水野 文也記者
[東京 28日 ロイター] JR3社(JR東日本9020.T、JR西日本9021.T、JR東海9022.T)が28日に発表した2009年度上半期(4─9月期)決算は、いずれも営業減益を余儀なくされた。
景気低迷で新幹線を中心に運賃収入が減少しているほか、駅構内の物販事業や広告など付帯事業の落ち込みが苦戦の背景にある。高速道路料金が土日1000円に引き下げられた影響は、現時点で全体の売上高に対して1%以下にとどまっているものの、現政権が無料化を推進した場合、収益環境は一段と厳しさを増すことになりそうだ。
各社の上半期運賃収入のうち新幹線は、JR東日本が前年同期比8.6%減、JR西日本が同9.4%減、JR東海が同8.3%減といずれも落ち込んだ。会社側では「のぞみの利便性向上などに努めたものの、景気低迷の影響が響いた。とりわけ4─6月は新型インフルエンザの影響が大きく、これが大幅な減収要因になった」(JR東海の金子慎常務)としている。
在来線でも苦戦が目立つのは定期外収入の長距離で、新幹線と同様、特急の利用客減少が目立っている。景気悪化の影響は付帯事業にも及び、鉄道利用客の減少に伴って駅構内の「キヨスク」など物販も低迷。百貨店や列車内の中づりなど広告事業もマイナスとなっている。
JR東日本では、下半期以降の鉄道収入は計画通りを見込んでいるものの、付帯事業の苦戦を予想し、2010年3月期通期の連結営業利益見通しについて、従来予想の3570億円から3460億円に下方修正した。
一方でインフルエンザの影響が一巡した7─9月にかけては回復傾向を示した。JR東日本では、減収幅が第1・四半期の200億円から第2・四半期は163億円に縮小、第1・四半期がボトムとしている。
ただ、収益環境について「足元は改善に向かったが楽観できない」(JR東日本の大和田徹常務)という。たとえば同社の運賃収入で最も大きな構成比となっている在来線の定期券収入は、上半期に前年同期比0.8%減にとどまったものの、景気の遅行指標となる雇用情勢を踏まえると予断を許さない。
その内訳をみると、関東圏が同0.2%減だったのに対し、東北・信越などそれ以外の地域では同1.0%減と、景況が厳しい地方の落ち込みが厳しかった。「鉄道業は景気に対して遅行性のある業種。定期券収入については先行き収益減少のリスク要因になる可能性がある」(大和田常務)と予測している。
高速道路料金が土日に1000円へ引き下げられたことも、収益を押し下げる要因となった。その影響について、JR東日本は年間約90億円、JR東海は同約70億円とそれぞれ試算しており、現時点では全体の売上高(10年3月期の売上高予想はJR東日本が2兆6030億円、JR東海が1兆4770億円)に及ぼす影響は限定的。
現政権の目指す高速道路無料化が現実となった場合の影響額について、今の段階で各社は試算していない。ただ、そのインパクトは「1000円への引き下げのままとしても、土日限定から平日に拡大するなど日数が増えれば影響額は大きくなる」(JR東海の金子常務)という。
JR東日本の大和田常務も「無料化になった場合、その影響は1000円をはるかに上回り厳しさを増す」と懸念しており、政策の行方に対して神経質になっている状況だ。
(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)