[香港 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ(SBG)の株価は7日に独通信大手ドイツテレコムとの戦略提携を発表して以来、20%近く急騰している。SBGは保有する米Tモバイル株の一部と引き換えにドイツテレコム株を取得するのに加え、Tモバイル株を追加売却して約24億ドルの収入を得る見通し。この売却収入が、孫正義会長兼社長が近く自社株買いに動くとの期待につながった。ただ、その規模については投資家の思惑が外れるリスクが伴う。
SBGが保有するTモバイル株は、昨年に手続きが完了した傘下の米通信会社スプリントとTモバイルの合併に由来する。ドイツテレコムはSBGが保有するTモバイル株をあらかじめ決まった価格で購入するオプションを保有していた。SBGのTモバイル出資比率は低下する一方、ドイツテレコム株の4.5%を取得し、民間で第2位の株主に浮上する。ドイツテレコムのTモバイルへの出資比率は48.8%に上昇し、50%以上に引き上げる目標の達成に近づく。
SBGはTモバイル株を1株当たり平均118ドルで売却する計算になる。先週末終値から13%割り引いた水準だが、行使価格が101ドルに固定されているオプションが付く株式を早期に手放せるほか、ドイツテレコム株が急騰すればさらなる恩恵を享受できる。また、ドイツテレコム株を担保にしたローンが可能になることで資金調達手段も広がり、SBG傘下企業はドイツテレコムの12カ国に広がる事業網を活用できるようになる。
SBG株主の間では、同社の2兆5000億円規模の自社株買いが5月に終了して以降、新たな自社株買いへの期待がくすぶり続けてきた。株価は自社株買い終了後、7日の発表前までに約3分の1を失った。
シティグループのアナリストはSBGが1兆円規模の自社株買いを行うと予想。妥当な額とも言えるが、傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」など、資金の用途は他にもある。投資家の強い期待感は、一部が見当外れとなる可能性がある。
●背景となるニュース
*ソフトバンクグループ(SBG)は7日、独通信大手ドイツテレコムと戦略的パートナーシップ契約を締結し、発行株式の4.5%に相当する2億2500万株を取得すると発表した。日本のソフトバンク、米国のTモバイルと合わせ、世界的な通信事業投資を拡充する。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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