July 14, 2018 / 9:42 PM / 3 months ago

焦点:韓国コスメが中国席巻、「裏の主役」に海外大手の熱視線

[ソウル 9日 ロイター] - 韓国首都ソウルの南にある工場では、プラスチック製のキャップとマスクを装着した女性たちが、桃色のアイシャドーをケースに収めている。すぐ脇の機械では、肌色のフェイスパウダーを大量生産している。

 7月9日、「ファスト・ビューティー」の中心地となった韓国を支えているのは、化粧品の下請け生産における国内企業の優位性だ。写真は韓国化粧品ブランド「AHC」の店頭を歩く女性。ソウルで6月撮影(2018年 ロイター/Kim Hong-Ji)

この2つの製造ラインには大きな違いがある。前者はフランスの有名な高級化粧品ブランドに供給するもので、後者は韓国の低価格ブランド向けだ。

この工場を運営するのは韓国で3番目に大きい下請け化粧品メーカー、コスメッカ・コリア(241710.KQ)だ。

米エスティローダー(EL.N)のような最高級ブランドから、クリオやドクタージャルトといった気軽な韓国ブランドに至る、300社以上の企業に幅広い製品を生産している。

こうした工場の力によって、韓国は「ファスト・ビューティー」の中心地となった。それは製品のアイデア発案から発売までに要する時間を劇的に、多くの場合で数年も短縮するような世界を指している。

気まぐれなミレニアル世代の消費者によって、昨年のヒット商品が今年はまったく売れないこともあり、このスピード感は不可欠だ。

化粧品の下請け生産における韓国企業の優位性は、米アップル(AAPL.O)の「iPhone(アイフォーン)」端末を製造する台湾フォックスコン(2354.TW)がIT分野でその地位を高めたのと同じように、化粧品業界にとっての重要性が増していると言えるだろう。

これらの下請けメーカーの顧客である主要韓国ブランドのいくつかは、ロレアル(OREP.PA)やユニリーバ(ULVR.L)などグローバルな化粧品企業に買収された。下請けメーカー自体にも資本参加の提案があり、その一部は海外の化粧品企業からのものだったという。

事情に詳しい3人の関係筋がロイターに語ったところによると、韓国の下請け化粧品メーカー大手3社、コスマックス(192820.KS)、コリア・コルマー(161890.KS)、そしてコスメッカは、いずれも近年、少数株式の購入について外国人投資家からの打診を受けたという。

こうした打診については守秘義務があるため、関係筋は匿名を希望しており、さらなる詳細を明かすことを拒否した。

そのうち1人の関係筋によれば、下請けメーカーの1社は2016年、少数株式を買い取りたいという海外化粧品企業からのオファーを断ったという。こうした出資を受け入れることで、幅広い顧客基盤に動揺を与えることも懸念の1つだった。

3社ともコメントを拒否している。

<中国ブランドからの需要>

もっぱら裏方に徹し、自身は世間に知られることがほとんどないこうした下請けメーカーだが、535億ドルの規模を誇る中国の化粧品市場で、供給先である韓国ブランドが急成長しているため、有利な立場にある。

こうした韓国ブランド躍進の要因としては、コストパフォーマンスが高いというイメージや、新製品の入荷が早いこと、また優秀なオンラインマーケティングが挙げられる。

また、中国にも、まだ小規模だが急拡大している国産ブランドがあり、これまた韓国の下請けメーカーにとって収益成長の追い風となっている。ただし、メーカー幹部によれば、中国ブランドとの下請け製造契約は利益率が低くなる場合があるという。

韓国下請けメーカー3社の株価パフォーマンスはまちまちだが、いずれも韓国の主要株価指標を上回っている。

世界シェアで首位に立つコスマックスの株価は、9日時点で、年初来34%上昇しており、韓国株式市場全体が8%下落したのに比べ、はるかに好調だ。一方、コスメッカ株は同時期8%上昇、業界第2位のコリア・コルマー株は3%下落している。

 7月9日、「ファスト・ビューティー」の中心地となった韓国を支えているのは、化粧品の下請け生産における国内企業の優位性だ。写真は、韓国化粧品ブランド「AHC」の商品。ソウルで6月撮影(2018年 ロイター/Kim Hong-Ji)

