December 19, 2018 / 7:18 AM / a month ago

コラム:株乱高下の「主犯」は誰か、正解できない米財務長官

[ニューヨーク 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ムニューシン米財務長官は18日、最近の株価が乱高下している原因の一部はオバマ前政権が導入した投資銀行の自己勘定取引を禁止する「ボルカールール」にある、との見方を示した。

 12月18日、ムニューシン米財務長官(写真)は、最近の株価が乱高下している原因の一部はオバマ前政権が導入した投資銀行の自己勘定取引を禁止する「ボルカールール」にある、との見方を示した。ホワイトハウスで3日撮影(2018年 ロイター/Leah Millis)

しかし同ルールが採用される前の2009年と比べれば、株価の動揺は小さく、株式取引自体に同ルールが及ぼした悪影響は乏しい。値動きを荒くしているのは、ムニューシン氏が仕えるトランプ大統領の振れが大きい政策にほかならない。

トランプ氏は2016年の当選以来ずっと、株価を政権運営の評価基準としてきた。1月にはツイッターで「ダウ工業株30種が2万5000ドルに迫っている。私の政権でこんなに早く大台到達が可能になると思っていた人はほとんどいなかった」と自画自賛だ。とすれば最近数週間の大幅調整でダウが約12%も下がった事態は、ホワイトハウスにあっては決して受け入れられない。

だからこそムニューシン氏は、金融安定監督評議会(FSOC)に株式市場構造がボラティリティに与える影響を調査研究するよう要請しようとしているのだ。もっとも株価が足元でより不安定化しているとはいえ、それは異常な動きではなく、むしろ正常な状態に戻っているという側面が強い。

米連邦準備理事会(FRB)は過去10年のほとんどの期間、事実上のゼロ金利と多額の資産買い入れを通じてボラティリティを抑え込んできた。この政策の巻き戻しが今、徐々に進んできている。

そうした中でシカゴ・オプション取引所のボラティリティ・インデックス(VIX、別名恐怖指数)は夏場の10%台後半から18日に25%超まで高まってきた。ただ元FRB議長のポール・ボルカー氏が自己勘定取引禁止を提案すらしていなかった08─09年の金融危機時代には、VIXは最高40%まで跳ね上がっていた。

さらにボルカールールのインパクトは、株式よりも債券取引の方がずっと大きかった。銀行にとって、顧客のためのマーケットメーク(気配値の提示による円滑な取引成立支援)能力を確保する上で鍵になるのは、債券をバランスシート上に保有し続けることだ。ところがこうした保有を続ければ続けるほど、自己勘定取引の性格が生まれかねない。株式の場合、証券取引所が存在するので、ごく一部の最も流動性が低い銘柄や大口のブロック取引を除けば、バランスシートに長期保有する必要はない。

確かにムニューシン氏は、株価乱高下の原因として超高速取引業者の動きも挙げた。超高速取引業者には数多くの批判があり、実際彼らの前身的な存在は1987年の大暴落における「主犯」の1つだった。それでも彼らは今やマーケットメークの役割を果たしている。

株価が落ち着かない理由は、他の材料を使えばもっとうまく説明できる。

すなわちトランプ氏が中国との貿易戦争を辞さない考えを打ち出していることが、世界の経済成長を巡る不安をかき立て、投資にブレーキをかけている。トランプ氏が大盤振る舞い的に実施した減税の効果がはく落するとともに、企業収益の伸びは鈍化しつつある。おまけに米国の財政赤字は膨らみ続け、1兆ドルに達する情勢だ。

これらの要素は、ほぼ10年続く景気回復への脅威としてはボルカールールよりも大きい。

残念ながらムニューシン氏は、ボルカールールに対する言及ほどには、トランプ氏にはっきりと物申すことができない。

●背景となるニュース

・ムニューシン米財務長官は18日、自ら議長を務める金融安定監督評議会(FSOC)に株式市場の構造とボラティリティの問題を調査研究するよう要請すると語った。ブルームバーグが伝えた。

・ムニューシン氏は「個人的な意見としては、市場構造がより大きなボラティリティをもたらしている。その一因は超高速取引業者とボルカールールの組み合わせにある」と述べた。

ボルカールールは投資銀行による自己勘定取引を禁止している。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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