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アングル:日銀ETF購入、新手法で小型株上昇か ファーストリテの筆頭株主も視野

[東京 24日 ロイター] - 日銀は19日に公表した政策点検で、上場投資信託(ETF)買い入れに伴うリスクプレミアムの縮小効果を初めて示し、識者から評価する声が出ている。しかし、買い入れ対象をTOPIX連動型に一本化することで、小型株が上昇しやすくなり株価に新たなゆがみが生じるとの懸念が浮上。企業統治を巡る懸念も解決されておらず、ファーストリテイリングでは日銀が筆頭株主に浮上することが視野に入ってきた。日銀は4月から新手法に移行するが、買い入れ縮小には市場の安定化が必要だとの声が市場関係者から出ている。

 3月24日、日銀は19日に公表した政策点検で、上場投資信託(ETF)買い入れに伴うリスクプレミアムの縮小効果を初めて示し、識者から評価する声が出ている。写真は日銀本店。都内で2009年3月撮影(2021年 ロイター/Yuriko Nakao)

<初めて示された「リスクプレミアム」>

日銀は今回、株式市場のリスクプレミアムを捉える様々な指標やデータの中から、オプション価格に含まれる株式リスクプレミアムの変化幅と個別銘柄のイールドスプレッドの変化幅の2つを挙げて、ETF買い入れの効果を検証した。ETFの買い入れによって株式市場のリスクプレミアムが有意に押し下げられていることを示すとともに「市場が不安定な時ほど、買い入れ規模が大きいほど、買い入れ1単位当たりの効果が大きいことが示唆される」と結論づけた。

中央大学商学部の原田喜美枝教授は「リスクプレミアムをどのように捉えればいいのかということと、日銀が考える効果の在り方が分かったということは前向きに評価できる」と話す。

日銀がどういう場面でETF買い入れに動くのか、これまでは雨宮正佳副総裁が2019年5月の国会答弁で示した国債と株価の利回り差、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、VIX指数、市場参加者からの聞き取り情報の5つが参考にされてきたが、市場で幅を利かせてきたのは「前場でTOPIXが0.5%以上下がると日銀がETFを買い入れる」といった「ルール」だ。ただ、2月下旬にはこのルール通りに日銀が買い入れない日もあり、市場では新たなルールを見いだそうとする動きがある。

<小型株が押し上げられる可能性>

日銀は19日、ETFの買い入れ対象をTOPIX連動型に一本化することを決めたが、新たな問題も浮上している。

黒田東彦総裁は22日の参院財政金融委員会で「個別銘柄に偏った影響ができるだけ生じないように、指数構成銘柄が最も多いTOPIX連動型のみにした」と説明した。

しかし、中央大の原田教授は、TOPIX連動型に一本化することでファーストリテイリングやアドバンテストなど日経平均株価の構成銘柄で浮動株比率の低い銘柄の株価への「今後の負荷は軽減される」ものの、「小型株への影響は今後もより大きく出る」と指摘する。

<ファーストリテの保有比率、近づく「柳井氏超え」>

日経平均連動型を購入しなくても、TOPIX型の購入が続くことで、個別銘柄における日銀の間接保有比率は緩やかながらも上昇を続ける。日銀はファーストリテで筆頭株主への浮上を射程圏に収めている。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾上席研究員によれば、TOPIX型をもう6兆円購入すれば、会長兼社長の柳井正氏の保有比率21.58%を追い抜く。

しかし、今回の政策点検で、市場関係者や有識者が指摘してきた日銀のETFの大量保有に伴う企業統治への弊害は解決されないまま残った。

日銀は、企業統治への影響について「ETFを構成する個別株式の議決権については、スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)の受け入れを表明した投資信託委託会社により適切に行使される扱いとなっている」と従来の見解を繰り返した。「先行き、保有ETFの残高がさらに増加するにつれ、こうした懸念は高まる可能性がある」と述べるにとどまり、具体的な対処法は示さなかった。

中央大の原田教授は「日銀はバイ・アンド・ホールドで絶対に売らないから株価は下がりにくいし、安泰だと思っている経営者も多いと思う。株式市場では、出資者は投資家として企業経営の監視という役割を担うのだが、日銀はこういった点を意識していない」と指摘する。

市場では「日銀は運用会社にガバナンスの監視を任せきりにしているが、運用会社は経営監視に興味はないのではないか」(アナリスト)との声が出ている。

<めりはりのある買い入れの実現は>

日銀は4月1日からETFの買い入れ対象をTOPIX連動型に一本化する。年12兆円を上限に、市場が落ち着いている場面では買い入れ額を落とし、市場が大きく不安定化した場合には大規模な買い入れを行い、政策点検で目指しためりはりのある買い入れを模索する。

ニッセイ基礎研の井出氏は「将来的に買い入れを縮小して、いずれゼロにしていくための初めのほんの一歩。実際に買い入れ額が減るかどうかは市場環境次第だ」と話している。

和田崇彦 編集:内田慎一

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