June 10, 2015 / 7:39 AM / 3 years ago

コラム:5分で分かる「南シナ海問題」

[9日 ロイター] - 南シナ海の領有権をめぐる問題は、当事国同士のみならず、中国が急ピッチで進める人工島建設に対して米国が明確に反対姿勢を示すなど、このところ急速に緊張が高まっている。以下に、この問題で知っておくべき5つのポイントを挙げた。

 6月9日、南シナ海の領有権をめぐる問題は、中国の人工島建設に対して米国が明確に反対姿勢を示すなど、急速に緊張が高まっている。写真は中国が建設を進める人工島の1つ。5月撮影(2015年 ロイター/米海軍提供)

1.そもそも南シナ海は誰のものか

中国は南シナ海の領有権について、夏王朝と漢王朝の記録にまでさかのぼる歴史を根拠に主張している。1947年には、蒋介石率いる中華民国が南シナ海の調査を行って詳細な地図などを作成し、自国の領海であることを示す「十一段線」を引いた。その後、中華人民共和国となって以降は「九段線」と改められている。

一方で米国は、南シナ海は公海であり、同海域での領有権は「海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)」によって決められるべきだと主張している。

2.なぜ中国は南シナ海を支配したいのか

南シナ海を制すれば、海上交易の要衝を支配することになるからだ。中国が輸入する石油の大半は、同海域を通って輸送されている。また、中国は東アジアや東南アジアの国々に向かう輸送を妨害したり、妨害すると脅すことも可能になる。また外国の軍隊、とりわけ米軍が同海域に立ち入るのを拒否することもできるようになる。

さらに、南シナ海の海底には大量の原油や天然ガスが眠っている可能性がある。同海域を支配すれば、中国が現在保有する水準をはるかに超えたエネルギーの安全保障と独立性を獲得することができる。

3.誰が何を建設しているのか

南シナ海にある既存の島での建設や、埋め立てによる人工島の建設は、主にベトナムとフィリピンが何十年も行ってきた。ベトナムは21島、フィリピンは8島の領有権を主張している。台湾とフィリピンは領有権を主張する島の一部に軍を駐留させているが、ベトナムはUNCLOSの規則に従って「浮島」には軍を置いていない。

中国は南シナ海での建設合戦に出遅れたものの、これまでにない規模で建設を進めている。過去1年半で中国は、これまでのどの国よりも多くの建設を行ったと報じられている。さらに他の国と異なるのは、中国は少なくとも短期間、人工島の1つに兵器を配備したことだ。同国の当局者らは、兵器配備を再び行う予定であると明らかにしている。さらに重要なのは、自国の主張を守るのに十分な軍艦を保有しているのは中国だけということだ。

4.米国はどう反応しているか

米国は事実上、東南アジア諸国による建設行為には反応を示さなかった。しかし中国の動きに対しては、積極的に反対姿勢を示している。米海軍は第2次世界大戦以降、南シナ海で継続的に活動しており、カーター国防長官によれば、今後も続ける確固たる意志がある。

米国は、同海域で沿海域戦闘艦「フォートワース」を航行させたり、中国が人工島建設を進める南沙(英語名スプラトリー)諸島付近に対潜哨戒機「P8ポセイドン」を飛ばしたりしているように、航行の自由を主張するために航空機や海軍艦艇を使うだろう。

航行の自由という使命を超え、米国は地域の同盟諸国との関係強化に努めている。量・質ともに同盟諸国に勝る中国の技術的優位に対抗すべく、最新の軍事機器を提供するなど、情報収集や監視能力の強化で協力している。フィリピンは第2次大戦以降、米国から軍事支援と訓練を受けているが、中国の「侵入」対応するには旧式の米沿岸警備艇2隻しか持っていない。

米国と密接に連携している日本も、フィリピンとベトナムに巡視艇を供与するなど協力関係を強化している。

5.次に何が起きるか

南シナ海問題をめぐり、米国と中国の対立はある程度までエスカレートすることが予想される。米国は中国の人工島12カイリ(約22キロ)以内に米軍の航空機と艦船を派遣する準備を進めている。沿海域戦闘艦「フォートワース」や哨戒機「P8ポセイドン」は、すでに中国の人工島のすぐ近くで活動している。中国はそれを非難したが、敵対行為に出ることはしなかった。

しかしながら、中国は「自国の領域」を防衛すると明言している。もし中国政府が見て見ぬふりをすれば、共産党が面目を失う形となって国内問題に波及する可能性がある。

一方、米国の態度が揺らげば、中東政策やウクライナ政策も併せて考えると、米国が決意に欠けるという印象を長期にわたって同盟国に与えるリスクを冒すことになるだろう。

誤算のリスクも然り、南シナ海の問題は両国にとって大きな危険をはらむ。米国はアジア太平洋地域の主要な同盟国である日本とオーストラリアとの協力強化を通じて、中国に歯止めをかけることを望んでいる。

*筆者は、元米空軍将校で外交にも携わっていた。米空軍士官学校では哲学教授を5年間務め、2009─2011年には米太平洋特殊作戦軍(SOCPAC)の上級政務官だった。軍を退役後は、米海軍大学院で中国政策に関する助言も行っている。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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