December 20, 2017 / 7:49 AM / 8 months ago

焦点:ソニー復活支えるイメージセンサー、スマホ依存に課題も

[東京 20日 ロイター] - 上半期に20年ぶりに過去最高の営業利益を達成したソニー(6758.T)。その目覚ましい復活劇を支えるゲームと半導体事業のなかで、とりわけ注目を集めているのが半導体部門の8割を稼ぎ出すイメージセンサーだ。しかし、その収益はいまだスマートフォン依存から抜け出せていない。陰りが見えるスマホ市場に代わる新たな成長分野をどう広げるか。復活ソニーの先行きを占うセンサー事業は、大きなチャレンジに直面している。

 12月20日、上半期に20年ぶりに過去最高の営業利益を達成したソニー。その目覚ましい復活劇を支えるゲームと半導体事業のなかで、とりわけ注目を集めているのが半導体部門の8割を稼ぎ出すイメージセンサーだ。写真はソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長、11月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

<裏面照射で業界トップに>

イメージセンサーの世界市場で、ソニーは圧倒的なシェアを誇っている。IHSマークイットの調べによると、2016年の市場規模は約98億ドル(約1.1兆円)。このうちソニーは45%のシェアを持ち、続く韓国のサムスン電子(005930.KS)が21%、オムニビジョン・テクノロジーズは12%にとどまっている。

ソニーの優位性を決定づけたのは、裏面照射型CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーの開発に成功したことだ。「経験者が多かったら、尻込みしていたかもしれない」――。ソニーセミコンダクタソリューションズ最高技術責任者(CTO)の平山照峰氏は、成功の背景をこう振り返った。

ソニーがイメージセンサー事業に乗り出したのは1970年。当時、ソニー副社長で中央研究所の所長だった岩間和夫氏(後にソニー社長)がソニーの屋台骨を支える技術になると確信してCCD(電荷結合素子)の開発に着手したのが始まりだ。

イメージセンサーは、カメラなどのレンズに入った光を電気信号に変える電子部品で、いわば「電子の眼」とも言える。ソニーは80年に世界で初めてCCDカラーカメラの製品化に成功。以降、同社のCCDは市場をけん引する存在となっていった。

そのCCDに転機が訪れたのは2004年。「CMOSがCCDの性能を上回るめどが立ち、これからはCMOSだと社内が一気に変わっていった」(ソニーセミコンダクタソリューションズ社長の清水照士氏)。その2年前にわずか十数人で産声を上げた開発部隊は「CMOSセンサーナンバーワンプロジェクト」の大号令のもと、5年間で200人近くまで拡大していった。

そうした中で生まれたのが、08年に開発した裏面照射型CMOSセンサーだった。光の入射の邪魔になっていた配線と基板の位置を反転。シリコン基板の裏側から光を照射することで、高感度を実現した。

「イメージセンサーを良く知っている人ほど、裏面照射はノイズが出てものにならないと思っていた」(平山氏)。

実は立ち上げ当初の開発部隊は社内からの寄せ集めで、経験者は1人しかいなかった。後発組で挑戦しやすい環境にあったことに加え、経験者が少なく物おじしなかったことが成功につながった。

<センサーづくりはレシピ重要>

足元ではサムスンもイメージセンサー事業を強化しているが、清水氏は「CCDで培ったノウハウはCMOSにも活かされていて、そう簡単にまねできない」と自信を示す。

12月20日、上半期に20年ぶりに過去最高の営業利益を達成したソニー。その目覚ましい復活劇を支えるゲームと半導体事業のなかで、とりわけ注目を集めているのが半導体部門の8割を稼ぎ出すイメージセンサーだ。写真はソニーセミコンダクタソリューションズの平山照峰・最高技術責任者(CTO)、11月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

米運用会社インダス・キャピタル・パートナーズのマネージングディレクター、アンドリュー・ダニエルズ氏は「ソニーのプロセス技術は、ある種の『匠の技』だ」と指摘する。

とはいえ、以前に比べればその距離は縮まっている。市場では同社のイメージセンサー技術は他社に比べて2─3年先行していると言われているが、清水氏は「チャンピオンデータ(一番良いデータ)で比べたら、もう差はない」と至って冷静だ。

では、どこに差があるのか。「われわれは安定した歩留まりで何万枚も作れるが、他社は難しいだろう」と清水氏は語っている。

ソニー関係者は「半導体は微細化が進み、そのために先端技術が必要だ。イメージセンサーはそこまで先端技術は必要ないが、その代わり料理と同じレシピが必要となる。何百もある工程のノウハウが味に効いてくる」と話す。

ソニーは現在、第2の柱としてセンシングにも力を入れているが、平山氏は「今は遅れているかもしれないが、センシングでもナンバーワンポジションを十分に取っていけるのではないか」とイメージセンサーの成功体験をセンシングに重ねた。

イメージングが「きれいに残す」のが目的だとすると、センシングは人の目に見えない情報も取得する技術で、すべてのモノがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)時代に不可欠な技術として市場の広がりが期待されている。

早稲田大大学院経営管理研究科の長内厚教授はソニーのイメージセンサー事業が成功した背景について、2つの「マイノリティー(非主流派)」状況が功を奏したと分析する。

イメージセンサー事業が半導体の中ではマイノリティーだったため、大規模投資のレースに参加しなくて済んだことに加え、ソニーの事業としてもマイノリティーだったことから、技術革新を身軽に進めやすい環境にあったという見立てだ。

インダス・キャピタルのダニエルズ氏も、ソニーの成功は「半導体の中でもニッチな分野への集中をかなり前に決断した結果だ」と口をそろえる。ダニエルズ氏は、同社のファンドがソニー株を保有しているかどうかを明らかにしなかったが、センサー事業を高く評価している。

<設備投資コスト拡大の懸念も>

だが、同社のイメージセンサー事業の先行きに不安がないとは言い切れない。長内教授は「今こそ、気をつけなければいけないタイミングだ」と警鐘を鳴らす。

CMOSイメージセンサーは将来的には自動運転やロボットなど「第4次産業革命」の幅広い分野での活用が見込まれているが、現在はスマホ向けが大半。そのスマホ市場は成長鈍化が鮮明だ。デュアルカメラの普及という追い風はあるものの、「消費者はいつまでスマホを買い続けるのか」(清水氏)という不安がよぎる。

さらにCMOSセンサーはアナログ技術がベースで大型の設備投資が必要ないとはいえ、顧客の要求に応えるために毎年新しい技術を投入せざるを得ない状況になりつつあることにも注意が必要だ。

清水氏は「常にローコスト体質でいられるわけではない」と指摘。「(大規模投資が必要な)メモリーとまでは言わないが、そういう要素も出てきたので、コスト改善により力を入れていかないといけない」と警戒感をにじませた。

志田義寧 山崎牧子

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