
市場では「アローラ副社長の退任はソフトバンク株価にポジティブと見ている。報酬が高い一方、それに見合う成果を出せていなかったアローラ氏を退任させることで投資家の納得が得られる」(内藤証券投資調査部長、田部井美彦氏)と評価する声があった一方で、「アローラ氏の退任はネガティブな印象。新たなリターンを生む投資案件をできるだけ早い時期に探し込んでいけるかという点では、アローラ氏は実績を挙げてきた」(藍沢証券投資顧問室ファンドマネージャー、三井郁男氏)との声も聞かれた。
<バランスで現金化>
ソフトバンクは足元で資産売却を加速、中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングBABA.N株も一部手放した。これについて孫社長は「アリババの将来をいささかも疑ったことはない。本来1株も売りたくないが、会社のバランスも必要なので一部現金化した」と説明した。
ソフトバンクはアリババ以外にフィンランドのスマートフォン向けゲーム会社スーパーセルやガンホー・オンライン・エンターテイメント 3765.Tを売却。この1カ月で2兆円近い資金を手に入れる取引を成立させている。
株主総会では、剰余金の処分や取締役の選任など5議案すべてが承認された。出席者は2191人。所要時間は2時間51分。
*内容を追加します。
志田義寧 協力:山崎牧子、杉山容俊、長田善行
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