とはいえ、韓国コスメ産業の最大手アモーレパシフィック (002790.KS)は株価が21%下落しており、これに比べれば3社とも大きくアウトパフォームしている。

アモーレパシフィックは、自社製造と下請け製造の双方を利用しているが、2018年第1・四半期は10%の減収となり、営業利益は30%近くも下落した。同社のブランドには、ハイエンドの「雪花秀(ソルファス)」、大衆向けの「イニスフリー」、若年層向けの「エチュードハウス」などがある。

他方、上述した3社のような、いわゆるOEM(相手先ブランドによる生産)を手掛けるメーカーは、同時期に収益を伸ばしている。

「小規模プレイヤーが増加したことで、アモーレパシフィックのような化粧品大手は苦しい時期を迎えている。対照的に、これはOEMメーカーにとっては有利な環境だ」と語るのはハナ・インベストメント&セキュリティーズのアナリスト、パク・ジョンダイ氏だ。

「ブランドを抱える企業には浮き沈みがあるが、OEMメーカーは安定した収益を確保している。業界の構造的変化、つまりアジアの成長と流通チャネルの多角化に、最も適応しているのが彼らだ」

<大手の巻き返しはあるか>

特に、新しいアイデアはあるものの、生産能力や研究能力を持たない小規模な韓国ブランドが、中国の成長市場で成功を収めるために、OEMメーカーが不可欠になっていると、業界幹部や専門家は指摘する。

2016年、仏高級ブランド企業LVMH(LVMH.PA)のプライベートエクイティ投資部門がクリオ株購入に先立って、デューディリジェンスの手続きを進めていた。その際、大きな疑問点の1つが「どうしてあれほどのハイペースで新製品を生み出せるのか」だったと、クリオの戦略プランニングチームでマネジャーを務めるリン・ミラ氏は語る。

リン氏によれば、コスマックスのような下請けは、注文に迅速に対応できるため、海外下請けメーカーであれば約1年を要するのに対して、早ければ3カ月で対応できるという。

クリオでは、以前はイタリアの下請けメーカーから製品調達していたが、今では韓国下請けメーカーに頼んでいる、とリン氏は言う。

「製品が成功してもライフサイクルが短くなっているため、グローバルプレイヤーの多くは、対応に必死だ。これまでよりはるかに速いスピードで新たなイノベーションを生まなければならない」。そう語るのは調査会社カンター・インターナショナルで中国を拠点とするアカウント・ディレクターを務めるローラ・チュー氏だ。

調査会社ユーロモニターによれば、ユニリーバの中国市場におけるシェアは2014年の3.2%から2017年には2.8%に低下する一方で、ロレアルのシェアも9.4%から8.5%へと低下した。

形勢逆転を狙って、ユニリーバ、ロレアル両社だけでなく他の欧米の大手企業も、この2年間、中国市場で好調な韓国ブランドを買収すべく高額の投資を進めてきた。

ユニリーバは昨年9月、化粧品ブランド「AHC」の製造元カーバー・コリアを22億7000万ユーロで買収したと発表。カンター・インターナショナルによれば、カーバー・コリアの中国市場での売上高は2017年に30%以上も伸びた。

「地理的に、これによって世界の5大スキンケア市場のうち2つ、つまり中国と韓国における当社の立場を強化することができるだろう」と英国に駐在するユニリーバ幹部リジー・チェン氏はロイターに語った。

また、対価は非公開だが、ロレアルに5月に買収された韓国ナンダは、昨年、主力化粧品ブランド「3CE」の中国における売上高を倍増させている。

韓国が昨年、米国の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を国内配備したことを巡って中国と対立し、中国で韓国ブランドに対する非公式のボイコットが起きていただけに、こうした力強いパフォーマンスは特に注目を集めた。

韓国の下請けメーカーは、急増する需要に対応するため、中国国内での生産を拡大している。

コスメッカのCho Im-rae会長は、ここ数年、中国にある同社工場はフル操業の状態だと語る。第3工場の開設も計画中だ。「中国の化粧品需要は非常に大きく伸びている」と会長はロイターに語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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