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アングル:ネットフリックスの人気作品、韓国の徴兵制議論に一石

[ソウル 14日 ロイター] - 動画配信サービス、ネットフリックス の人気シリーズをきっかけに、韓国内で軍を巡る議論が再燃している。大規模な韓国軍と、そこで長年続く虐待スキャンダル、そして若い男性を対象とする徴兵制により兵・下士官を調達する仕組みについて論争が起きている。

「D.P.─脱走兵追跡官─」は8月末の配信開始以来、韓国においてネットフリックス配信ドラマの人気上位を争っている。

この連続ドラマの主役は脱走兵を逮捕する任務を与えられた追跡官で、多くの徴集兵の日常生活に光を当てる中、他の兵士からの心理的・肉体的虐待も描かれている。

ハン・ジュニ監督は、徴兵制度のもとで脱走兵が犠牲者であると同時に犯罪者にもなってしまう実態、そして脱走兵の追跡を強いられる者たちの負担について、人間味溢れるストーリーを描くことを目指したと語った。

ハン氏はロイターに宛てた電子メールで、「『D.P.』は脱走兵追跡の物語だが、同時に、誰かの不運な息子や兄弟、恋人を探すという逆説的な物語でもある」と説明した。

このドラマの人気について問い合わせたところ、韓国国防省の広報官は、韓国軍の環境は変化してきており、国防省としても虐待行為や過酷な扱いの根絶に努めてきたと述べた。

韓国軍は前週、無断離隊した仲間を一般兵士に探索させる制度については、このドラマの配信開始以前に廃止を計画していたと発表した。改革は、2022年7月から実施されるという。

北朝鮮との数十年にわたる緊張の中、韓国は現役55万人、予備役270万人の兵力を維持している。すべての男子は、軍種にもよるが、最長21カ月間の兵役を義務づけられている。

韓国の軍刑法では、脱走は最長で10年の刑に服することになる。

動画配信サービス、ネットフリックスの人気シリーズ「D.P.─脱走兵追跡官─」をきっかけに、韓国内で軍を巡る議論が再燃している。画像は同作品のワンシーン。Netflix Koreaが提供(2021年 ロイター/Netflix Korea/Handout via REUTERS)

国防省は、徴集兵の間の虐待や脱走は減っているとしている。2019年に、徴集兵に対し兵舎での携帯電話使用を認めることが決定されたことが主な理由だという。

国防省は脱走兵の正確な数の確認を拒否したが、韓国メディアの報道によれば、昨年は55件発生しており、2019年の78件に比べて減った。同時期の軍隊内での自殺による死者も、27人から15人に減少した。

<白熱する議論>

「D.P.」は、徴兵制の今後や虐待の可能性を巡る韓国内での議論に一石を投じた。特に昨今は、若い男性が経済的な展望の悪化に直面しつつ、兵役のために学業や労働のための時間が犠牲になっていると不満を募らせる状況もある。

2018年には韓国最高裁が、良心的兵役拒否を兵役回避の正当な理由として認める初の判断を示した。また昨年国会で成立した法案により、Kポップのスターは30歳まで兵役を延期できるようになった。

今年、複数の性的虐待スキャンダルが韓国軍を揺るがしたことが契機となり、国会において、軍内部での性的虐待と暴力犯罪は民間法廷で審理されるという法案が可決されるに至った。

兵役経験者の「D.P.」への反応はさまざまだ。自分の体験にそっくりだという声もあれば、虐待の描写が大げさだという声もある。人によっては、トラウマである記憶がよみがえるので、同ドラマを観ないようにしているという。

「『D.P.』には(兵士に)軍靴を投げつける場面がある。似たような嫌がらせは何度もあった」と語るマ・ジュンビンさんは、2013─14年に経験した兵役を「暗黒の時代」と表現した。「今にして思えば不当だったと感じるが、あの頃は当たり前のことだった」

イ・ジュンテさん(24)が兵役に就いたのは2017─19年。期間中に虐待を受けた経験はなく、友人の間でもそうした話を聞いたことはないという。

「私たちの頃には、ひどい扱いはなかった」と彼は語った。

与党の大統領選本命候補と言われる李在明(イ・ジェミョン)氏は前週、この連続ドラマの物語は韓国の「野蛮な歴史」だと評した。野党の大統領候補である洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏は、自分は兵役時に受けた残酷な仕打ちに耐えて、志願して軍務につく決意を固めたと述べている。

全体として「軍隊の文化」が変わらなければ、徴兵制廃止がすべての問題を解決することにはならない、と語るのは、かつて脱走兵追跡の任務を経験したことがあるポップカルチャー評論家のキム・ハンシク氏。

「徴兵制だろうと志願制だろうと、兵役が存在する限り何らかの形での問題は避けがたい」とキム氏は指摘した。

(Sangmi Cha記者、翻訳:エァクレーレン)

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