April 12, 2019 / 9:07 AM / 12 days ago

焦点:ソフトバンクを道路の覇者に、孫社長の「密かな野望」

[12日 ロイター] - 来月に予定されている米配車大手ウーバー・テクノロジーズの上場で、同社に対するソフトバンク・グループ(9984.T)の投資は130億ドル以上になると見込まれる。しかし、同グループの孫正義社長は交通分野に対してもっと大きな野望を抱いている。

4月12日、来月に予定されている米配車大手ウーバー・テクノロジーズの上場で、同社に対するソフトバンク・グループの投資は130億ドル以上になると見込まれる。しかし、同グループの孫正義社長は交通分野に対してもっと大きな野望を抱いている。写真は2016年12月、米大統領に当選したドナルド・トランプ氏をマンハッタンの私邸に訪問した後、記者団の取材に答える孫正義氏(2019年 ロイター/Brendan McDermid)

孫氏は40社以上の企業に600億ドルを投資。個人が所有する車が支配する世界の3兆ドル規模の自動車産業を変革し、配車やカーシェアリング、配達ロボット、自動運転車まで、さまざまな交通サービスをスマホのアプリで利用できるようにしようとしている。

投資の規模は、ロイターによる公開データの分析や、ソフトバンクの投資戦略に詳しい十数人の情報筋へのインタビューに基づくもので、これまで報道されたことはない。それは、孫氏が、今後数十年間に人やモノが世界をどのように移動するかに影響を与えようとするパワープレーヤーの1人として台頭してきたことを示している。

孫氏の野心を実現する上での重要なパートナーは、ウーバーとトヨタ自動車(7203.T)だ。

5月に計画されているウーバーの新規株式公開(IPO)では、900億─1000億ドルの会社評価額となると予想されており、これは2018年1月にウーバーの15%株を80億ドルで取得したソフトバンクにとっては思いがけない利益となる可能性がある。投資価値が膨らめば、セクターにおける孫氏の影響力が一段と拡大、モビリティーに投資する孫氏の資本が増えることになる。

関係者によると、トヨタは1年以上前から孫氏に提携を打診しており、ソフトバンクは2018年2月、モビリティーサービスを共同開発することを検討する覚書を交わした。この合意に続いて、自動化されたモビリティーサービスの構築を目的とする合弁会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」が設立された。

ロイターが3月に報じたところによると、ソフトバンクとトヨタはウーバーの自動運転部門に10億ドルを共同出資することでも交渉中。関係筋がロイターに語ったところでは、買収は最終的な合意に近づいているが、ソフトバンクが同部門をどの程度支配するのかといった問題に関する議論がまだ続いている最中だという。

トヨタはこの件に関するコメントを控えた。

ソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ最高執行責任者(COO)はロイターとのインタビューで、ソフトバンクとトヨタは「多くのセッションを開いて未来のモビリティーを再定義しようとしている」と述べた。両社が協力して自動運転を日本で実現させる方法について話し合うのが中心だという。

孫氏は2014年以降、輸送分野でさまざまな投資を行ってきた。孫氏が2016年に320億ドルで買収した英半導体メーカーのアーム(Arm)から、ピザ配達の自動化に向けて昨年ソフトバンクから3億7500万ドルを調達したシリコンバレーの新興企業ズーム・ピザ(Zume Pizza)まで、同氏の投資ポートフォリオは文字通りAからZまで多岐にわたる。

<ファミリーの一員>

公式記録によると、ソフトバンクは1000億ドルの「ビジョン・ファンド」を含む少なくとも5つの投資ビークルを使ってモビリティー投資を行っている。豊富な資金力、積極的な投資戦略、そして輸送業界の将来に対する包括的なビジョンによって、ソフトバンクとそのリーダーである孫氏は、業界全体の形成に大きな影響力を持っている。

ビジョン・ファンドには30人以上の投資専門家がおり、彼らが「ファミリー」と呼ぶポートフォリオ企業間の協力と統合を促進するために活動している。

「彼らは同じファミリーの一員。対話をして互いに助け合い、共同で事業や投資を行う」とクラウレCOOは語る。

ソフトバンクとその関連会社は、米ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)の自動運転車部門「クルーズ」と、ライドサービス4社(ウーバー、滴滴出行、オラ、グラブ)に重点的に投資してきた。ソフトバンクはライドサービス4社の筆頭株主で、クルーズの最大の外部株主。

