February 7, 2018 / 6:43 AM / 3 months ago

コラム:スペースXの大型ロケット、宇宙商業時代の幕開けか

Peter Apps

[6日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発ベンチャー企業スペースXが6日、新大型ロケット「ファルコンヘビー」の打ち上げを成功させたことは、人類による宇宙探索の大きな転換点となるだろう。

米国と旧ソ連が宇宙開発競争に乗り出して以来初めて、世界で最も強力なロケットが、民間企業によって開発されたのだ。

これは、人類の宇宙活動分野で起きている巨大な変化の兆候だ。最近まで、こうしたロケット開発は、ほとんど政府が独占していた。ニール・アームストロング宇宙飛行士らを月に運んだサターンV型ロケットは、最大かつ最も巨額な政府プロジェクトの1つだった。

民間企業は以前から、宇宙に潜在的なビジネスチャンスを感じていた。商業打ち上げは1980年代に仏アリアンスペースが始めたが、10年ほど前まで、特に米国企業は、積荷を宇宙空間に運ぶために米政府やロシア政府が開発したロケットを利用することが多かった。

今回の変化が意味するところは重大だ。実際のところ、これで人類の火星到達は、民間企業の旗の下で実現する可能性が高くなった。

米電気自動車大手テスラ(TSLA.O)の経営者でもあるマスク氏は、この目標に極めてオープンな姿勢をみせている。

6日の打ち上げで、マスク氏はファルコンヘビーに自身の真っ赤なスポーツカー「テスラ・ロードスター」を搭載。デビッド・ボウイの曲「ライフ・オン・マーズ」に乗せて、この赤い星目がけて発射した。そつのないマーケティングだが、野心の表明であることに疑いない。

「ファルコンベビー」の試験機内に置かれた赤いテスラ・ロードスター。2017年12月撮影。スペースX提供(2018年 ロイター)

民間企業はかつて、政府が開発した既存のテクノロジーに頼っていたが、今では自前の技術を打ち出している。ファルコンに類似するロケットは、米フロリダ州ケープカナベラルにある米航空宇宙局(NASA)などから頻繁に打ち上げられている。だがファルコンには、再利用可能なブースターなど独自技術も盛り込まれている。このブースターは、自力で着地、またはドローンによる空中回収も可能だ。

今回の打ち上げに失敗していたら、スペースXにとって手痛い打撃だっただろうが、それでもライバル各社に道を開く結果につながっただろう。ネット小売り大手アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)も、宇宙開発ベンチャー企業ブルーオリジンを所有し、再利用可能な軌道飛行型ロケット「ニューグレン」の開発に取り組んでいる。

もちろん、政府が宇宙開発の主力を担い続けることに変わりはない。実際、人を軌道に送り込むことにかけては、米国やロシア、中国政府の独壇場だ。トランプ大統領は昨年、NASAで再び米国人を月に送り込むと宣言した。またオバマ前大統領は2016年、2030年までに人を火星に送り込む計画に言及していた。

オバマ氏は、このような計画には民間セクターの参画が必要との考えを明確にしていた。

だが実際のところ、今やこの計画を本当に推進しているのは、民間企業、中でもマスク氏だ。同氏は、米国や他国政府に資金提供を求める可能性があるとしている。だが、納税者は、かつてのような主役ではなく、脇役になりつつあるようだ。

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もちろん、こうした流れは決着済みではない。民間宇宙ベンチャー企業を巡って憶測が飛び交うのは目新しいことではない。起業家リチャード・ブランソン氏率いるヴァージン・ギャラクティックは、何年も前から再利用可能な宇宙飛行船を開発しているが、大きな失敗が重なり、今ではプロジェクトの実現が疑問視されている。

月面着陸のような政府のプロジェクトは本来、必要な公的資金を注ぎ込む政治意思があるかどうかを試すものだが、商業的なベンチャーには他の目的がある。最終的には、生き残りのために利益を上げる必要があるのだ。

技術的な「可能性」と「収益性」の境界がどの辺にあるのかは、明確ではない。すでに収益性の高いデータ収集衛星を軌道に乗せることと、宇宙空間にさらに深入りし、その間宇宙飛行士の生命を守ることは、全く別のものだだ。その投資リターンは、良くても投機的でしかない。

リスクにもかかわらず、この産業への関心は高まっている。2016年に、米国の投資家は宇宙関連のスタートアップに前年を4億ドル(約440億円)上回る総額28億ドルを投資した(2017年の統計はまだ出ていない)。

これは米政府がNASAに投じる予算195億ドルのほんの数分の1の規模でしかない(NASA予算は、米政府予算の0.5%未満だ)。だがスペースXの発射成功は、宇宙に寄せる民間企業の関心を強力に象徴している。

スペースXは、まず小型ロケットで実績を積んでから、2013年12月に初の地球の静止軌道上への衛星投入を行った。ファルコンロケットは、低軌道への投入では世界最安の料金を提示しており、ライバル企業への脅威となっている。

ライバル社の1つ、欧州航空機大手エアバス(AIR.PA)と仏航空宇宙大手サフラン(SAF.PA)が共同出資するアリアンスペースは、記録的な受注高があるとしているが、利益率は低迷している。

もしコスト管理が可能であれば、隕石を掘削したり、より大きな財務リスクを取る見返りに惑星を探索する権利を得るなど、民間企業が今後数十年にわたり、さらに深く宇宙に活動の場を広げる図を容易に想像できるだろう(月などの惑星における活動を規制する協定があることから、新たな正式協定が必要になるかもしれない)。

これには前例がある。

16世紀と17世紀の欧州大冒険時代、多くの王室は、未知の領域を探検するリスクを取るために民間会社を設立した。オランダや英国の東インド会社、ハドソン湾会社は、最終的には土地のほとんどを事実上所有し、数十年、時には数百年に渡り、権益をほぼ独占した。

それと同じことが繰り返されていると想像することは可能だ。インターネットの誕生に手を貸した米国政府は、サイバー空間の大部分がグーグル(GOOGL.O)などの民間企業に支配されていることに気付くのが遅れた。宇宙についても同様の事態に陥っていることに政府が気づくのも、それほど遠い話ではないかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

    *本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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