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〔総選挙こうみる〕外交では尖閣などテーマ絞るべき、TPPはぜひ参加を=久保・東大教授

 [東京 7日 ロイター] 東京大学大学院法学政治学研究科の久保文明教授は、衆院選後の新政権に望む外交政策として、歴史問題には非常に慎重に取り組む必要があり、尖閣問題などにテーマを絞って取り組むべきとの考えを示した。また、日本の潜在成長力の向上に向けて、環太平洋連携協定(TPP)にはぜひ参加すべきとした。7日午前、ロイターの取材に応じた。

 同氏の専門はアメリカ政治、アメリカ政治外交史。

 主なやりとりは以下のとおり。

  ――日本では2大政党制を志向して小選挙区制が導入されたが、米国とは対照的に2大政党制が定着したとは言えない状況だ。日本には2大政党制は根付きにくいと考えるか。

 「2大政党制は意図して作れるものでは必ずしもない。小選挙区制は日本で妥当性をもつのかという角度から議論した方がいい」

 「小選挙区制でやってゆけるのかについては、その国の政治、社会の『亀裂』のあり方に関係している。民族、言語、宗教などで鋭く分断されている国で小選挙区制で政治を決めようとすれば、少しでも数が多ければ独り勝ちするリスクがあるため、直ちに社会が分裂するということになりがち。そうした社会に比べると、日本の場合にはどこかの政党が独り勝ちすることによって社会が分裂、解体してゆく可能性はそれほどない。その意味で、日本では小選挙区制が比較的行いやすい」

 「しかし、小選挙区制によって2大政党制になるかと言えば、歴史的な経緯や日本人の思想的状況など様々な要素によるので不透明。個人的には、以前の中選挙区制よりも例えば政権を賭けた選挙になりやすいことや、政党の統治責任を問える点で悪いものではないと思う」

 「米国では民主党と共和党で立場が非常に違うが、日本では政党が立脚する原理原則や価値観が非常にあいまいで、なおかつすぐ変わってしまう。2大政党の間にそれほど大きな違いがないように見えるため、2大政党制に向かいにくい側面がある。政党自身がどういう日本にしようとしているのか、政党の支持基盤ともある程度関係しているが、そんなにコロコロ変わるものであってはいけないのではないか。立候補する人も、たとえば民主党で現職がいっぱいだから自民党から出ようとか、本当は自民党から出馬したいが自民党で現職がいっぱいだから民主党から出ようかといった形で立候補してゆく」

  ――日本社会にとって好ましいのは2大政党制か、それとも多党制に基づく連立政権による政治か。

 「どちらでなければいけないとは思っていない。ただ、連立政権がはらむ危険というのは、連立政権が過半数を取ることを目標にした多数派工作で決まってしまう点だ。たとえば45%の有権者が自民党が良いと思っても、残り55%の有権者の支持に基づくコアリション(連合)が出来てしまうとそちらの方に政権が行ってしまう。19世紀後半にフランス第三共和政でよく起きたことで、しばしば『人民なき民主主義』と呼ばれた。多党制で悪いとは思わないが、連立政権が常態化して連立工作によって政権が作られてゆくということは、結局、選挙の意味をかなり形骸化してしまう可能性がある。ちょっとした油断やちょっとした失敗で一挙に少数政党に転落してしまう小選挙区制の方が、緊張感があっていい面もあるように思う」

  ――新政権が取り組むべき政策は。

 「尖閣諸島(中国名:釣魚島)の問題で、中国とは難しい関係が続くと思う。日本が過度に譲歩することはできないと思うし、中国にある程度日本の立場を理解してもらう必要がある。そう簡単ではないが、しっかりやる必要がある」

 「自民党の安倍晋三総裁が首相になった際には、尖閣問題や日本の国際貢献、日米同盟強化のための集団的自衛権をめぐる憲法解釈変更といったテーマに焦点を絞って努力すべきだ。靖国や従軍慰安婦、歴史教科書といった問題をいっしょにやってしまうと、中国や韓国が定義しようとしている領土問題が日本の過去の植民地主義、軍国主義の遺産で、日本はまた1930年代に戻ろうとしているというフレームにはまってしまうリスクがある。もし、こうした問題を進めるのであれば、相当慎重に進める必要がある」

 「メッセージをあまり複雑にせず、優先順位を決めて日本の外交課題に集中する必要がある。尖閣問題に絞って『これは法の支配の問題』あるいは『平和的に解決しなくてはならない』というメッセージを発信すれば相当広い支持が得られるだろう」

  ――日本の潜在成長力を高めるために必要な政策は何か。

 「日本人は歯をくいしばってでも互いに競争しなければいけないし、外の世界とも競争しなければいけないと思う。戦後の日本の成功は基本的には経済的な成功。日本はモノ作りで海外に打って出て、今日の繁栄と国際社会での尊敬を勝ち得た。アジア諸国とのFTA(自由貿易協定)にも賛成だが、水準の高い自由貿易体制であるTPP(環太平洋連携協定)にはぜひ加わるべき。日本も十分に戦っていけると期待している」

 (ロイターニュース 和田崇彦;編集 伊賀大記)

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