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アングル:自動操縦の宇宙旅行、ベゾス氏が踏み出す最初の1歩

[シアトル 14日 ロイター] - 宇宙空間への進出という点で、米国の富豪ビジネスマン、ジェフ・ベゾス氏はライバルのリチャード・ブランソン氏に1歩リードを許したかもしれない。だが、来週には彼も歴史に名を刻もうとしている。搭乗者はすべて一般人で、パイロットなしの準軌道宇宙飛行として世界初になるからだ。

アマゾン・ドット・コム の元CEOであるベゾス氏は、20日に自身の企業ブルーオリジンが製造する宇宙船「ニュー・シェパード」に4人の搭乗者の1人として乗り組む。11分間の飛行が予定されている。

共に搭乗するのは、彼の弟でプライベートエクイティ企業の幹部であるマーク・ベゾス氏と、宇宙飛行士の元候補生だった80代の女性パイロット、ウォリー・ファンク氏。もう1人は2800万ドルを払って搭乗スポット枠を手に入れた匿名の人物の予定だったが、「スケジュールの調整が困難」との理由で、18歳の物理学専攻の学生が代わりに搭乗することになった。打ち上げはテキサス州西部からの予定だ。

「ニュー・シェパード」は全長18.3メートル。完全に自動化されたロケットと搭乗カプセルの組み合わせで、宇宙船内部から操縦することはできない。ブルーオリジンの計画に詳しい3人の人物がロイターに語ったところでは、搭乗者は一般人のみで、ブルーオリジン社員や専門の宇宙飛行士は含まれないとされている。

ブルーオリジンに所属する宇宙飛行士には、NASAのスペースシャトルで豊富な経験を積んだニコラス・パトリック氏もいる。

ベゾス氏は先月、このフライトに関して論じた動画の中で、「宇宙空間から地球を見れば、人は変わる。その人とこの惑星との関係、人類との関係が変わる」と述べた。

ティール・グループの宇宙産業アナリストであるマルコ・キャスレス氏によれば、搭乗者全員が一般人で、完全自動操縦の準軌道もしくは軌道飛行は過去に例がないという。

英国の富豪ビジネスマンであるブランソン氏は、自身の企業ヴァージンギャラクティックの宇宙船に搭乗し、11日、ニューメキシコから離陸し、画期的な準軌道飛行に臨んだ。ヴァージンギャラクティックによるフライトでは2名の宇宙飛行士が搭乗し、同社の宇宙飛行士訓練チーフインストラクターや、主任オペレーション・エンジニアも同行していた。

「ニュー・シェパード」は従来のロケット打ち上げと同様に、発射台上に直立した状態から離陸する。一方、ヴァージンギャラクティックの場合は、ロケット推進式の宇宙飛行機が上空で母船となる航空機から切り離される方式だ。

 7月14日、宇宙空間への進出という点で、米国の富豪ビジネスマン、ジェフ・ベゾス氏はライバルのリチャード・ブランソン氏に1歩リードを許したかもしれない。だが、来週には彼も歴史に名を刻もうとしている。コロラド州コロラドスプリングスで2017年4月撮影(2021年 ロイター/Isaiah J. Downing)

「ニュー・シェパード」はヴァージンギャラクティックの場合と同様に、地球周回軌道に入るわけではないが、搭乗者を地表から約100キロの距離まで送り届け、その後カプセルはパラシュートを使って帰還する。ヴァージンギャラクティックの宇宙機が到達したのは地表から86キロである。

富豪ビジネスマンのイーロン・マスク氏が経営する宇宙輸送企業スペースXは、さらに野心的なミッションを9月に予定している。同社の「クルー・ドラゴン」宇宙船に搭乗したすべて一般人のクルーを、数日にわたり地球周回軌道に送り込もうという計画だ。

<「単純な計算」>

ブルーオリジンでは準備に20年かけた。ベゾス氏が同社を設立したのは2000年。無人操縦の宇宙船というのは、財務上の理由から同社幹部が何年も前に採用した戦略だ。

「単純な計算だ」 ブルーオリジンの発想に詳しい人物の1人はそう語る。「操縦士、副操縦士を必要としないシステムを設計すれば、それだけ有料の乗客を乗せることができる」

「ニュー・シェパード」は最大6人を収容できる。これまでブルーオリジンや業界関係者は、初回フライトでは自社従業員を乗せると語っていた。

ブルーオリジンの広報担当者は、初回フライトにおける顧客体験を向上させるため、席数を4人分とする決定が下された、と述べた。

ブルーオリジンのスタッフである宇宙飛行士や技術専門家を乗せないという決定は、同社関係者の一部を落胆させた。最初の有人飛行は、まだ初期段階にあるプロジェクトにとってはデータや技術的なフィードバックを集め、将来の有料顧客のために体験を評価する大切な機会になると考えていたからだ、と情報提供者は語る。

「ニュー・シェパード」が時速3540キロという猛烈なスピードで打ち上げられる際でも、経験豊富な宇宙飛行士が同乗していれば、民間人の搭乗者たちも落ち着いていられるだろう、とこの関係者は言う。

搭乗者は2日間の訓練を受ける。ブルーオリジンでは地上に2名のスタッフを配置し、搭乗者のベルト装着を手伝い、ミッションのあいだ、ヘッドセットを通じて直接指示を与える。

「遊園地のアトラクションに乗るようなものだ」とキャスレス氏は言う。「すべてが点検済みできちんと動作するようになっているのだと信頼するだけだ……ゆったり座って乗り物を楽しめばいい」

業界関係者の間では、搭乗者が初めての体験に圧倒され、あるいは気分が舞い上がってしまうことにより、ありふれたノイズで動揺する、重要な指示を聞き漏らす、失神する、船室内で浮揚しているときに怪我を負うといった状況を危惧する声もある。危険の伴うシナリオだが、訓練を受けた宇宙飛行士ならば対応できるかもしれない。

82歳のファンク氏は、NASAによる1960年代の宇宙開発計画において、「マーキュリー・セブン」と呼ばれる男性宇宙飛行士7人と同じ厳しい試験に合格した13人の女性の1人だった。だが、性別を理由に宇宙飛行士になる機会を得られなかった。

スイスの投資銀行UBSでは、宇宙旅行市場は今後10年間で年間30億ドル規模になると試算しているが、その開発に向けて鍵となるのは安全の確保である。

「『ニュー・シェパード』のミッションにおける主要目標の1つは、準軌道宇宙飛行が一般の人にとって完璧に安全であると実証することだ」とキャスレス氏は言う。「だからこうしたフライトでは、できるだけ多くの平均的な人々を乗せることがプラスになる」

(翻訳:エァクレーレン)

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