IHSオートモーティブの長期計画・持続可能性担当シニアディレクター、トム・デフレッショワー氏は、孫氏について「未来のモビリティーの真のエンペラーだ」と述べた。

孫氏はこのビジョンを実現するため、自動運転車やライドサービスに多額の投資をしているGMやホンダ(7267.T)とも手を組んでいる。

孫氏は昨年10月、トヨタとともに記者会見し、未来の輸送を巡るビジョンについて語った。その中で同氏は、異なる業種から先進的なモビリティー企業を集めた「事業集団(クラスター)」を結成し、そのなかで協業を促進するという構想を披露した。

トヨタは1年前、自動運転移動・配達サービスの「e-Palette(イー・パレット)」を発表。すぐにウーバーと滴滴を開発パートナーとして契約した。イー・パレットはまた、3月に少数株主としてホンダを加えたモネテクノロジーズの中核でもある。このすべてが、ソフトバンクと関係のある企業だ。

こうした提携により、いくつかのソフトバンク系企業は、輸送、買い物、支払いなどのさまざまなサービスを求める人々が利用する「スーパーアプリ」になる可能性がある。「スーパーアプリ」になった企業は、コアのビジネスやサービスを1つだけ提供する企業よりも、収益性がはるかに高くなる傾向がある。

しかし、ソフトバンクが出資する会社の多くがライバルであるという事実は、孫氏の野望を複雑にする可能性がある。クラウレCOOによると、激しい競争を繰り広げるウーバーとオラは、ソフトバンクが配車戦略を話し合う際に同じ部屋にいようとはしないという。

伝統的にベンチャーキャピタルでは、ファンドは直接の競合相手に投資しない。

「(こうした提携には)大きな相乗効果がある。しかし、その一方で利益相反のリスクも少なくない」とNGPキャピタルのマネージング・パートナーで、モビリティー分野に長年投資しているポール・アセル氏は語る。

しかし、孫氏の影響力にも限界がある。例えば、ソフトバンクはクルーズに自動運転の新興企業「ニューロ」の買収や株式取得を勧めたが、両社間の交渉では合意に至らなかったという。

そこでソフトバンクはニューロに9億4000万ドルを投資した。

<狙いは「大きな獲物」>

孫氏はこの5年間、輸送セクターへの関与を深めてきた。ライドサービスのスタートアップに対する孫氏の投資は今ではお買い得のようにみえる。

ソフトバンクは2014年末、同社が出資する中国のインターネット大手アリババ(BABA.N)とともに、滴滴の前身である快的打車の6億ドルの資金調達ラウンドに参加した。ソフトバンクは現在、滴滴の株式を20%超保有、投資価値は110億ドル以上に膨らんだ。

ソフトバンクの大手自動車メーカーとの提携はまた、交通系スタートアップに恩恵をもたらしている。トヨタは2016年にウーバーに投資し、ソフトバンクによる投資の7カ月後に出資額を引き上げた。ホンダもソフトバンクに続いてグラブへの投資を行い、昨年はクルーズの自動運転プロジェクトに27億5000万ドルをコミットし、ソフトバンクの野望を後押しした。

しかし、ソフトバンクのポートフォリオにはリスクがないわけではない。出資先の企業には、今後何年間も財務的にソフトバンクに依存せざるを得ないところもある。ソフトバンクは、出資資本の一部に年間7%の配当を支払う義務があるなど、財務上の圧力に直面しており、ビジョン・ファンドも資金の大半を既に使っている。

また、外国企業による技術投資を厳しく取り締まる米国の新しい法律により、モビリティー投資の多くについて、規制当局の承認を得ることが必要になった。もし当局が阻止すれば、スタートアップにとっては破滅的な事態になりかねない。

しかし、孫氏のポートフォリオの規模自体が、ある程度の安全策になるかもしれない。

ストラテジー・アナリティクスのグローバル・オートモーティブ・プラクティス・ディレクター、ロジャー・ランクト氏は孫氏について、「彼は大きな獲物を狙っている」と述べた。「(大きな獲物なら)1つか2つを手に入れれば、それで十分だ」。

(Heather Somerville記者、Paul Lienert記者)

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