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アングル:韓国の軍事的自立を追求する文政権、後継にも影響か

[ソウル 22日 ロイター] - ソウルで開催された過去最大規模の兵器展示会に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は20日、戦闘機の後部座席に乗って登場した。北朝鮮との和平実現に熱心なリーダーというイメージとは程遠い演出だ。

来年5月の退任を前に、北朝鮮との画期的な関係改善に向けた文大統領による最後の努力がどのような結果をもたらすにせよ、文政権が取り組んでいる軍備強化は今後長期にわたる遺産になりそうだ。写真は9月、国連総会で演説する文大統領。ニューヨークで代表撮影(2021年 ロイター)

文政権のもとで、韓国は歴代の保守政権が承認した軍事プログラムの多くを継承しただけでなく、ただでさえ巨額だった防衛予算は過去最高を更新し、さらには自国のミサイル開発プログラムに対する米国による制約の解除に向けた交渉も進めた。先進的な兵器を数多く揃える中で、韓国初の航空母艦を建造する計画も発表している。

来年5月の退任を前に、北朝鮮との画期的な関係改善に向けた文大統領による最後の努力がどのような結果をもたらすにせよ、こうした軍備強化は今後長期にわたる文政権の遺産になりそうだ。

これはリベラル派の文大統領による朝鮮半島和平に向けた取り組みとは矛盾するように映る。北朝鮮は、こうした軍備強化は、韓国とその同盟相手である米国が示す敵対的な不誠実さの一例だと指摘している。

だが、当局者やアナリストによれば、文大統領の主要な動機の1つは、米国との同盟関係における自立性を高めること、そしていずれは戦時下での韓米合同軍の作戦指揮を韓国側が担いたいという願いであり、そのためであれば北朝鮮を刺激するリスクはやむをえないと考えてきたように見えるという。

韓国政府の外交関係者の1人は、「文政権が2019年に米国から購入したF35戦闘機を披露したときは不思議に思った。南北対話を推進したいと望む一方で、北朝鮮をひどく怒らせるのを分かっていながら、なぜこうした動きに出るのか」と語る。「けれども、しばらく経つと、自立的な国防という文大統領のコンセプトにおいては、計画したことは何があろうとも遂行するのだと理解した」

平和条約ではなく休戦協定によって終結した1950─53年の朝鮮戦争以降、新たな戦闘が勃発した場合には、約2万8500人を朝鮮半島に駐留させる米軍が、数十万人規模の韓国軍の指揮を執ることになっている。

文大統領は韓米合同軍の指揮権を確保することを主要目標に据えていたが、コロナ禍その他の問題により検討が遅れたため、残されたわずかな任期の間にそれを実現することは不可能になった。

しかし前述の外交関係者によれば、文大統領は「後継の大統領が誰になろうと、軍備強化を通じて、将来的な指揮権の移行に向けた地ならしを続ける決意を固めたように見える」という。この関係者は、外交上センシティブな話題のため、匿名を条件に取材に応じた。

文大統領による軍事力強化の裏には別の要因もあり、特に顕著なのは、北朝鮮による脅威の増大に対する純粋な懸念だ、と当局者らは指摘する。

さらに、軍事力強化は国内の防衛関連企業にとっては新たなビジネス機会になり、国家としての威信を高め、文大統領としては「北朝鮮への歩み寄りによって韓米同盟が揺らいでいる」とする保守派からの批判をかわすことにもつながっている。

<「力による平和」>

韓国の軍事関係者は、文大統領にとって軍事力の強化は、米国への依存を弱めつつ、優位な立場で北朝鮮との和平を構築するための当然の一策であるとの考えを示した。

「文大統領の動きは重要な示唆を与えている。つまり韓国は、同盟各国の一部としてではなく、自ら率先して朝鮮半島和平の先頭に立つ用意がある、という意味だ」とこの関係者は述べた。やはりセンシティブな問題であることを理由に匿名を希望している。

「力に裏付けられた平和を推進する一方で、現政権は北との結びつきも諦めていない」と同関係者は言葉を重ねる。「北朝鮮が交渉のテーブルに戻ってくるよう最後まで努力するだろうし、その努力に沿って、戦争の終結という主題を提起してきた」

文大統領は9月の国連総会での演説で、朝鮮戦争の正式な終結を宣言することを呼び掛け、それによって、米国による制裁解除と引き替えに北朝鮮の非核化を目指す交渉においても停滞を打開しやすくなるだろうと述べた。

近年、北朝鮮は短距離ミサイルの試射を何度か実施しており、アナリストらによれば、韓国の防衛網を回避することを意図したものだという。また北朝鮮は韓国の動きに呼応する動きをいくつか見せており、韓国側に対抗する兵器展示会を開催したほか、韓国が独自の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験を行った数週間後には、やはりSLBMの試射を行っている。

北朝鮮は、韓国による兵器の調達や米軍との合同訓練について繰り返し抗議しており、韓国が軍備開発に対して二重基準を適用しつつ、自国の軍事力強化によって朝鮮半島の不安定化させていると批判している。

一方で、韓国当局者によれば、北朝鮮は都合に応じて、韓国の軍事的な動きを無視する、あるいは軽視しようという態度も見せているという。

「韓国の兵器が北朝鮮にとって歓迎すべきものでないことが明らかであるにもかかわらず、強い反発は見られない。それが通常の状態であることを装い、自国の兵器開発を正当化するという戦略ではないかと考えている」と最初に紹介した関係者は述べた。「だが、南北間に何ら軍縮のメカニズムや信頼構築のための手段が存在しない状況で、軍拡競争は非常に危険な方向に向かいつつある」

(Hyonhee Shin記者、翻訳:エァクレーレン)

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