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コラム:世界的株安、カギ握るドラギ総裁
2016年2月12日 / 04:36 / 2年前

コラム:世界的株安、カギ握るドラギ総裁

田巻 一彦

 2月12日、イエレンFRB議長の議会証言後、世界の金融・資本市場ではリスクオフ心理が高まり、株などのリスク資産から米独日などの国債にマネーの大量シフトが発生している。写真はドラギECB総裁。仏ストラスブールで1日撮影(2016年 ロイター/Vincent Kessler)

[東京 12日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言後、世界の金融・資本市場ではリスクオフ心理が高まり、株などのリスク資産から米独日などの国債にマネーの大量シフトが発生している。最大の原因は、欧州発の金融不安であり、欧州中銀(ECB)のドラギ総裁が、金融不安には「何でも対応する」と意思表示するべきだ。世界的なマネー動乱を鎮圧する第1ステップは、欧州の安定回復であると指摘したい。

<イエレン証言後に高まった米経済への不透明感>

12日の東京市場では、日経平均.N225が一時、1万5000円を割り込み、アベノミクスが始まった2012年12月以降の平均コストとみられてきた1万5500円近辺を割り込んだ。

ドル/円JPY=EBSも11日の欧州市場で一時、110.99円まで下落。12日にも112円台で推移し、主要製造業の想定レートである115円を割り込んだままだ。

イエレン議長は10日に行った米下院での証言で「リセッション(景気後退)のリスクは常に存在し、世界的な金融情勢が景気減速につながる可能性があると認識している」と指摘。さらに株安に伴う金融情勢の引き締まりや、中国をめぐる不透明感、信用リスクの世界的な再評価で米経済の歯車が狂う恐れがあるとの認識を表明した。

同時に、「この先に米経済を待ち受けているものについて早まった結論に飛びつくことがないよう注意したい」とし、「連邦公開市場委員会(FOMC)が近く利下げを行う必要に直面するとは想定していない」と発言。市場の思惑とは別に、年内の利上げシナリオをギブアップしていないというメッセージを発した。

しかし、弱気に傾いていた市場は「世界経済唯一のエンジン・米経済の減速を織り込んで、米株が下落し、リスクオフを加速させた」(国内金融機関の関係者)。その結果、12日の東京市場では、株安と円高が同時進行し、日本経済の先行きにも暗い影を投げかけている。

市場では、今月下旬に中国・上海で開催される20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)での協調行動に期待する声が、急速に高まってきた。

<頼りになるのはG7>

だが、G20の過去を振り返ってすぐにわかることは、共同声明が出ても、その内容を市場が材料視し、かつてのプラザ合意のように市場を大きく動かした「実績」が、ほとんどないという現実だ。

今回も市場鎮静化に向けた声明が出ると予想されるが、実効性がどの程度、担保された内容になるのか、いまのところかなり不透明感が強い。

それよりも、やはり「頼りになる」のは、G7の協調だ。G7から何らかのメッセージと対応策が出れば、ここからの「底抜け相場」は、何とか回避できるのではないか。

具体的なカギは、ECBが握っていると感じている。直近の「リスク回避相場」の引き金を引いたのは、実はイエレン議長ではなく、欧州発の金融不安だからだ。

11日のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、独銀行最大手ドイツ銀行(DBKGn.DE)の債務保証コストが急上昇。欧州の銀行株が数年ぶり安値を付ける中で、ドイツ銀以外の欧州銀の債務保証コストも上昇している。

マークイットによると、CDS市場が織り込むドイツ銀の劣後債のデフォルト(債務不履行)確率は24.5%、シニア債のデフォルト確率は17%に上昇した。

11日の欧州株式市場では、決算が市場予想を下回った銀行大手のソシエテ・ジェネラル(ソジェン)(SOGN.PA)は大きく売り込まれ、STOXX 欧州600銀行株指.SX7P は6.26%下落。今週内の下落率は11%近くにのぼり、年初からは約28.6%安となった。

ECBのマイナス金利を含めた超緩和策で低金利の環境が続く一方、低成長の基調に変化が見えず、銀行部門の収益が不安視されているためだ。銀行株が多いイタリアの主要株価FTSE・MIB指数.FTMIBはこの日、5.63%低下した。

ある国内銀の関係者は「欧州発の金融不安の臭いを市場は嗅ぎ付け出した」と述べる。

<ドラギ総裁の英断あれば、円高防止にも効果>

ECBのドラギ総裁は「金融不安を発生させないため、出来ることは何でもする」と強いメッセージを出すべきだ。

もし、欧州発の金融不安が緩和されれば、欧州株式市場から米国債市場への資金シフトが鎮静化し、円高の抑止にも役立つ構図がある。

11日のNY市場では、10年米国債利回りUS10YT=RRは2012年9月以来となる1.6642%に低下していた。その結果、日米金利差の縮小がマーケットから意識され、ドル売り/円買いを正当化する見方が広がりやすくなっている。

ドラギ総裁の決断で、欧州発の金融不安の芽を摘む可能性が高まれば、リスクオフ心理もひとまず沈静化するに違いない。

そうすれば日銀が1月29日に決めた「マイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)」の効果も、東京市場で浸透しやすくなると考える。

3月を見通せば、ECBが追加緩和に動き、FRBは利上げを見送る。そこに日銀の追加緩和期待が加われば、一方向のリスクオフ心理の強まりをコントロールする道が開ける。その前提は、欧州発の金融不安のリスク低下だ。

ドラギ総裁と欧州連合(EU)首脳部の英断を期待したい。

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